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ベンダーの技術者が語る『LTEの次』に来るもの

2011.12.22

Updated by WirelessWire News編集部 on December 22, 2011, 00:00 am UTC Sponsored by NOKIA

2011年は世界的なスマートフォンの普及が加速し、各国での商用LTEサービスが始まった年だった。急速な市場環境の変化は、オペレーターとベンダーのビジネスにも大きな影響を及ぼしている。本格的にはじまったLTEは2012年の通信業界をどう変えるのか、ベンダーのエンジニアとして日々歴史的な進化の現場に立ち会う技術者達が、本音で語る「2012年のトレンド」を、座談会形式でお届けする。

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(座談会開催日:2011年11月30日 / 於:ノキア シーメンス ネットワークス 社内会議室)

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LTEのビジネスチャンスが大きい日本

201112220000-2.jpg小久保:事前に編集部からはいくつかのキーワードをもらっているのですが、我々にとって話しやすいキーワードはまずは"LTE"だろうということで、LTEについてそれぞれのご意見を聞きたいと思います。そもそもマーケット的には、ようやく日本でも(LTE対応の)スマートフォンが発売されたところですが、まずは、グローバルの観点からということで、日本以外でのLTEの現状について、皆さんが海外出張の時に自分の目で見られていることなども交えてお願いします。

赤田:自分が海外出張に行ったときにLTEのサービスを意識することはまだあまりないというのが実感です。ただ、プレスリリースやマーケットの状況を見ていると、やはり広がってきているなという印象はあります。

今日ここに来る前に調べたんですが、11月1日現在で、35社のオペレーターがサービスを開始しています。あとは私がKDDI様を担当しているので、同じCDMA陣営でいえば、米国の最大手オペレーターであるVerizonがかなり手広く展開しておりまして、スマートフォンの機種も8機種くらいですか、日本のNTTドコモ様よりも多い数を出している。かなり世界的にも広がっているというのが私の印象です。

小島:海外ではまだまだGSMも現役で、3Gですらあまり入らないということもあって、赤田さんの言う通り、LTEを感じるということはあまりありません。オペレーターは「新しいことをやっています」というPRをしていますが、現時点で、本当に必死になる必要があるのは、例えばロンドンのような、トラフィックが逼迫している一部の都市だけですね。

そこへ行くと日本は全国的にトラフィックが逼迫しています。今後どんどんスマートフォンが出てきて、オペレーターも、トラフィックやシグナリングを処理するためにLTEへ移行するという流れになるのだろうと思っています。したがって、日本には非常にビジネスチャンスがあるため、我々もお客様に売り込んでいきたいと思っています。

安田:LTEというと2、3年前にはドングル中心でサービスを展開していくイメージでしたが、ここに来てスマートフォンでのサービスがかなり注目されつつあります。スマートフォンの場合、当然、パケットデータがトラフィックのほとんどを占めるような状況になりますので、(スマートフォンにとっての)LTEは、あくまでもオフロード先の一つ、すなわちそれぞれのオペレーターがWi-Fiなどのオフロード先を探していて、その中の一つの選択としてLTEがあるのかなと感じています。

小久保:今まで日本では、メインのネットワークで2Gを捨て3Gにして、3Gもいつか捨てて4Gにして、といった、一直線の考え方をしてきたと思うのですが、今、各オペレーターがLTEを「オフロード先」というとらえ方をしているのはおもしろいなという気がしています。

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オペレーターの投資は装置から運用へ

小久保:オフロードの話にも後ほど触れたいと思っていますが、ここで改めてLTEの特徴やメリットの技術的な話をしたいと思います。まずは赤田さん、小島さんから説明していただけますか。

201112220000-4.jpg赤田:基本的には速い、容量が大きいということですね。教科書に出ている話ですが、OFDMを使って広帯域である、MIMOが使える、遅延が小さい。

小島:技術的には広帯域でMIMOを使ってユーザーの収容数をどんどん増やせることです。オペレーターにとっては、周波数利用効率が高くなってネットワークコストが下るというメリットがありますが、エンドユーザーから見ればより速い速度でアプリケーションが使えるのと、遅延が少なくなるという効果が大きいです。ゲームなどでいわゆる「さくさく感」が高まって、「やはりLTEはいいな」と感じられている方も多い。

速さというよりは、キャパシティを上げることで、多くのユーザーが収容できるということが大きいですね。LTEのスピードをフルに使う速いアプリケーションは無いので、一人のユーザーがそんなにたくさん使うということはなくて、多くのユーザーが速いスピードを享受できるというのがメリットだと思います。

安田:運用面からお話をさせていただくと、今回のLTEからSON(Self Organizing Network)というのが一つのキーワードになっています。何万局単位の局数を打っていく中で、既存の3Gとのハンドオーバーが必要になり、今後HetNet(Heterogenous Network)のように、さまざまな小さいタイプの基地局も投入される。その中でどうやってネットワークを最適化していくかといえば、今までのように人手でやっていくにはもう限界があるので、今後はネットワークが自律的に、自動的にやっていく必要がある。

実際に標準化の中でSONのような運用面の技術が語られ出したというのが非常に私にとっては新鮮です。お客様も「いかに人をかけないで最適なネットワークを提供するか」というテーマで、自動化という方向性に向かっています。

赤田:技術的な側面もそうなのですが、従来は3GPP、3GPP2とか、WiMAX など、いくつかの系統があって、それぞれのオペレーターがそれなりにシンクはしつつも違う方向を向いていました。ところが今回のLTEに関しては、すべてのオペレーターがそちらにマイグレーションをする方向にある。これは初めてのことではないかと思うんです。

これは業界全体、エコシステムといったときは非常に大きなことで、競争が激しくなってオペレーターの囲い込みが難しくなるので、我々ベンダーにとってはいいかどうかはよくわからないのですが、産業全体を見るとこれは非常にすごいことだと思っています。

小久保:技術的な競争がなくなってしまう?

赤田:インフラがコモディティになってきて、だんだんそちら側が付加価値ではなくなってくるんです。先ほど「LTE、すごいですよ」という話をしましたが、すごいのはどのオペレーターでも当然で、その上に乗るアプリケーションなり、何なりで差別化するという方向にどんどん加速するのではないでしょうか。

運用面の差別化はコストに対するインパクトがありますが、実際の運用がエンドユーザーから見えるわけではありません。やはり違うところ、それはアプリケーションなのかサイズなのかわかりませんが、それに対する色付けというか、味付けが勝負を決めるようになってくる気がします。

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ユーザー体感はカバレッジ重視からキャパシティ重視へ

小久保:ユーザーから見える色付けというと、例えばどういうことを指すのでしょうか。

安田:従来、オペレーターがユーザーの体感を考えたときに、一番重視していたのはカバレッジでした。いかにアンテナの棒が立っているかというのか一つの指標で、「つながる/つながらない」の世界ですね。でも実際には、パケットデータのスループットがユーザー体感に直結していて、ストリーミングしていてカクカクするというのは、フラストレーションのあるネットワークになっていく。

ユーザーの思っている体感と、今我々がお手伝いしてオペレーターがやっている運用とは乖離があるので、そこをどのようにして埋めていくのかというのが一つのポイントです。いかにユーザーが求めているものにネットワークを近づけるのか、という意味で、カバレッジ重視からキャパシティ重視の方向にシフトしていく必要があると思っています。

201112220000-3.jpg私が先ほど言った、LTEが一つのオフロード先というのは、その流れの一つで、ユーザーからしてみると、パケットがある程度の帯域でスループットが出せれば、ユーザー的には「スマートフォンだったら何でもいいや」ということです。LTEはアクセス先の一つでしかないのでそれだけで考えてはだめで、さまざまな他のネットワークとの相互関係というのを重視しながらネットワークを構築していくというのが課題になってくると思います。

小島:HetNetの中にはセルの構造だけではなくて、Wi-Fiを組み合わせるといった、異なる無線方式も組み上げていきますので、とにかくトラフィックをどこにどう組み合わせるのか、というのを扱うところまで範疇に入りますね。

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キャパシティを提供するためにもSONは必須に

小久保:今、Wi-FiまでHetNetの中に組み合わせてという話が出ました。ところで、SONはHetNetとセットでよく語られますが、どこまでSONで考えていますか。LTEやWCDMAなどの、もともと3GPPの世界と、Wi-FiやWiMAXなどIEEEの世界、両方をSONで見るのでしょうか。

201112220000-5.jpg安田:SONはとても曖昧で大きなカテゴリーでもあるタームで、(最も広い意味では)Self-Organizing Network なので、自律的に動けば全部SONと言えるのです。ただ、具体的な話をするには狭義にどんどんしていく必要があるので、3GPPで言われている(狭義の)SONは、Self-Configuration、Self-Optimazation、Self-Healingというカテゴリーの中で語られて、それぞれユースケースが幾つかあります。

今、小久保さんがおっしゃったように、HetNetの中でのSONという切り口で言うのであれば、例えば端末側でWi-Fiを選択したり、LTEを選択したりという、自律的に端末がネットワークを選ぶ機能は、今後必要な機能として盛り込まれてきます。結果として、端末がベストのスループットを得られる制御を、ユーザーが気にならない、シームレスなハンドオーバーで行うというのは一つの重要な技術になっていくるでしょうし、皆そういうものを開発する方向で進んでいます。

当然、狭義のSONの中でも、LTEから3GやGSMへのハンドオーバーやCSフォールバックなども含め、「いかにユーザーが意識しないでさまざまなネットワークを使い分けるか」ということが、非常に大きな課題になってきます。

小久保:運用面をいかに効率化するという話がさきほど出ましたが、本質的には「いかにユーザーが無意識に、先ほどのユーザー体感をキープできるか」ということを意識してつくられているべきものだ、ということになるんですね。

赤田:もう一つ思うのは、「運用面のコストを下げるのがSONの目的」という言い方をしていたのですが、そもそもHetNetのようなものは、自動でネットワークを調整する機能がないと成り立たない。その観点から言えば、SONはそれ自体がキャパシティを提供するための必須条件になってくるので、そこはオペレーターにとっても差別化のポイントになるのかなという気がします。

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シームレス・モビリティ実現には課題が山積み

赤田: あと、先ほど安田さんが言われていたシームレス・モビリティという言葉、これは以前モトローラでも標榜してずっとやってきたのですが、おそらくアイデアとしては相当前からあって、例えば「Wi-Fiと3Gを自由に切り替える端末」という非常にイメージしやすい課題があったわけです。しかし、技術的な側面や、さまざまなな問題があってなかなか実現しない。わかりやすい例で言うと「Wi-Fiをずっとオンにしているとバッテリーが急速に消耗して、すぐに端末の電源が切れる」「ユーザー・端末認証をどうするのか」そういったことです。

そもそもWi-Fiというのはほぼ無料、例えば家の中ではただで使えますが、そこにオペレーターのトラフィックを流すことを考えた時、だれがどうトラフィックを切り換えるかという問題があります。端末が自律的に動作できるとしても、ユーザーにとっては、オペレーターがさばいてくれるものをわざわざ自分の家に流すモチベーションがなく、従ってそんなものを受けいれる必然性がないわけです。Wi-Fiに流したらその分携帯料金が安くなるといったことがあればユーザーが自分でやるでしょうが、そうしたさまざまなことを含めて解決しなければいけないことがあるような気がします。

201112220000-6.jpg小久保:確かに、お金なのか、それともあるポリシーを決めて、何か差別化するのか、何らかのインセンティブを付与しないと、ユーザーにはなかなか動いてもらえないということはありますね。

赤田:わかりやすい例で言うと、私がスマートフォンを持って海外出張に行くと、海外で使うパケット通信はとても高いので、ホテルではなるべくWi-Fiを使おうというモチベーションが強く働いて、自然とパケットをそちらに流します。そういうことがないと、なかなか「自動的にやりますよ」といっても受けいれられないでしょう。今はまだまだ人間が切り替えてやる必要があるので、余計にそうですね。

小島:あと、Wi-Fiだと今は速いということもありますね。特に海外では、GSMでWebを見ても全然表示されない。エンドユーザーにとってみれば、「Wi-Fiで使うと速い」というモチベーションがあります。いかに使いやすい環境下で使うかという、付加価値を与えられるかということだと思うんです。

以前は、シームレスというと音声を念頭に置いて、音声が途切れないで切り換えるという話をしていたのですが、それを実現するのは非常に難しい。以前は、回線交換でやっていたのですが、今後はVoIPなどが出てきてパケットを扱うようになると、だんだん実現が近づくと思います。そもそもユーザーの使い方が音声よりはデータへ移ってきているので、多少切れてもユーザの見た目にはけっこうシームレスに見えるようになってきていますから、そういう意味では、ネットワークの切り換えはしやすくなってきていますね。

赤田:そうですね。技術的にはかなり成熟度は上がっているのではないかと思います。あとは先ほど言ったようなさまざまな要因がある。それを乗り越えて先に進めるだけのことをオペレーターがやろうか思うかどうか、そこに壁があると思うんですね。

小島:最近、オペレーターもWi-Fiの会社を買ったり、Wi-Fiを使えますということをアピールして、Wi-Fiとセルラーの組み合わせはどんどん進化しています。それに必要な技術、セキュリティであるとか、認証関係もどんどん進化していますね。

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MVNOだってオフロードに使える

小久保:Wi-Fiの話でも分かるように、シームレスモビリティを考えていく上で、オペレーターはオフロードをとても意識していると思います。最初、安田さんからまさに「LTEも実はオフロードみたいなものだ」という話があったのですが、今、トラフィックがどんどん伸びている中で、Wi-Fi、LTE、WCDMAと、選択肢が3つになりました。はたしてこれで足りるのか、他に通信規格を増やすのか、はたまた全く別のことをしなければいけないのか。つまり、伸びているトラフィックに対して、オフロードという考え方で十分だと思いますか、それともまた別のことが必要ですか。という質問なのですが、いかがでしょう。

201112220000-7.jpg安田:必要なのは「空いているネットワークにパケットを流す」ということだと思うんです。空いているという言い方が良いのか分からないですが、全体のキャパシティは決まっていて、自分で増やせるキャパシティも限られていて、それ以上にトラフィックが増えてくるだろうと想定されますので、その中でもオペレーター間で、インフラの融通の仕合いですとか、シェアリングをするためにMVNOを使うということも考えられます。でも、そういうやり方でオフロードしていっても、ある程度までいけばそちらがいっぱいになって...。

小久保:ふりだしに戻ってしまいますね。

安田:そうなんです。

小久保:新たな周波数という観点で、携帯端末向けマルチメディア放送が少しでもオフロード的な役割を果たすことが出来れば良いのですが、まだその可能性は未知数です。

小島:できることには限りがあって、ありとあらゆる使える周波数を埋めた後は、パスを増やすとか細かく分けるしかないわけです。Wi-Fiとセルラーの違いも、たまたまそれぞれがその周波数帯を割り当てられて、別々に技術が進化してきています。それをどう組み合わせてトラフィックをさばくかを考えるしかないわけです。

あともう一つ、オフロードといっていますが、それはセルラーから見たオフロードであって、Wi-Fiのオペレーターのサービスから見れば、オフロードというよりはもっとエリアを広げることで、Wi-Fi端末をセルラーの中に入れていくという考え方になります。そういう方向でやっているオペレーターはまだあまりないですが、これからどんどん競争が激しくなるのではないかと思います。

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最大トラフィックに合わせたネットワーク設計は破綻する

201112220000-8.jpg赤田:私はオフロードをする手段が他に必要か、他に何が要るのかという議論をする時に、今までもそうですが、ネガティブフィードバックがきちんとかかって、ある状態で、サチる(上限に達する)のかなと思っているんです。

現状よりもプラスαの手段が出てきたら、オペレーターが競争力を発揮してキャパシティを増やしますが、絶対的に「この容量が必要で、これがないとだめ」ということではないわけです。例えばユーザー全員が「テレビを見たいです」という話になれば、計算すると全然足りないはずですが、実際にはそうならない。結局、できる範囲で端末とアプリケーションとの間で調整をとりながら、他社がやっていたら競争でやらざるを得ないとなって、増やしていく。そういうスタンスなのかなと。

小久保:フィーチャーフォンの頃は、オペレーターが自らコントロールしようという部分はありましたが、最終的にはユーザーが自分の体感の中で、「これ以上やっても辛いだけでおもしろくない」となって、何となくコントロールしていって、ある一定のところに落ち着いていくということですね。

赤田:ユーザーもそう思っているし、アプリケーションや、既に進歩しつくしたかもしれませんが、圧縮技術でも調整されていきますよね。よく覚えているのは、大昔の話になって恐縮ですが、ITU-Tで広帯域ISDNというのを定義しましょうという時代があって、ビデオ伝送に150Mbpsぐらい必要だという前提だったのですね。それでSTM-1という伝送単位が決まったのですが、いざ蓋を開けるとどんどん圧縮技術が進化して、今や1Mbps〜数Mbpsぐらいあったら見えるじゃないか、という話になっています。当時の話とは100倍も差があるわけですよ。

そういうことを念頭に置いて今の状態を考えると、「これくらい要ります」と言っていても、他の技術でもって全く前提が覆ってしまうことはよくあるので、結果的にネットワークのキャパシティは伸びていくのですが、いつどれだけというのはその両方のバランスで決まっていくのかなという気がします。

小島:NTTドコモ様は以前iモードでサービスを含めて提供していましたが、今は端末もアプリも勝手に外で出てきて、今、通常のオペレーターはほとんど土管になっていますね。iPhoneがいつ出るとか、あるアプリが出ると急にトラフィックが増えるから、それに対して準備していくとかいった対応で、インパクトがあったときに耐え切れないと、ネットワークが脆弱だということになって競争に負けてしまう。

安田:そういう意味で、ユーザーごとに割り当てる帯域をコントロールする、適正なデータ量に適正な価格をつけて課金するといったことをしないと、歯止めが効かないんですよね。

赤田: それもさっき言ったフィードバックの一つの方法だと思うんです。従量課金にしてしまうという。

小島:海外だとゴールデンユーザー、シルバーユーザーといった契約の違いで、支払う料金に応じてサービスを分けるようなサービスをしているオペレーターもあります。

安田:アメリカでは、基本的には月の上限量を超えるパケットはさらに課金するといった形で、もうかなり増えていますね。先ほど赤田さんも言っていたとおり、最大のトラフィック量に合わせてネットワークを構築しようとすると絶対に破綻するので、いかにユーザーのトラフィックをコントロールしながら適正なネットワークというのを設計していくかということが、オペレーターの一つの課題だと思っています。

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加入者の体感管理のためのソリューションとは

小久保:少し話を戻して、技術がコモディティ化するので、差別化のために味付けが必要だという話があったのですが、ノキアシーメンスネットワークスとしては、どんな味付けを考えているのか、というあたりについて、お願いします。

201112220000-9.jpg小島:トラフィックがどんどん増えていて、それに応じた設備を準備するのが非常に難しくなってきたということなんですけれども、トラフィックをよく分析してみると、時間と場所による変動があるんです。例えば、昼間、オフィスエリアの都内はとてもトラフィックが高いですが、夜にはユーザーが家に帰っていくので、周辺エリアのトラフィックが高くなるといったことです。

それに対してNSNが提供するソリューションは「Liquid Net」といって、水のように変動するトラフィックに応じて、Radioのリソースであるとか、トランスポートやコアのリソースを提供するというものです。自由に波が動くように、それに合わせて設備のキャパシティも変えられるようなソリューションを提供するというのが今進めているところです。

「Liquid Net」という総称で呼んでいますけれども、それを構成する3つの要素、無線部分は「Liquid Radio」、コアネットワークの部分については「Liquid Core」、その間を取り持つ伝送系については「Liquid Transport」、この3つに分けて製品を提唱していくというのが、今NSNが全体として取り組んでいるソリューションです。

安田:それに関して、先ほど加入者体感という話をしていましたが、今言ったようにトラフィックというのは常にリアルタイムで動向が変化しているので、いかにトラフィックの動向をリアルタイムでオペレーターが把握し、カスタマー・エクスペリエンス・マネジメントを提供するかということが重要になっています。

これまではオペレーターが提供するサービスを管理する、サービスマネジメントという言い方をしていたのですが、それをさらに一歩進めて、加入者の体感をどう管理していくか、ということが重要になってきているんですね。

それに対して弊社で考えているソリューションは、すべてのネットワーク機器からとれるリアルタイムの情報、トラフィック情報ですから、DPIの情報、端末ごとの動向といったものもあります。例えば、iPhoneのユーザーであればこういう動きをしますとか、そういった情報を多角的にとれるように、まずデータソースを多角化していく。基地局からとれるデータ、加入者情報のデータ、レイヤー3で動いているアプリケーションのやりとりのデータといったものを組み合わせて、ユーザーがどのような動きをするのかを知ることができます。

例えば、「荒川区に住んでいるiPhoneユーザーはこういう動きをします」くらいのところまでをある程度絞り込み、それを視覚化して、オペレーターに見せる。データマイニングという言い方もできると思いますが、そういったソリューションを弊社では提唱しています。

小久保:実際にそういうソリューションが動いている環境はあるんでしょうか?日本ではまだ無いと思いますが、海外ではどうでしょう。

安田:今説明したような、データをいろいろなソースから取得して可視化するという使い方は、海外ではさまざまな事例があります。例えば、カスタマーケアオートメーションと言っているソリューションでは、「電話がつながらない」というクレームを受ける一次対応のオペレーター向けに、ネットワークのどこがどういう不具合なのかという情報を電話の一次対応レベルで分かるようなもので、海外では一般的に提供されています。これも、一つのユーザー体感の視覚化の例です。

他には、例えばマーケティング部門等に、端末ごとのトラフィックデータを供給してキャンペーンを行うといった、単純なネットワークのオペレーションにとどまらず、マーケティングに活用するような事例があります。先日のeXperience Dayで、クラウドの事例として展示していたものが、それに近いです。

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キャパシティを上げると同時にQoSのための制度整備が必要

201112220000-10.jpg小久保:LTEになって、動画がコンテンツとしてこれから伸びてくるのではないかと多くの人が言っていますが、これは、「データ量が大きくなる」というだけのことなのか、インパクトがどのくらい広がりそうなのか、といったあたりについて、教えていただけますか。

安田:やはりストリーミングという、リアルタイムのコンテンツを配信するとなるとQoSの問題が出てきます。従来のパケットデータであれば、多少の途切れがあっても、バッファリングでカバーできましたが、ストリーミングの場合は常時、ある程度の帯域を保証してあげなくてはいけません。クオリティを担保するためにどうするかという課題があって、そこが技術的にクリアにならないと、モバイルでのVoIPもできませんし、安定したストリーミングサービスも提供できませんよね。

小島:QoSが課題ですね。アプリがさまざまな分野に広がっていく中の一つとして動画伝送を考えると、リアルタイム伝送が行われるストリーミングは、今は苦しいです。でも、今はWi-Fiでしか見られないようなものがLTEなら見られますよ、ということになると多くのユーザーが使い始めるので、爆発的にトラフィックが増える。キャパシティを上げると同時に、QoSをコントロールしていかないと、全部破綻してしまいます。オペレーターの意識がそこに行けば、我々としては製品、サービスを提供する段階になると思います。

安田:今、iPhoneでFaceTimeというアプリがありますよね。テレビ電話なんですけど、うちの家内はあれが大好きなんです。それは、おそらく、なめらかに動くから。今はWi-Fiでしか使えないのですが、ああいうアプリが一般化すると、かなりバッファリングが厳しいので、それなりの帯域をネットワークで担保してあげる必要が出てきて、それが課題になってくる。

小久保:そういう制御を本当はオペレーターとして行いたいのでしょうが、現状では、個人情報保護の観点で導入が判断しづらい部分もありますね。「オペレーターが出来ること」という枠を決めるために、制度面の意識合わせが必要になってくるし、それをやらないと「LTEで使えるようになったから」と言われて使われて、制御できなくなって破綻してしまうように思います。

使えるから使っていいよ、どんどん使ってよ、と言っていたのでは、自分の首を絞めることになりかねないし、破綻は急に来て、来たら爆発してしまうんでしょう。全面的に、さまざまな面からコントロールする必要があります。

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ベンダービジネスのターゲットはLTEの「次」へ

小久保:最後に、日本でLTEの導入が進むことは明確ですが、その上で、来年はもっとこうなるんじゃないか、こんなトレンドが来るんじゃないか、それに対して、我々がこういうことができそうだ、ということがあれば、お願いします。

赤田:私はKDDI様の担当ですので、2012年12月のサービス開始に向けて、粛々とやっていくだけですね。もちろん他のオペレーターもいろいろと出されると思いますので、ユーザーがLTEというキーワードをあまり意識しなくても、スマートフォンで高速通信できるものがたくさん出て、という状況になるのかなと。

小久保:KDDI様は、LTEのサービスブランド名をつけるのでしょうか?

赤田:決めているのかもしれないですけど、私はまだ知らないですね。知っていても、ここで言うと怒られます(笑)。でもたぶんつけるでしょうね。ソフトバンクモバイル様もULTRA SPEEDという名前をつけたりしていますし。

小久保:おそらくそこで名前をつけて、料金の話が考えられているような気がします。さきほどのインセンティブの話にもつながりますが、NTTドコモ様はXi(クロッシィ)で自社ユーザー間の国内通話24時間無料を始めて、できる限り、そちらに移行しようとしているようです。そして(データはキャップを超えたら追加料金の)従量制になっている。

小島:私としては、各社、LTEを導入して、それが立ち上がってきている段階なので、来年は次の話をしなければいけないだろうと思っています。LTEで、カバレッジやキャパシティを上げる段階になれば、先ほど紹介したLiquid Radioの導入の話を進められます。お客さんにもっとOPEXを下げるであるとか、そういった提案の話と、技術的にはもう少し先の話になりますが、そろLTE Advancedの話も少しずつ始めています。2012年以降は、LTEからLTE Advancedへ、どうマイグレーションするかという話が本格化してくると思います。

3GPPの標準化もLTE Release 10はほぼ固まりました。Release 11のドラフトが出てきますので、先行して話をしていかないと、日本のお客さんに対しては後れをとってしまうので、その辺が重要な課題だと思っています。

小久保:参考までにお聞きしたいのですが、Release 10とLTE Advancedの関係を整理するとどうなるのでしょう。

201112220000-11.jpg小島:LTE Advancedの基本機能はRelease 10で提示されていますが、一部はLTEの中に先行して組み込まれて使われます。そういった話もお客様にさせていただいて、他社に負けないように、NSNのソリューションを提案していきたい。

安田:ビジネスソリューションとしては、やはり去年から爆発的に増えているのはiPhoneを初めとするスマートフォン端末をどう扱うかということで、先ほどお話ししたカスタマー・エクスペリエンス・マネジメントソリューションの中で、端末の動向を捉えて、それをネットワークに反映させていくところを、オペレーターに提案していきたいと思います。

あとはLTE関連としては、これからどんどん実際に売っていくフェーズになるので、先ほど言ったSON(Self Organizing Network)の提案ですね。特に、(基地局を)売った後にサービスインして、次は最適化のフェーズに入ると思いますが、早い段階でセルフオプティマイゼーションのソリューションの提案活動などを始めていきたいと思っています。

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クラウドとデバイスの進化がネットワークの変化を加速する

小久保:来年のトレンドということで付け足すと、これまで「クラウド」というのがどちらかといえばIT分野の人たちの言葉だったものが、オペレーターもクラウドと銘打って何かやってくるんじゃないかなと思います。

NTTグループのようにグループ内他社がいろいろやっているというのはありましたが、これまでは、本当の土管を持っているオペレーター自身がクラウドで何かをやる、というのはあまりなかったように思います。でも、来年はいろいろとやってくるのではないかなという気はしています。NTTドコモ様は中期ビジョン2015の中で3つのクラウドを挙げていましたし、他のオペレーターも、グループの力を挙げて言ってくるのではないでしょうか。

もう一つ、インターネットの世界ではずいぶん前から言われていましたが、CDN(Contents Delivery Network)をモバイルに、という話が少しずつでてきています。そういうイベントもアジアでは行われていたりするので、そこは注目です。

小島:クラウド化が進むと、基本的に何でもリソースをネットワークに置いて、それを柔軟に使えます、という仕組みなので、結局トラフィックも増えますし、トラフィックパターンも非常に変動します。先ほどから出ている高速化、容量増加、柔軟化が求められるのかなという気はします。スマートフォンだけではなく、クラウドのようなモデルも、そうした方向性をドライブする要素になると思います。

安田:端末側がどう進化していくか、というのも重要なんですよね。今、タブレットやiPadで我々が仕事できるかというと、まだ少し不便だな、ということがありますが、あれで問題無く仕事ができるようになると、普通のラップトップもより格段にモビリティが上がると思うんです。使いたい時にさっと取り出して、さっと仕事ができるようになってくる。そういう意味では、デバイス側の進化によってネットワークの使い方が変わるというか、ユーザーの今までのトラフィックの使い方がどんどん変わってくるかなと思います。

赤田:こんなことを言ってもいいものかどうか分かりませんが、そういう意味では、LTEが出てきたから世界がパッと変わってしまうということはないのかなという気がします。それよりはiPadやiPod、iPhone、全部iですけど(笑)そういうものが出てきて、ユーザーの使い方が変わるという感じですね。不思議なのはスマートフォン自体はそんなに新しいものじゃなくて、昔からあるんですよね。

安田:昔、ノキアが2005年くらいから、スマートフォン、スマートフォンと言っていましたが、全然売れなかった。これだけ売れるようになったのはやはりiPhoneがトリガーでしたね。

小久保:(端末で)できることという観点では、特に日本の場合はそんなに変わっていないという話もあります。でも、シンプルになったと思うんですね。やりたいことが全部ホーム画面に並んでいて、メニューをたどる必要がないというのが、普通の人に受けたのかなと思います。リテラシーの高い人から見たら、どちらもあまり変わらないじゃない、となるかと思いますけど。

では、そろそろ時間となりましたので、この辺で終了とさせていただきます。今日はどうもありがとうございました。

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(編集:WirelessWire News編集部)

INDEX:

2012 通信業界のキーワード

文・安田 康平(ノキアジャパン)、小久保 卓(ノキア シーメンス ネットワークス)、小島 浩(ノキア シーメンス ネットワークス)

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