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スタートアップ向けクラウドファンディング

2013.01.14

Updated by Mayumi Tanimoto on January 14, 2013, 07:24 am JST

クラウドファンディングが日本でも注目を集めておりますが、イギリスと大陸欧州ではスタートアップ向けのクラウドファンディングも人気であります。

ちなみにイギリスでは、1993年にEnterprise Investment Scheme(EIS: 企業投資スキーム)という制度が始まりました。年間£100万(約1億3千万円)を上限に投資家は30%の税控除を受けられます。投資したお金を3年間は動かせないという決まりはあるのですが、キャピタルゲインに対する税控除もあるというなかなか面白い制度です。イギリスでは食品、テクノロジー、教育等々様々な分野で企業が盛んなのですが、こういう制度があるのでお金が集まりやすい、という側面もあるのでしょう。

イギリスのクラウドファンディングサイトで最も有名な物の一つは株式投資型クラウドファンディングである Crowdcube です。このサイト面白い点は、誰でもオンラインで簡単にアカウントを作ることができて、その会社の株式に投資ができることです。投資方法も簡単で、サイトからお金を入れれば官僚です。スタートアップの会社はサイト上にビデオを掲載したり事業説明資料を掲載して「ピッチ」(売り込み)を行い資金を募ります。

出資額によって得られるリターンは異なります。小額だとその会社が運営するレストランの割引券、サービスの永久会員権など様々です。金額が大きければ株式を所有することになり、会社の経営に対する発言権や会社を一部所有する権利が発生します。

投資の最小金額は約1300円、最大で約1億3千万円と幅が広いので、小額からでも気軽に投資できるのがいいですね。

Crowdcube の投資ポートフォリオはなかなか興味深いです。まず、起業家の平均年齢は40歳と実はそれほど若くありません。企業である程度経験を積んだ人がそれを元に起業するケースが少なくない様です。

企業が多いのは飲食と情報通信です。飲食の分野を見てみると、ウイスキーやビールの醸造などのイギリスらしい物からレストランや新しい食品の開発など様々です。スタートアップというと情報通信を想像しがちですが意外ですね。

また一企業あたりの平均的な投資家の数が63名です。企業によっては400名を越える投資家がいます。また集まった投資資金の平均は2000万円ですから決して小さい額ではありません。平均すると51日という短期間で希望する金額の資金が集まっているのも興味深いです。銀行やベンチャーキャピタルと交渉したり調整する時間と比べたらずっと早いかもしれません。なお、投資家に提供された株式の比率の平均は16%です。

▼Crowdcube Infographic(拡大して表示

Crowdcube で資金を集めた会社の中にはなかなかユニークな会社が集まっています。例えばレズビアン向けマッチングサイトの Dattch はレズビアンのみ参加可能な出会い系サイトです。約6万5千円投資すると永久会員権と税控除が得られ、約260万円投資すると、Tシャツ、社長との夕食とおしゃべり、会社の役員会で投票する権利、税控除などがついてきます。

日本では起業家が増えない理由を文化などの理由にすることが少なくありません。確かに、失敗を認めない文化や、起業するというリスクを避ける人が少なくない、というのも理由の一つかもしれませんが、まずは、このように、わかりやすい税控除の仕組みを作るとか、スタートアップ向けのクラウドファンディングを制度として認めるという「形」から入るのも重要なのではないでしょうか。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。