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700/900

2011.12.22

Updated by Tatsuya Kurosaka on December 22, 2011, 00:00 am JST

700/900MHz帯とは、地上デジタルテレビ放送への移行など、電波利用全体における周波数再編の一環として取り扱われる周波数帯の一つである。需要逼迫に伴う携帯電話業界への大場な割当が見込まれていたこと、また通信規格として3.9世代(LTEやモバイルWiMAX)が名指しされていたことから、以前から業界で話題となっていた周波数帯だが、いよいよ来春には決着の見通しとなった。

700/900MHz帯が注目される主な理由は、1)比較的まとまった規模の割当となること、2)国際協調しやすく、海外端末の導入等もスムーズに進みうること、3)電波特性の観点から同周波数帯の使い勝手がいいこと、4)そしてそうした周波数帯の大規模な再割当は、電波利用の観点からこの先当面見込めないこと、が挙げられる。このため一部では、その希少性から「プラチナバンド」とも称されてきた。

ここまでの経緯を見ると、同周波数帯の将来的な利用スキーム等を含んだ改正電波法法案が2011年3月8日に国会に提出され、同年5月には同法案が成立。また12月9日には電波監理審議会が答申を示し、同14日からいよいよ受付が始まった。震災の影響等で検討の遅れ等が懸念されたが、このままの予定でいけば、2012年1月27日の締切後、直ちに同審議会が審査し、同年2月上旬には、割当先が決まる運びとなる。

今回、同周波数帯の獲得に向けて、特に躍起となっているのは、後発(新興)の通信事業者である。従来の割当は、大きな意味では原則として先着順、つまり先に事業を開始して手を挙げた者に順次割当を進め、先行するNTTドコモとKDDIがこうした周波数帯を比較的多く獲得してきた。一方、ソフトバンクモバイルやイーモバイル等は、より高い周波数帯の利用を余儀なくされてきた。

周波数帯が上がれば、電波がより飛びにくく(回り込みにくく)なり、基地局を一層増設しなければならないなど、設備投資負担が重くなる──こうした論理に基づき、彼らは競争環境が不公平であるとして、機会均等を規制当局に再三求めてきた。こうした事業者が選ばれれば、その具体的な解消策の一つにもなりうる。

このまま後発事業者への割当が決まる可能性は十分にあるが、一方で、特に都市部では、スマートフォンの普及拡大による需要の急拡大により基地局の収容能力が不足しているという問題があり、700/900MHz帯であったとしても、相応の規模で基地局敷設を行わなければならないと考えられる。となれば、電波特性に基づく競争環境の論理よりも、むしろ需要家の多さを念頭に置いた判断の方が、国民の利益に資するともいえる。

700MHz帯については、電波干渉の問題もある。上り(端末→基地局)に関しては、すぐ下のテレビ放送とのガードバンド(緩衝地帯)が8MHz、下り(基地局→端末)がすぐ上のワイヤレスマイクとの間に3MHzしか設けられておらず、ほぼ隣接している状態である。このため、端末に高性能フィルタを組み込むなど、技術的な対策を強化しなければ、たとえば自動車内でのテレビ受信に影響が生じる等の可能性がある。

さらに、900MHz帯の「引っ越し費用」についても、どのように決着するのかは、最後まで分からない。これは、従来の電波利用者(900MHz帯でいえばMCA無線等)にその場所を立ち退いてもらう際、新規利用者がその引っ越しに係る費用を支払うというもので、周波数オークションの〈概念〉の導入を意識して設けられた制度である。

しかし先日の「政策仕分け」において、そもそもオークションを導入することが適当である、との結論が出された。法案提出の流れやパブリックコメントに諮られていることなどを考えれば、いまからオークションを実施することはむしろ行政法上の問題がある以上、政治的に〈脚色〉できる領域があるとすれば、この引っ越し費用をどうするか、というところとなろう。

こうした複数の論点がどのように判断されるのか。この先数ヶ月にわたる、電監審の検討や審議が、注目される。

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クロサカタツヤ(くろさか・たつや)

株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。