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自民党の情報通信政策 ~ICTによる復興・防災の仕組みを起点に経済成長の出発点へ

2012.11.30

Updated by Asako Itagaki on November 30, 2012, 12:36 pm JST

自民党全体のICT戦略としては、2011年8月に東日本大震災を受けて自民党新ICT戦略「デジタル・ニッポン2011絆バージョン~復興、そして成長へ~」 が発表されており、今回の選挙でも基本路線に大きな変更は無い模様だ。本稿では、上記とあわせて今回の選挙にあたり発表された「政権公約」内でとりあげられている政策についてまとめた。

基本戦略

自民党新ICT戦略「デジタル・ニッポン2011絆バージョン~復興、そして成長へ~」の内容は、2010年に発表された新ICT戦略「デジタル・ニッポン」[PDF]を踏襲したうえで、被災地の当面の復旧・復興への貢献を最優先課題とし、また東日本大震災と福島第一原発事故を教訓とした超広域災害への備えを固め、さらに、これらのICTによる新たな復興・防災の仕組みを経済成長への出発点とする。

「デジタル・ニッポン」では、社会問題解決による国民生活の向上、ICTによる経済成長と新規雇用拡大、オープンでデジタルな政府による国民サービス向上をICT戦略の目的据えている。社会問題解決のためには、医療、福祉、教育、環境、安心・安全、少子高齢化の戦略5分野にデジタル投資強化と特区で支援する。また、経済成長と新規雇用拡大については、デジタル投資3倍・経済成長4%・新規雇用500万人を掲げる「ニッポン3・4・5戦略」として、デジタル産業、コンテンツ、クラウドを戦略分野として投資優遇措置やスーパークラウド特区などの政策を推進。国民サービス向上については、電子政府、地域分散、政府情報利活用、国家公務員定数削減を対象分野として、オープンガバメント法、情報通信省設立、国家CTO、CIO設置などを掲げていた。

2011年版では、上記は継続しつつ、新たな目的として、東日本大震災を受けて優先度別に3つの目的と基本戦略が提示されている。

▼新たな目的と基本的戦略(「デジタル・ニッポン2011絆バージョン~復興、そして成長へ」より抜粋)
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優先度が最も高く設定されている目的が、被災者の命と生活をまもること。対応する「喫緊に実施すべき政策」としては、被災者の命と生活を守るための「被災者支援システムの緊急構築」として、医療・教育・行政の3分野の施策をあげている。

次に優先度が高く「早急にスタートすべき政策」として設定されているのが「超広域災害に耐えうる社会基盤構築」による地域と広域の絆の再生である。新たなテーマとしては、行政基盤、通信基盤、医療基盤3分野で、それぞれのテーマが設定されている。

通信インフラ強化については、特に、災害時即応能力の強化、「特に通信網の途絶を最小化する」とうたわれている。国内の広帯域通信網については、グリッド網として配備することで、災害時には迂回路を通ることで途絶を最小化し、同時に緊急通信基地を整備する。

また、千葉県に現状集中している海外との基幹海底ケーブルを東北に増設し、海外との通信網確保を図るとともに、データセンターなどの地域産業化をはかることで地域振興の役割を担わせる。

同時に災害対策として必要な規制緩和として、900MHz帯周波数の利用、災害時の携帯電話事業者ローミング、移動タイプ衛星電話の通常時利用の3点を挙げている。

中期計画としてスタートすべき政策としては、「復興基盤の成長基盤化」による経済成長である。新たなテーマとしては、災害拠点となるスマートシティ、クリーンエネルギー利用振興が挙げられている。

また、「官の政策・資産を呼び水として、積極的に民間活力(ノウハウ、資金)を活用する」として、具体的には以下の4点を挙げている。

(1)官のICT資産を、クラウド技術を活用して「所有」から「利用」に切り替える事で民間需要を盛り上げる
(2)官のICT資産及び関連業務を地域に分散し、地域経済を盛り上げる
(3)分散化に伴うデータセンター等の構築にはPFI方式活用等で民間活力を積極的に活用する
(4)医療、通信等の分野で規制緩和を行い、民間での新たなビジネスモデル構築を促す

政権公約内のICT政策

今回の選挙における「政権公約」内では、外交分野での政策として「コンピューターやインターネットへの不正侵入、データ破壊、情報漏えいなどへの対策(サイバーセキュリティ対策)を強化します。」とセキュリティ対策重視が挙げられている。また、政策バンクには、情報通信に関連するものとして以下が挙げられていた(以下、「自民党 重点政策2012」[PDF]より抜粋)。

●事前防災を重視した国土強靭化
・本社機能、研究開発機能、データセンター等の地方移転を促進します。
・行政インフラや通信インフラをはじめ、生活関連インフラを含む重要インフラの整備と災害時即応能力の向上に努めます。
・準天頂衛星を活用したG空間情報センター及び防災システムを整備します。

●外交・安全保障
・コンピューターやインターネットへの不正侵入、データ破壊、情報漏えいなどへの対策(サイバーセキュリティ対策)を強化します

●地方の重視・地域の再生
・ICTの活用によって、災害時の安否確認など社会問題の解決を図ると同時に、国民生活の向上と地域経済の成長を実現します。

●政治・行政・公務員改革
・「インターネット利用選挙解禁法案」を制定します。

12月16日(日)は投票日です。

通信業界に関連の深い政策について、投票前にあらためて確認してみよう。

第46回衆議院議員総選挙:民主党・自民党の情報通信政策

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。