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[2011年第27週]今年度にもスマホ出荷が半数に、WiMAX 2実験実施、法人向けクラウド型ドキュメント配信サービスが続々

2011.07.11

Updated by Naohisa Iwamoto on July 11, 2011, 10:00 am JST

第27週には、関東甲信でも平年より10日以上早く梅雨明けが発表された。夏本番の猛暑が続く中で、スマートフォン関連を中心にニュースも続出した。携帯電話市場の予測と実績のニュースから見ていこう。

スマートフォンへのシフトが着実に

MM総研が発表した携帯電話とスマートフォンの市場規模の予測では、スマートフォンが着実に市場を席巻していく予測がなされている。「2011年度末にはスマートフォンが総出荷の49%に、スマートフォンの契約数は2014年度末に過半数に達する」といったものだ。出荷台数でみると、2011年度の予測では前年比2.3倍の1986万台となり、総出荷数の49.0%とほぼ半数を占めるに至る。さらに2015年度には3056万台で、総出荷数の74%と4分の3にまで達する。契約数では、2015年3月末に6137万件で50.9%とスマートフォンが過半数を占める予測だ(関連記事:国内のスマートフォン契約数は2015年3月に過半数へ--MM総研予測)。

201107111000-1.jpg現状を示す定点観測数値の発表もあった。電気通信事業者協会(TCA)が発表した2011年6月末の携帯電話の純増数では、ソフトバンクモバイルが依然としてトップを守ったものの、他社との差が縮まってきた傾向が見える。夏モデルの新製品が少なかったソフトバンクモバイルの純増数は前月の29万9000から10万以上の減少となった。一方で、豊富な新製品をラインアップしたNTTドコモは、買い控えの影響が出た前月の6万3000から9万超の増加となった。KDDIとイー・アクセスは横ばいだった。少なからずスマートフォンの新製品の販売状況が純増数にも影響を及ぼしている。(関連記事:6月の携帯純増数、ソフトバンクが前月比10万減と減速、Xiは12万契約を超える

高速データ通信サービスが着実に進展

前述のTCAの統計では、NTTドコモが提供してるLTEサービスのXi(クロッシィ)は、4万8800の純増で12万1400にまで契約数を増やした。3Gの先の高速サービスへの移行も、まだ実数としては少ないものの着実に進んでいる。

そのLTEサービスでMVNOを進めるための動きもあった。日本通信はNTTドコモに対してLTE網とのレイヤー2相互接続を6月30日に正式申し入れ、接続に向けた協議を開始したという。相互接続が実現すれば、3GとLTEを統合サービスとして提供するMVNO事業を提供できるようになるほか、LTEをベースとしてクラウドコンピューティングサービスを提供したい企業に対してMVNO事業を支援するMVNEサービスも提供する(関連記事:日本通信、NTTドコモにLTE網のレイヤー2接続を申し入れ)。

高速サービスを実現できる方式は、屋外で下り最大37.5Mbpsのサービスを提供するLTEだけでなない。ソフトバンクモバイルは3Gの進化形であるDC-HSDPAを使って、下り最大42Mbpsの高速データ通信「ULTRA SPEED」に対応したサービスの料金プランを発表した。定額の使い放題プランでは、2011年11月30日までのキャンペーン期間中に申し込むと月額3880円の低料金で利用できる。対応端末「SoftBank 007Z」とサービスは7月8日から提供する。「SoftBank 007Z」は、下り最大42Mbps/上り最大5.8MbpsのULTRA SPEEDに対応し、Wi-Fi機器を最大10台まで接続できるモバイルWi-Fiルーターである(関連記事:ソフトバンク、最大42Mbpsの「ULTRA SPEED」を月額3880円で提供)。

201107111000-2.jpg下り最大40Mbpsの高速サービスで100万超の契約を得ているUQコミュニケーションズは、さらにその先を行く次世代のWiMAX通信方式「WiMAX 2」のフィールドテストを実施した。フィールドテストでは、移動時に下り約100Mbps、静止時には同約150Mbpsのスループットが得られることを実証した。WiMAX 2は、2012年の上半期に周波数割り当てがあれば、2013年上半期の早期にサービス提供を開始したいとしている。フィールドテストの成功で、早期サービス提供の実現が数歩近づいたことになる(関連記事:UQがWiMAX 2のフィールドテストを公開、150Mbpsのスループットを実証動画で見るWiMAX 2 フィールドテスト)。

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スマートデバイスの利便性を高めるクラウドサービス

一方、スマートフォンやタブレット端末といったスマートデバイスを便利に使えるようにするクラウドサービスが増えてきた。コンテンツ配信を一元的に管理し、パソコンなどの既存端末に加えてスマートデバイスからの利用もクラウドサービスで対応しようとするものだ。

NECは、電子書籍や映像、音声などの多様なコンテンツを一括して配信できるクラウド型サービス「コンテンツ配信クラウドサービス」を7月末に提供する。電子書籍や映像、音楽、ニュースといったコンテンツの種類や、パソコン、スマートフォン、タブレット端末といった端末の種類を問わず、一元的に配信できるプラットフォームを提供する(関連記事:NEC、スマートフォンなどに多様なコンテンツを配信できるクラウド型サービス)。

201107111000-3.jpg京セラコミュニケーションシステム(KCCS)はクラウド型のドキュメント配信サービス「GreenOffice Publisher」を提供する。このサービスを利用すると、iPadやAndroid端末などのタブレット端末から企業内の文書を安全に閲覧できるようになる。サービスの開始は8月15日を予定している。PDFや紙の文書を電子書籍コンテンツとして配信する機能に加え、iPad/Android端末、パソコンでコンテンツを相互利用できるクロスデバイス対応、不正利用を防ぐセキュリティ機能などを備える(関連記事:iPadやAndroidタブレットで会社の資料を閲覧、KCCSがクラウド型ドキュメント配信サービス)。

スマートフォン向けの広告配信サービスのニュースもあった。ソフトバンクモバイルは、スマートフォン向けのネットワーク広告配信サービス「ソフトバンクスマートフォンメディアパッケージ」の提供を開始した。スマートフォン向けのアプリやWebサイトにそれぞれある広告枠に対して、個別に購入することなくまとめて広告を配信できる。また、1つの広告原稿を作成するだけで複数のメディアでの露出が可能になり、効率的な広告が可能になる(関連記事:ソフトバンクモバイル、スマートフォン向けの広告パッケージサービス

提携や協業でサービスが広がる

この週にあったキャリアー関連の動向をいくつか紹介する。UQコミュニケーションズは、マレーシアでWiMAXサービスを提供しているYTL Communications(YTL)との相互協力に関する覚書を締結したと発表した。WiMAXのビジネス、技術の両側面で相互に協力する。WiMAX 2のデバイス開発や調達、WiMAX 2の国際標準化、国際ローミングなどの多くの面で協力関係を築く(関連記事:UQ、マレーシアの事業者とWiMAX 2促進などで相互協力へ)。

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NTT東日本(以下NTT東)とセブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)は、店舗や光ブロードバンドサービスを活用して地域コミュニティで「生活インフラ」を構築するための協業について合意した。NTT東などが仮設住宅に無料の無線LANインターネット環境を提供し、セブン&アイのサービスを登録した生活情報端末の「光iフレーム」を無償で貸与する。またセブン&アイ店舗のWi-Fi拠点化も進める。セブンイレブン、イトーヨーカドーなどの店頭で、NTT東の公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」が利用できるようにする(関連記事:NTT東とセブン&アイ、仮設住宅の一部を対象に買い物支援トライアルを実施)。

最後に端末関連の話題を1つ。NTTドコモとソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、Xperia arc SO-01Cのバージョンアップを7月6日18時から順次実施している。Facebookとの連携機能追加や、入力アシストソフトのバージョンアップなどが行われる。バージョンアップは、パケット通信を使う方法と、パソコン接続して行う方法がある。パケット通信は3Gでも無線LANでも可能だ(関連記事:Xperia arcにFacebook連携機能などを追加するバージョンアップを7月6日に開始)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。