前回の記事で、今年第3四半期(7-9月)には携帯電話端末市場の利益率が全体として低下したことに触れた。この業界を代表する大手8社の純利益は、合計で85億1000万ドルとなり、前期の85億7000万ドル、前々期(第1四半期)の90億1000万ドルを下回った。
業界全体でみると、第3四半期の利益率は前期(第2四半期)から1%減少したが、それでも前年同期からは30%増加、またこの3年間は年間20%のペースで増加が続いている。第3四半期の各社の状況は次の通り。
下のグラフは、大手8社の利益、価格設定、出荷(=販売)台数、粗利(額)をひとつにまとめたものである。
[縦軸:端末1台あたりの価格と営業利益/横軸:携帯電話端末販売台数(単位は百万台)]
棒グラフの内側、それぞれ色で塗りつぶした部分は、縦軸が端末1台あたりの利益、横軸が出荷台数をそれぞれ示している。その上部にある空白(線で囲っただけ)の部分は、端末1台あたりの売上平均額(ASP)を表している。
下の円グラフは(オリジナルiPhone発売前の)2007年第2四半期と前四半期(Q2011)のメーカー別営業利益シェアを比較したものだが、こうしてみると新規参入組(RIM、アップル、HTC)の割合がわずか6%から73%へと大幅に増加したことが読み取れる。
私はこの比較から「ある時代が終わった」という印象を受けている。携帯電話端末市場の厳しさについては以前に触れたことがあったが、この10年間だけでも買収合併その他の理由で姿を消したメーカーが13社もあった。そしていま、この「消滅した独立系携帯電話機メーカー」のリストに、モトローラとソニーエリクソンの名前が加えられようとしている。この15年の間に、1年にほぼ1社のペースで携帯電話機メーカーが消えた、という言い方もできる。
そうして、他社による買収などで姿を消す、あるいは独立した存在ではなくなるという例は今後も出てくるだろう。実際、RIMはすでに存続を危ぶまれる存在になりつつあり、LGの頭上にも大きな疑問符が浮かんでいる。
いっぽうで、ZTEやファーウェイ(Huawei)、レノボ(Lenovo)といった中国勢が世界の携帯電話端末市場で競争に参加しつつあるが、彼らは携帯電話端末だけを扱っているわけではない。彼らは携帯電話端末市場にある商機を目にしてから、この市場に参入したプレーヤーであり、携帯電話機ビジネスに内在するリスクをヘッジするために他の事業に依存している。アップルやサムスンが純粋な携帯電話機メーカーでない点も興味深い。
実際のところ、上記8社のなかで携帯電話端末だけを手掛けているブランドはRIMとHTCの2社に過ぎない。そして、そのことは、いまこの業界で大きな出来事が起こっていることを示唆している。携帯電話端末の開発やマーケティングは、他のビジネスモデルとは無関係に行えると考えられた時代はいま終わりを迎えようとしているのかもしれない。
(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋)
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