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プライベートで安心して使えることが最大の"価値"、有料会員200万の女性健康サイト「ルナルナ」

2011.11.28

Updated by Naohisa Iwamoto on November 28, 2011, 17:00 pm JST

モバイルとヘルスを連携させたサービスとして、10年以上の歴史を持つ「ルナルナ」。女性のための健康情報サイトで、有料会員数は2011年に200万人を突破した。いつでも手にしている携帯電話で使えるサービスであることが1つのカギで、女性の信頼を勝ち得た結果の有料会員数だと言える。エムティーアイが提供するルナルナの事例から、モバイルと健康情報を活用したサービスの密接な関係を読み解く。

▼ルナルナの携帯電話向けサイトのトップ画面。女性の体調を知る多くの情報を得られる
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ルナルナは生理日予測をメインのコンテンツとする、女性のための健康情報サイトである。サービスの開始は2000年。au端末に向けたサービスとして「ルーナ」の名称で始まった。

2000年といえば、NTTドコモのiモードが始まった1999年から1年しか経っていない。携帯電話でコンテンツを見る文化の創世記に近いころからサービスが提供されていたのである。

手元にあるツールで手軽に体調をメモ

サービスの根幹にあるのは、女性の心と身体のサポートだ。生理日の情報は、女性の身体のリズムを示す重要な情報であり、多くの女性はそれを手帳にメモしている。しかし、手帳だと手元になくて書き忘れることもあれば、次の生理日や排卵日を計算するのも指折り数えることになる。周期は人によって異なり、妊娠可能時期などを的確に求めるのも難しい。

「携帯電話がちょうど普及してくるタイミングでしたから、手元にある携帯電話に簡単に生理日をメモできたらと考えました。メモするときも、確認するときも携帯電話ならいつも持っていますから」。エムティーアイ広報室の依田翔子さんは、サービス開始の経緯をこう語る。生理日を記録していくと、次回の生理がいつ来るかの予測や、排卵日に関連する妊娠しやすい時期などの情報を得られる。自分で計算しなくても、過去のデータからその人ごとの周期に即した予測をしてくれる。日常の体調管理から妊娠・避妊、に関連する情報が得られることで、旅行のスケジュールが立てやすくなったりと、生活の質を高められるのである。

その後、2006年には「ルナルナ」としてソフトバンクモバイルの端末にサービスを提供。生理日情報に加えて女性の身体の悩みに関する医学情報の提供も始めた。2007年、NTTドコモのiモードに向けてサービスを始め、3大キャリア向けのラインアップが出揃った。どこのキャリアの利用者でもサービスを利用できるようになったことから、テレビコマーシャルや雑誌などでの宣伝も開始した。依田さんは、「ルナルナは携帯サイトをあまり利用することのない層にもニーズがあるサービスです。多くの人に安心して使ってもえらえるサービスであることを周知するため、テレビなどの一般メディアで宣伝をしました」と言う。携帯電話をメールや通話しか使っていなかった女性にもリーチするための方法が、一般メディアでの宣伝だったと言うわけだ。

ルナルナは、有料サイトとして運営している。iモード、Yahoo! ケータイでは月額189円、EZwebでは月額180円で提供している。2011年の初頭には、有料の会員が200万人を超えた。スマートフォンが急速に普及した現在では、スマートフォン向けのサイトも提供している。スマートフォン向けにはWebサイトへの簡単なアクセスを可能にする起動用のアプリを、App StoreやAndroidマーケットで提供する。スマートフォンでも月額189円。フィーチャーフォンで蓄積したデータは、スマートフォンサイトに移行してもそのまま利用できる。"蓄積した私の情報"が最大の価値だからだ。

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プライベートな情報だから携帯電話がフィット

生理日の入力と予測から始まったルナルナは、利用できる情報を徐々に増やしていった。基礎体温、体重、食事の内容など、女性の体調にかかわる情報を入力できるように機能が拡張され、気になる医学情報などのコンテンツ提供も進んだ。

女性の体調情報を管理するコンテンツが携帯電話を端末として受け入れられていったのには、利用者である女性の繊細な気持ちがあるようだ。ルナルナのプロモーションなどを担当するテラモバイル マーケティング事業部 事業推進部野島麻未さんはこう言う。「携帯電話は、人間の30cm以内にある最も身近なツールで、入力にペンも不要ですし、どこでもすぐに使えるというメリットは大きいです。しかし、それだけで成功したのではないと思います。例えばパソコンは家族で使うものなので公共性が高いと感じるのですね。生理日などのデリケートな情報は家族にも知られたくないことがあります。ひっそり、こっそり管理するツールとして、プライベートな携帯電話がフィットしたのです」。

Webサイトには、利用者ごとの体調情報をまとめた「今日のお告げ」が掲載されている。生理や排卵予定日、妊娠の可能性、体調から見たその日の指標、そして生理や排卵日などを一覧できるカレンダーなどがあり、自分の体調をひと目で確認できる。お肌、ダイエット、おりもの、メンタルなど各種の側面からアドバイスする「今日のお告げII」も提供し、総合的に女性の生活をサポートする。ダイエットを成功に導くカレンダーも人気がある。妊娠したら、出産までの情報を提供してくれる「妊娠モード」も用意する。

▼「今日のお告げ」には、ユーザーごとの生理や排卵の予定日、妊娠の可能性などの情報がまとまっている
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さらに、「たまご@メール」と名付けたメールサービスもある。生理予定日の3日前と、排卵予定日の1週間前に届くメールで、会員の多くがメール配信サービスを受けていると言う。「忙しかったりすると、自分のこととは言え生理が来ることを忘れていて、生理用品がなくて慌てるようなこともあります。たまご@メールを利用することで、"そろそろだな"といったことを思い出すきっかけになります」(依田さん)。これもプライベートな端末である携帯電話向けのメールだからこそ成り立つサービスと言えそうだ。

それでは、一般論として個人の情報である健康情報とモバイル端末とは相性がいいのか、尋ねてみた。野島さんは、「生理日情報は自分で記録して自分で使う完結したものなので、携帯電話がフィットしました。しかし、血圧などの情報を記録してお医者様に見せるとしたら、携帯電話やスマートフォンの画面に情報が表示されるサービスでは使いにくいと思います。記録が簡単なことは重要ですが、どのようなシーンでその情報が使われるのかによって、適した端末やシステムは異なってくるのではないでしょうか」と言う。健康情報だから携帯電話やスマートフォンでサービスを提供すればいい、という短絡的な考え方ではリスクがあるというわけだ。

エムティーアイでは、妊娠したい女性に向けた携帯サイト「umoo」(ウモー)を2011年4月にスタートした。ここでは、携帯電話に記録した基礎体温のデータをパソコンから印刷できるサービスを提供している。医師にデータを見せるシーンでの利用も想定し、携帯電話やスマートフォンと他の機器を連携したサービスの開発も行っている。

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男性向けサービス、ソーシャルメディア機能も

スマートフォンが急速に普及して、ルナルナもスマートフォン向けのWebサイトを作りサービスの舵を切った。スマートフォン利用の有料会員数は明らかにしていないが、「スマートフォンの普及に歩調を合わせて、サービス利用者もスマートフォンに移行しています」(依田さん)。フィーチャーフォンで蓄積したデータを引き継いで使える上に、スマートフォンの大画面でグラフやカレンダーが見やすい。スマートフォンに機種変更しても問題なく使い続けられるのである。

▼スマートフォンでは大画面とタッチパネルを利用して、より見やすく使いやすいサービスを目指す
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こうした女性向けの情報だと、男性には無縁とも思いがちだが、そうではないようだ。「男性で利用している方もいます。パートナーの体調を知っておきたいというニーズです。そうしたニーズに答えるため、ルナルナでは男性にも情報を共有してもらえる仕組みを作りました」(依田さん)。それが「彼女の医学」という月額105円のオプションサービスだ。あらかじめ登録したパートナーの携帯電話で、女性がルナルナに登録した体調データのうち共有したいものを「今日の彼女予報」として閲覧できる。女性の体調やメンタル、妊娠中の様子などを、面と向かってではなくパートナーの男性に伝えられるサービスである。

ルナルナが最近始めたサービスに、ユーザーのコミュニティー「ルナルナコミュニティ」がある。2010年7月に開始し、2011年11月には23万人の会員がいる。「女性の個人的な悩みなどは、親や兄弟姉妹、友だちにも話しにくいものです。コミュニティーでは悩みの相談などを安心して話せる場を提供しています。実際、秒単位で書き込みが増えていくほどです。ルナルナの使い勝手などに関する意見も拾えます。コミュニティーで議論されている内容を基に、サービスの改善や新サービスの企画などにつなげていきたいと考えています」(野島さん)。これまではグループインタビューなどで利用者の生の声を集めていたけれど、そのときのグループインタビューのテーマに絞られた内容しか集まらない。コミュニティーの開設で多くの意見を目の当たりにできたことが、次のステップへの蓄積になる。

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テラモバイル マーケティング事業部 事業推進部の野島麻未さん

生理用品メーカーなどをはじめ、生理日予想には競合サービスも多く登場している。そんな中でのルナルナの強みはどこにあるのだろう。野島さんはこう言う。「コンテンツ自体は、どこも大きく差がないのではないかと思います。生理日予想と情報系のコンテンツですね。そうした中でルナルナの一番の強みは、長い間サービスを提供していることで長期間のデータが溜まっているユーザーが多いことです。長年使っていると予測の精度が高くなります。それによって自分の身体の状況を的確に把握できるようになるのです」。

そして、もう1つ、サービスの特性と関連したファクターがありそうだ。依田さんは、「女性の体調データといった情報は、人に話すような内容ではありません。どこかに流出したりしたらイヤなものです。それだけに、安心感を提供することが重要だと考えています」と言う。多くの人が利用して、知名度の高いサービスとなったルナルナ。長期間のサービス継続で培われたた安心感が、モバイルヘルスの成功例としてのルナルナの強みになっているようだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。