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「42人で1人のヘビーユーザーを支えるデータ通信の現状を変えたい」--日本通信の三田社長

2011.04.09

Updated by Naohisa Iwamoto on April 9, 2011, 19:29 pm JST

「数%のヘビーユーザーがトラフィックの大半を占有している。この不平等な世界的な潮流を正していきたい」。こう力説するのは日本通信の三田聖二社長。同社が2011年4月6日に発表したばかりの新製品「b-mobiile Fair」について、報道関係者を集めて4月8日に開催したの説明会の席上でのことだ。

▼42人が1人のヘビーユーザーを支える構図
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三田社長は、携帯電話のデータ通信において、利用するトラフィックと支払う料金の間に大きな不公平が生じているという。1つは定額制の存在で、トラフィックがどんなに多くても月間で支払う料金が増えないこと。これが、トラフィックの一部のユーザーへの偏りを招いている。さらに、2段階定額制の料金にも疑問を投げかける。2段階定額ではごく少ないデータ通信量の利用で上限金額に達してしまい、平均的な利用量のユーザーは上限金額に張り付いてしまう。要するに、平均的な利用量のユーザーも、大量のトラフィックを発生させるユーザーも、同じような料金になるということだ。この状況を同社代表取締役専務CFOの福田尚久氏は「42人の平均的なユーザーが1人のヘビーユーザーの使用料金を支えている」と説明する。

こうした状況を正すための施策として日本通信が提供を始めるのが「b-mobile Fair」だ。製品名にも「Fair=公平」と名付けたように、利用者が使う分だけの料金をバランスよく支払うことが可能なSIM製品である(関連記事:日本通信、SIMロック解除端末に向け1GB単位でチャージするSIM製品を発売)。具体的には120日間使える1GB単位のチャージを購入する方式のサービスで、初回利用時には9800円のパッケージを、次回以降の追加はオンラインで8350円のチャージをする。4カ月で平均的に使うとすれば、月間250GBMBの利用に対して、月に換算して2087.5円~2450円で利用できる。月額で6000円前後の3大キャリアの定額制プランよりも格段に低コストでデータ通信を利用できる。

これまで、日本通信が適用してきたSIMの統計を見ると、「月間に300MB以下の通信量のユーザーが65%を占める」(福田氏)。月間250GBMB(※4/9 21:35訂正)あれば平均的なユーザーの利用はまかなえる上、「月間754MBまでならば、3大キャリアの2段階定額より安く利用できる」(福田氏)という。使う分だけ支払うSIMの提供で、一般的なユーザーがヘビーユーザーの利用分を肩代わりすることなく、適正な料金でデータ通信を活用できるという理屈である。

さらに、b-mobile Fairは下り最大7.2MbpsのNTTドコモのFOMA網を利用する。速度に制限はなく、エリアは広い。ファイル交換などプロトコル制限や使用量によるペナルティーもなく、使い勝手はいい。

▼b-mobile Fairの意義を力説する日本通信の三田社長
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「日本通信がb-mobile SIM U300を発売してから1年が経った。SIMビジネスが認知されてきて、モバイルデバイスととSIMが分離して販売され、それぞれで競争できる地盤が固まってきた。この4月からはNTTドコモも単体のSIMを販売するビジネスに参入してきた。SIMビジネスが本格的する時代に、b-mobile Fairなどを通じて新しいSIM市場のあり方を提案していきたい」(三田社長)。利便性と料金のバランスのとれたb-mobile Fairは、多くのユーザーにとって使いやすいデータ通信プランとなるだけでなく、日本通信の屋台骨の1つになる可能性も高い。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。