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アップルの「地力」の源泉? - 「金満家」ならではの大胆部品調達術

2011.07.08

Updated by WirelessWire News編集部 on July 8, 2011, 21:00 pm JST

201107082100-1.jpg[引用元:Green AAPL & Country Life]

アップル(Apple)というと、どうしてもスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)CEOやらデザイン責任者のジョナサン・アイブズ(Jonathan Ives)といった人たちが代表する「派手な部分」に光があたりがちだが、では「ジョブズ氏不在」時に実質的なトップとして同社を取り仕切る、ナンバー2のティム・クック(Tim Cook)COOは何をやっているのか・・・という謎へのヒントとなる話を紹介する。

今年のはじめに「アップル銀行の金庫で現金が積み上がっている」という話を紹介した。あの時点で約600億ドルといわれていた同社の手持ち資金(現金および短期証券)はその後もどんどん増え続け、今月半ばに発表される4-6期決算では「700億ドル突破」の声も出てきている。

201107082100-2.jpg[引用元:asymco]

これだけのお金が「寝ている」となると、ふつうは話が厄介になり、とくに株価の頭打ち状態が長引きそうだとなると、辛抱しきれない株主の間からとたんに「自社株買い」「配当金の支払い」といった声が上がり始めたりすることもめずらしくはない。実際に、いつの間にやら成長株から優良株へと認知が変わったマイクロソフト(Microsoft)やシスコ(Cisco Systems)のように、そうした声(圧力)に応えている例もある。また、この両社やグーグル(Google)のようにどんどんと企業買収にお金をつかう例もある(マイクロソフトのスカイプ買収は、記憶に新しい)。

ところが、いまやIT・ネット業界で一番の「金満家」となったアップルでは、こうした類の話はほとんど聞かない。ざっと思いだせるところでは、2010年の、それに2008年4月のP.A. Semi、そして2010年はじめのクアトロ・ワイアレス(Quattro Wireless)くらいしかしかなく、しかもいずれも10億ドル($1 billion)には満たない金額である。

いっぽう、ティム・クックCOOは今年1月にあった決算発表の席で、昨年夏から秋にかけて39億ドルもの資金を部品調達関連に費やしたことを明かし、具体的な使途については、部品発注分の前払いや、部品メーカーで新工場建設にかかる設備投資と説明。さらに、2005年にフラッシュメモリーを10億ドル分も発注したころからこうしたやり方を続けてきているとも付け加えていた。

さて。「こういうお金の使い方が、どうアップルの強さにつながっているのか」という点をめぐる興味深いやりとりが先週、専門家(業界インサイダー)が参加する米のQ&Aサイト「Quara」で交わされていたと、今週いくつかの有力ブログが紹介していた。

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これらの話によると、アップルは部品メーカーに対し、新工場の建設費(全額もしくは一部)を肩代わり、その見返りとして生産される最新技術(タッチスクリーン、チップ類、液晶画面など)を一定期間ーー最長で3年程度、独占的に購入できるとする契約を結ぶという。またこの期間を過ぎたあとも、同社の売値にはディスカウントが適用されるとの条件も盛り込まれるという。

1000億円単位の投資もめずらしくはない分野の話であるため、部品メーカー側ではさぞ大助かりだろうが、それ以上にアップルにとっての見返りは大きい。まず、新しい技術(部品)を競合他社より数年先駈けて最終製品に盛り込むことができ、それがプレミアム価格の維持につながることに加え、その部品のコモディティ化が進んだ後でもよりアグレッシブな値付けで製品を出す、もしくは高い利益率を維持することができる。ここ一年ほど、iPad追撃をねらう各社が続々とタブレット端末を出しつつも、そのほとんどがiPadを下回る価格で投入できずにいることをみても、そうしたアドバンテージの威力がいかに大きいものかは感じ取れると思う。

201107082100-3.jpg[引用元:Apple Becomes World's Largest OEM Semiconductor Buyer in 2010 - iSuppli]

こうしたノウハウが編み出されてきた背景には、若い頃から部品調達には非凡なものがあったとされるスティーブ・ジョブズの能力ももちろんあるのだろうが、98年11月のFortuneではやくも「アッチラ大王」(Attila the Hun)と紹介され当時から有能なコストカッターとして注目されていたクックCOOの力に追うところも大きいと思われる。

そのクックCOOが登場するアップルの2011年4-6月期決算が、あと2週間もしないうちに行われる。今度はどんな数字が発表されるか、さらに注目したいところだ。

【参照情報】
What would make sense for Apple to use its $51+ billion in cash for a strategic acquisition?
The Critical Path #3: It's Good to Be King - 5by5.
If Cash is King, Apple's is an Emperor [Updated]
How Apple became a monopsonist
"Apple's... Exclusive Supply Chain Of Advanced Technology [Is] Literally Years Ahead Of Anyone Else On The Planet"
Apple's Jobs Razzes Chip Partner Samsung

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