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「仮設住宅に入って、どんどんと大変なことが見えづらくなって来ている」──陸前高田市 福田さん一家(後編)

2011.11.24

Updated by Tatsuya Kurosaka on November 24, 2011, 17:00 pm JST

震災後、避難所生活を経て仮設住宅に移った福田さん一家。仮設住宅に入居したことで、避難所にいた頃とは違う「困ったこと」がいろいろと出てきたという。被災者からは言いだしづらいことだからこそ、支援する側が自発的に動く必要がある。(インタビュー実施日 2011年10月1日 聞き手:クロサカタツヤ)

(これ以前のインタビューはこちら →前編 中編

▼陸前高田市の仮設住宅(2011/10/1 クロサカタツヤ氏撮影)
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外から手をさしのべてくれれば、掴みやすい

──現在は仮設住宅に入られたわけですけど、震災直後、避難所、仮設住宅と、生活環境が変化する中で、情報が果たすべき役割があると思います。どのようなことに期待されますか?

福田順美さん(娘・以下「順美」):こっちから外部に言うのは、すごい難しい。どこに声を掛けたらいいかわからないし、こっちから声を掛けたことで、相手が困ってしまうこともある。でも、外から手をさしのべてくれると、こちらも手を掴みやすいです。

たとえば、仮設住宅に入って、食器や調理器具が足りないという、基本的な問題が発生するんです。当たり前ですけど、家ごと流されているので、家財道具があるわけもないし、避難所では共同生活でしたから。

でも、そうそう買えるものでもないし、そもそも少し遠くに足を伸ばさなければ売っていません。だから、震災の影響を受けていないご家庭で、使っていない食器が余っていたりしたら、お譲りいただけるとうれしいな、と率直に思うんです。

ですが、そういう率直な気持ちを、どこでどう表現すれば適切なのかが、分からない。その意味で、こっちから積極的にいけないというのも、悪い点ではあるんですけど、外から手をさしのべてもらうというのも必要なんだなと思います。

──震災の被害が小さかった内陸部であるとか、場合によっては東京とか関西の、被害のなかった外側から積極的に働きかけをした方が、皆さんが動きやすいということですよね。

順美:同じことは仕事でもいえるんだと思います。たとえば被災地でお店や自営業を営んでいた方と、内陸でお店や自営業を営んでいる方との連携がもっととれないのかと思うんです。うちは農機具屋を営んでいたんですけども、内陸の農機具屋さんとの連携がネットワークとして輪になっている状態であれば、物資や部品が足りない時に融通してもらえるのではないか、と。

農機具は素人が機械の名前を言われてもわからない。だから自営業者とか店舗を持っていた方への支援っていうのは、その専門的なところからの支援が一番効率がいいと思うんです。

それに呉服屋さんとか服を売っていたお店だと、地域に根ざしているほど内陸部との連携がとれないじゃないですか。だから、被災していない人たちからの支援は、知らないからできないんじゃなくて、知らないけどやんなきゃいけない状況だと思うんですね。

うちの生活も、まったく知らない方からの支援で何とか成り立っている。そういうことへの感謝で、私たちも頑張ろうという気持ちになれるんです。でも、会社やお店を営んでいた方々は、八方ふさがりになっているので、働く意識を失っていたりします。

手に職があるのにできない、何かできるはずなのに道具がないからできないという状況に心が痛めつけられる。そういうことで仕事になかなか復帰できない、諦めるという方々がたくさんいて、元気を出したくても、出せない状況なんですよ。

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個人では限界がある「信用」の問題

──コミュニケーションや情報として、被災地がどうなっているのか、どんどん発信していただいた方が良いと思います。当たり前ですが、実際に震災を経験された方の声が、なにより大きい。やはり娘さんのtwitterは、ものすごく良かったと思います。

その意味では、amazonの欲しいものリストを髙田の消防団でも使われていましたが、あれは役に立ちましたか。

福田賢司さん(父・以下「賢司」):役にたったと思います。かなりの物資が入りましたものね。

順美:避難所でも、私がリストを作らせてもらったんですけど、とても役立ちました。

直接、何かが欲しいっていうのを、直接人に話すとなると、どうしても遠慮が出るので、ネットの方で「欲しいものは何?」って言ってくれると、こっちとしてはどんどん言えるようになって、殺虫剤とか虫除けスプレーとか、すごく役立ちましたね。

──その上で、ビジネスとして考えて、被災した方の仕事をもう一度復活させるためとか、そういう視点で、欲しいものリストのようなマッチングの仕組みを、もう一度作り直したり、新しい仕組みを作ってみたりする段階に来ているように思います。

ただこれは「言うは易し」で、たとえば欲しいものリストはamazonという会社の知名度や信用力で成立しています。私の会社で同じことをやっても、なかなか信用してもらえなかったり、認知が足りない。つまり、誰がやると効率的なのか、と言う問題があります。

賢司:例えば個人でソーラーパネルを支援しますって、来た人がいるらしいんですよ。でも、この辺の人たちはちょっと遠慮もあるし、そんな高いものをもらったらあとからお金を取られるんじゃないかって疑いもあって、なかなか相手にされませんでした。

消防団にも話が来て、四方八方に手を尽くして導入先を探したんだけど、あんまり上手くいかなかった。やっぱり、役所とかを通して、この地区は電気が復旧しそうにないので、この地区に入れてくださいと役所が仲介すれば、みんな信用してくれるんじゃないかって。

俺ら消防団が行くよりも、役所がやった方が信用してくれるんじゃないかってのはあるんですよね。ところが、役所がいまのところあんまり機能していないのが、実情です。

▼福田賢司さんと福田操さん
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──今回は役所も被災したので、仕方がないとは思うんです。でも、こういうときこそ信用を担保できる人たちが上手く動けないといけません。

順美:個人的に何かできることはないかって、ネットで探したりするんですけど、どんどんと大変なことが見えづらくなって来ている。前は避難所から情報発信があれば、これが必要なんだと言うことがわかったんだけど、こうやって仮設住宅になると見つけていくのが難しくなってきてるんですね。

──支援する側がもっと自発的に動かないといけないんですよね。何が欲しい、何が必要ですというのを自らおっしゃっていただくのは、支援する側からすると逆に楽。でも、当たり前だけど、そんなの言いづらいじゃないですか。

福田操さん(母・以下「操」):そうですよね。ましてや最近、日本中であちこち自然災害が起きていると、こっちはそろそろ落ち着いてきたから、そっちなのかなと思って、ますます遠慮してしまう。

賢司:高田の場合は、避難所というのはもうなくなって、みんな仮設に入ったわけですけど、たまには救援物資も来るみたいですけど、結局は光熱費とか生活費とかそういうお金は必要。ウチは仕事をしているのでいくらかはいいんですけど、仕事をしていない世帯というのは義援金を食いつぶしているだけなんですよね。本当に仮設が良かったのかなって言う、そんな言葉も出てきてしまいます。

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支援情報は今でも人づて

──仮設に入ってから情報の受け取り方、入手方法は変わりましたか。

賢司:避難所の方が情報はありましたね。確かに最近は、こういう広報紙が回って来るんですけど。

▼仮設住宅に配られる「広報りくぜんたかた」
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順美:物資の配布は、事前の告知が重要で、どこで何を何人分くらい渡すって言うのがわかっていれば、みんなに広めやすいですよね。自分ももらえる可能性があるとわかれば、自分から動くっていう気にもなるんですけど、いきなり朝に「今日どこかで配布だ」って言われても、行った頃にはなくなっていたりするので。

──それは良くない状況ですね。不公平にもなってしまう。

順美:でも、そういう情報は、現在もほとんど人づてなんです。そういう支援は市役所とかボランティアセンターを通しての話しなので、そこに知り合いがいたり、その団体に知り合いがいれば、そこから聞ける。公的に広がるような告知はあまりなくて、実際はあんまり行きづらい状況ですね。

就労支援のようなことも少しずつ始まっているのですが、なかなか情報が伝わりません。たとえば、まごころネットでは、雇用を増やしていこうという動きをしている方もいて、オリジナルの製品を作って販売しているんです。

操:ここは遠野まごころネットっていうボランティアセンターがあって、そこでも配給を受けることができるんです。

順美:そこで、私がデザインした廃材ライトと三角イスを売っているんですよ。できることをと思いまして。お金をもらえるならなおさら。高田高校は原則アルバイトは禁止と言うことになっていたので、アルバイトじゃない形で。生まれて初めてお給料を貰いました。

操:私はこの中に付いているLEDの配線付けを私がやっている。たまたま半田付けできるっていうんで、私がしましょうっていうことでさせていただいている。娘のおこぼれをいただいています(笑)。

──そういう活動をスタートされている方がいるなら、それこそその取り組みに関する情報がネットで広まるだけでも、相当違うと思います。たとえば「欲しいものリスト」だけじゃなくて「売りたいものリスト」があればいいのかもしれませんね。

順美:ありがたいことに、それについては新聞やネットで紹介されたので、注文が殺到しすぎて今は止めているんです。何せ作っているのが私ともう一人だけで、ましてや私自身も受験シーズンなので。

──大学受験を控えているんですね。

順美:看護学部志望なんですよ。保健師になって陸前高田に戻ってこようと思って。本当は高卒で市役所に入ろうと思ったんですけど、もし高卒で入れたとしても結局できるのは雑用で、復興に携われている感じがないと、仕事に対して楽しいっていう気持ちも湧かないかと思って。

それだったら外に出ることになるけど、被災地を外から見直すいい機会ですし、何か手に職を付けた状態でまた戻って来て、保健師なら市役所の健康推進課に入れると思ったんです。

産業保健師と行政保健師があるうち、私は行政保健師になりたいんだというところまでわかったんです。各家の世帯ごとの健康状況を把握したいと思っていたんですけど、保健師ってそういう仕事をするのかなと思って。震災後の地域のヘルスケアに携わりたいと思っています。

──それはぜひ応援したいです。また私自身も、被災された方の学費を支援するファンドを作れないかと活動しています。大学の方はもちろん、入学費の支援とか考えているはずですが、なにぶん大学も被災地に限らず、状況の良くないところが多いので。ぜひまた状況を教えてください。

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クロサカタツヤ(くろさか・たつや)

株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。