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採用をクラウドソースせよ

2012.11.20

Updated by Mayumi Tanimoto on November 20, 2012, 22:26 pm JST

ネットを見ていると新卒の方が就活のことであれこれと悩んでいる書き込みを大量に見かけます。面接で何を言うべきか、エントリーシートはどうやって書くべきか、スーツは何にするべきか、OB訪問はどうすべきか。転職する方の書き込みも沢山みかけます。

でもね、自分が雇う方になって考えてみると、面接で何をしゃべったか、履歴書やスーツやエントリーシートの内容なんて、実はどうでもいいんですよ。

大事なのは 払った分の報酬に見合った仕事をやってくれること じゃないでしょうか。

実際現場でお仕事されている方、そう思いませんか?

性格が良かったりチームメンバと仲良くやってくれることも大事ですが、運用できない人、責任を持ってやらない人、技術力がない人、ドキュメント作れない人、お客さんと折衝できない人、開発できない人って、周囲の足を引っ張るだけです。稼げません。

そういう人は、いるだけで事務所の電気代や場所代がかかるし、その人用のPCだって必要だからいてもらっても無駄です。足を引っ張る人がいると周囲もやる気がなくなります。だってその足を引っ張る人の給料を出すために周囲が働かなくちゃいけないんですから。

でも、履歴書や面談では、本当に仕事ができるのかどうかわかりません。なら、履歴書や面接に頼る採用を辞めてしまえば良いんですよ。

履歴書や面接をしないでどうやって人を雇うか?提供してくれる物をみればいいんです。

誰がチームに入れる時は、課題を出してやってもらったり、小規模な仕事をやってもらって、その結果で決めるわけです。もちろん無償では可哀想なので少々の費用を払います。成果物の質は人事がみたってわかりませんから、事業担当者が見ることになります。現場で仕事してないんだから、何が良いかなんてわかるはずないんです。

ただし関門は候補者を見つけることです。なるべくコストをかけずに良い候補者を捜し出し、ちょっとした仕事をやってもらって成果が良かったらプロジェクトに入ってもらったり、採用するのにはどうしたら良いか?

ちょっと特殊なクラウドソーシングを使うんです。

例えば統計や分析のクラウドソーシングサービスを提供しているKaggleには世界中から「俺こそは!」という統計分析マニアが集まってきます。Kaggleでは働いてくれる人を捜す会社や個人が分析コンテストを実施することができます。コンテストで良い結果を出した応募者は賞金を得ることが可能です。

実施されているコンテストには「ユーザーは新曲を気に入るかどうか?」を分析するEMI Music Data Scienceは賞金一万ドル(約81万円)、 「患者が次の年に誘引するかどうか」を予測するHeritage Health Prizeの賞金はなんと300万ドル(約2億5千万円)などがあります。中小企業から中央政府、大手の会社まで様々な会社や団体がこのサービスを使っています。

こういう風にクラウドソーシングサービスを使ってコンテストを実施すれば、良い成果物も手に入る上、優秀な人を何人も見つけることが可能です。日本だけではなく世界中から人を捜すことが可能なのです。

賞金を出したとしても、人事コンサルティング会社に大金を払って履歴書のスクリーニングをしたり、成果物の内容がわからない人事部が何千人もの人を面接するよりも、費用対効果が高いことは目に見えています。

成果物しか見ないのですから、人事や面接担当者がもっている見た目、障害、性別、学歴、服装、人種、サークルをやっていたかどうか、ボランティアをやっていたかどうか、なんて偏見も関係がありません。

そういう偏見にとらわれて本当に優秀な人を見失っているとしたら、なんと愚かなことでしょう。

求めている成果物を提供してくれる人は、ガーナの僻地やパラグアイの平原に住んでいる人かもしれないのです。60代で足に障害があるので自宅でしか作業できない人かもしれないのです。欲しいのは求めている成果をだしてくれる人で、飲み屋でなれ合う人ではないんです。成果さえ出してくれるなら、家にダッチワイフが50体あろうが、女装マニアだろうが、カップ麺しか食べない人だろうが、ナマコが好物のパレスチナ人だろうが、何でもいいんです、何でも。

英語を社内公用語化すれば世界中から優秀な人材が集まってくると妄想している方は、牛丼に頭を突っ込んで考えてみると良いでしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。