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忘れっぽい日本人といつまでも覚えている欧州人

2012.06.29

Updated by Mayumi Tanimoto on June 29, 2012, 13:00 pm JST

欧州のテクノロジー関連で最近注目されたニュースは「模倣品・海賊版拡散防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement:ACTA)」が、欧州議会の国際貿易委員会(INTA)によって否決されたことでありました。この条約、加盟国22カ国で既に批准されていますが、欧州議会での本投票は今年の七月になります。

日本では小沢一郎偽手紙事件とか、鬼束女史の「和田アキ子殺してえ」事件などで全然注目されておりませんが、欧州では「これってネット弾圧だろ」ということで、大規模な抗議活動が実施されています。

この条約、偽ブランド品や医薬品のコピー、ネット上での著作権侵害を取り締まるものですが「実態はネット弾圧じゃないか」ということで欧州全体を巻き込む抗議行動が展開されています。ACTAに怒っている皆さんの理由は以下です。

  • オンラインで個人の行動の監視が強化される
  • ISPがユーザーの行動の責任を負う
  • 議論が密室
  • 何が犯罪になるのか意味不明

Anonymous - Operation ANTI-ACTA

欧州では昨年末から200以上の大都市で大規模なデモが行われています。ロンドンではハッカー集団のAnonymousのお面をかぶった人々がユニクロの前を練り歩く問いシュールな光景が目撃されました。

デモの規模が大きかったのはポーランドです。ACTAへの反対というよりも、政府への抗議行動になっています。

Anti-ACTA Day: Thousands protest across Europe
ACTA Anger: Polish protests grow into anti-govt rage
STOP ACTA SOPA - Poland First To Fight

さて欧州ではなぜACTAに対する抗議が盛り上がっているのでしょうか?それは欧州の近代史を眺めてみれば一目瞭然です。第二次大戦前には表現の自由が制限されにファシズムが台頭し、多くの人が酷い目にあいました。東欧の国々ではほんのつい最近まで政府の悪口を言うことができませんでした。言えば家族や自分が消える可能性もあったわけです。それを経験しているからこそ、ポーランドでは抗議行動が大きかったわけです。

さて、日本では違法ダウンロードの刑罰化がすんなり決まりましたが、そのうち通信の秘密が厳しく監視されていくことになるでしょう。

欧州人は数十年前のことや最近のことも良く覚えていて、納得しないことは執拗に問いつめますが、日本人は忘れてしまうのが早いようです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。