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LTE商用化元年

2011.12.22

Updated by Shigeyuki Kishida on December 22, 2011, 00:00 am JST

LTEとは「Long Term Evolution」の略で、直訳すると「長期改良版」。携帯電話方式が第1世代(アナログ方式)から始まり、改良を重ねて現在の主力は第3世代方式(W-CDMA等)。将来の第4世代方式への移行がスムーズに進むよう提唱されたのがLTEというコンセプトであった(よって、総務省では3.9世代として扱っている)が、現在ではLTEを第4世代として扱うことが世界的には一般的である。日本では2009年12月にNTTドコモがLTE方式の商用サービスを開始しており、他の通信事業者も2012年以降の導入を予定している。

LTE方式による通信サービスは、世界では25ヶ国・39通信事業者で提供されている(2011年12月2日時点、4G Americas.org資料による)。うち22社は2011年に商用化した。

LTEが導入された当初はドングル端末(USB端子等に挿入して使う、小型のデータ通信用端末)を使ったPC向けのサービスであったが、2011年に入りLTE対応のスマートフォンのラインナップが国内、海外ともに増えてきた。2011年はLTE商用化元年と言ってよい。

LTEには大きく分けて2つの方式がある。一つはFDD方式のLTE、もう一つはTDD方式のLTE(「TD-LTE」方式と呼ばれる)である。

FDD方式は、携帯電話の基地局と端末を結ぶ電波の「下り(基地局→端末)」と「上り(端末→基地局)」で異なる周波数帯域を使う方式。周波数の使い方では、既存の3G方式(W-CDMA系、CDMA2000 1x系)と同じであるため、3Gサービスを提供する通信事業者がLTEに移行する際には、FDD方式のLTEを好む傾向がある。LTE技術の開発を進めた日本や欧州系の企業は、FDD方式を推進してきた。

TDD方式はFDD方式とは異なり、「下り」と「上り」で同じ周波数帯域を使う方式。周波数の使い方では、WiMAXと同じであるため、WiMAXサービスを提供する通信事業者がLTEを導入する際には、TD-LTE方式を好む傾向がある。中国ではかねてから3G方式におけるTDD技術の開発を進めてきており、その流れで世界へTDD方式のLTEを提案してきた。

LTE方式の導入は、FDD方式が先行した。2009年の北欧での商用化を皮切りに、北米、欧州、日本、韓国等の主要通信事業者で導入されているのはFDD方式である(2012年12月時点)。一方のTDD方式も、今後導入が進むと見られている。日本ではソフトバンク系列のWCP(Wireless City Planning)が、TD-LTE互換の「AXGP」方式を導入する予定である。

また、通信事業者がどの周波数帯域にLTEを導入するかは、戦略的な判断を要する。その背景には、(1)LTE網を「いつまでに」「どのエリアで」整備するかが設備戦略およびサービス戦略において重要であること、(2)LTE網がスマートフォンの普及にしたがって「モバイルデータのオフロード先」としての役割も担うようになったこと、などがある。

国内では、NTTドコモがLTE網の整備で先行している。同社は3G網で使っている2GHz帯の一部をLTEで使っているが、将来的には800MHz帯、1.5GHz帯、1.7GHz帯(東名阪限定の帯域)にもLTEを導入する意向を明らかにしている。

KDDIは、800MHz帯と1.5GHz帯でLTEを導入する方針を明らかにしており、2GHz帯は3G網をさらに改良することで高速化を図る計画である。

ソフトバンクモバイルは、3G網で使っている2GHz帯の一部をLTEに振り向ける計画を明らかにしているが、同社系列のWCPがAXGP(TD-LTE互換)を導入する2.5GHz帯が同社のLTE戦略における中心的帯域になると見られる。

イー・アクセスは、3G網で使っている1.7GHz帯の一部をLTEに振り向ける計画を明らかにしている。

なお、今後付与される予定の周波数帯域には、900MHz帯、700MHz帯、1.7GHz帯、2.5GHz帯、3.5GHz帯などがある。これらの帯域にもLTEが導入される可能性が高い。

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岸田 重行(きしだ・しげゆき)

情報通信総合研究所上席主任研究員。1990年一橋大学卒業、NTT入社。1997年より現職。海外・国内のモバイル通信業界に関して、サービス動向から企業戦略まで広く調査研究を行っている。「通信事業者はどこへ行く」(「情報通信アウトルック2011」共著)「アプリケーション・ストア・ブームの衝撃」(「情報通信アウトルック2010」共著)「LTEの提供エリアはスムーズに広がるのか-世界におけるLTE普及への展望」(日経コミュニケーション2009年7月15日号)など、記事執筆・講演多数。