対サムスンとの特許裁判で証言台に立ったアップルのフィル・シラー(Phil Schiller)氏は、iPhoneの新機種を投入する際の販売台数の目安として、アップルでは「前世代までの全機種の累計販売数とほぼ同じになる」("Each new generation sold approximately equal to all previous generations combined.")と仮定していると述べていた。
これはとても便利な物差しである。この目分量の予測が実際に正しかったかどうか、また今後も使い続けられるかどうかについて考えてみよう。
この目分量の予測について調べるには、各世代のiPhoneの販売台数を知る必要がある。アップルが公表しているのは、「四半期ごとに合計で何台のiPhoneが売れたか」という数字だけで、世代別のデータはない。そこで、世代別の割合を仮定してみる必要がある。ここでは、3GSと3Gが同時に販売されていた時期には前者が90%に対して後者が10%。また4S、4、3GSが同時に売られている現在は、それぞれ85%、10%、5%の比率となっていると仮定してみる。
[iPhoneの世代別推定出荷台数(単位:千台)]
各世代のiPhoneの合計販売数を示したグラフは次の通り。
[世代別iPhone販売台数(単位:千台)]
上掲のチャートのうち、左側の青で塗りつぶした棒グラフは、現在までの各世代の販売台数。右側の白いほうは、前世代までの機種の販売台数の合計である。
このチャートからは次のような事柄が読み取れる。
これでようやくiPhone 5の販売台数の話に移れることになった。
ここまでの試算から、今年9月末時点でのiPhone販売台数合計について、2億6300万台以上という数字が導き出された。それを付け加えたのが下のチャート。
[世代別iPhone販売台数, iPhone "5"を含む(単位:千台)]
この目標値は妥当なものだろうか。
残念ながら、この数字はいまも変化しているものである。4Sや4はいまなお生産が続いている。そのため時間の経過とともに、この目標値は増加することになる。ただし、それでも答えにたどり着く方法はある。
以前、設備投資額の予算を元にした生産能力の分析をしたことがあった。あの分析で出てきた予想は、続く2四半期の間に最大で1億6500万台のiOS端末が販売され、そのなかでiPhoneは1億200万台を占める、というものだった。あの時に予測した数字に、60%という成長率の数字をかけると、次のような答えが導き出される:今後12ヶ月間にあわせて約2億台のiPhoneが販売される。そして、そのうちの85%が新型iPhone(iPhone 5)になるとすると、新機種の販売台数は2013年半ばまでに約1億7000万台、ということになる。
これでは、先に挙げた2億6000万台以上というレベルには到底達しない。けれども、これは最初の12ヶ月間に限った数字である。iPhone 5が3GSと同じくらい長く生産され続けるとしたら、2億台突破の可能性も出てくる。また、世代ごとの比率に関して、古い世代がもっと少なくなる可能性もある。実際にそうなった場合、iPhone 5の販売台数は目標値の2億6000万台超に到達するかもしれない。
(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋 / 原文公開日:2012年8月6日)
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