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Go Mobile、誰もが携帯市場にやってくる -American Heart AssociationとQualcommの基調講演

2013.03.05

Updated by Kenji Tsuda on March 5, 2013, 18:00 pm UTC

携帯電話、スマートフォンなどの通信ネットワークに関する世界最大の展示会といわれるMobile World Congress。端末ではもはやスマホであろうとタブレットであろうと、通信オペレータや通信機器メーカーから見ての新しさは少ない。しかし、この携帯業界にはこれまで縁の薄かった企業が続々参加している。インテル、オラクル、SAPといったパソコン用の半導体チップメーカー、企業向けソフトウエアメーカー、製造系のソフトウエアメーカーなどの大企業から、小さなソフトウエア企業やモジュール企業なども参入している。まるで、みんなが携帯に参入する「Everyone Go Mobile」といった状況だ。今回は特に、「Go Mobile」あるいは「Go Wireless」という標語が目立った。

もともと携帯通信オペレータの集まりであるGSM Congressから出発したMWCの初日の基調講演には、AT&T、中国チャイナモバイル、地元スペインのテレフォニカ、イタリアボーダフォン、NTTドコモといったオペレータが集まった。従来のオペレータや携帯電話機メーカーに加え、携帯以外の産業からの基調講演もGo Mobileのトレンドを示している。自動車メーカートップのゼネラルモーターズ(GM)、米国の心臓病撲滅するための組織であるアメリカンハートアソシエーション(AHA)が基調講演を話した後、世界3位の半導体メーカーに成長したクアルコムが講演した。GMはコネクテッドカー、AHAは血圧や心拍、血糖値などを毎日定期的に測り心臓病による死者を減らす活動をしている。

▼図1 American Heart AssociationのNancy Brown氏
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特にAHAのナンシー・ブラウン氏(図1)は、米国内での病死の最も多い原因は心臓病だと述べた。AHAでは心臓病による死亡を2020年までに20%削減する戦略だとしている。このためにHeart 360と呼ぶキャンペーンを展開し、血圧や体温、血糖値などの健康データを測定し、病院へ送り、正しい情報を元に早期治療ができるようにするための活動に取り組んでいる。同氏は、テクノロジーのおかげでセンサや半導体が健康状態を測定することができるようになったという。AHAは、クアルコムから提供されたヘルスケアデバイスを使い、グローバルにも展開し、発展途上国の健康管理に応用し、医者に診てもらえずに死ぬ割合を2025年までに25%減らす計画だとしている。

▼図2 QualcommのCEO兼会長のPaul Jacobs氏
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世界第3位の半導体メーカーであるクアルコムCEO兼会長のポール・ジェイコブズ氏は、モバイル技術を「Enabling Technology in many industries」と定義しており、携帯(スマホ)で全てのことができるようになると述べた。スマホは生まれながらに移動可能であり(Born Mobile)、常時インターネットに接続された(Always-on)デバイスである。この技術を全てのモノに生かすことによって、Internet of Everything(全てのモノをインターネットにつなげる)を実現すると語る。これまでは、IoT(Internet of Things)という言い方をされてきたが、同氏は全て(everything)とさらに明確にした。2020年には240億台のデバイスがインターネットにつながるという。

クアルコムは、Digital 6 Senseすなわち、人間の第6感に相当する機能をデジタルで表現するというデバイスの実験にも取り組んでいる。例えば、5本指の手袋(指先は外に出ている)に指の動きのセンサ、アルゴリズム、発信器を組み込み、ピアノ操作の実験をしている。人間は5本指でモノを検知(センス)し、さらにデジタルでモノの感触を伝えて音楽としてダウンロードすることができるというものだ。指が楽曲を覚えて、デジタル的にメモリに記憶させることもできる。だから「デジタルシックスセンス」と呼んでいる。

クアルコムは現在の携帯の接続性を改善するための試みも展開している。例えばAllJoynという新しいピアツーピアを実現するための仕組みを提案している。これは従来の通信ネットワークだと、近くにいる友達にデータを送る場合、いったん通信ネットワーク公衆網に上げた後に友達に向かってデータを下しているが、近くにいるなら直接送る方が通信トラフィック負担をかけないで済む。クアルコムはAllJoynをオープンソースのソフトウエアフレームワークとして作り、SDK(ソフトウエア開発キット)として提供している。

ジェイコブス氏は、「スマホは2012年にパソコンの2倍の台数を出荷した。今やスマホがコンピューティングのプラットフォームになっている」と述べた。だからスマホをさまざまな応用に使うことがこれからの成長を開くことになる。幼児教育用にセサミストリートのワークショップのスクリーン上で音楽のコンセプトを作るとか、健康管理にテレヘルス技術を使って病死を45%減らすことなどに使えるとする。また、タブレットは教室だけでなくどこにいても勉強できる。さらにAllJoynによって、ピアツーピアで通信効率を上げる方法が使えるようになる。

 
文・津田 建二(国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長)

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津田建二(つだ・けんじ)

現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長兼newsandchips.com編集長。半導体・エレクトロニクス産業を30年以上取材。日経マグロウヒル(現日経BP社)時代からの少ない現役生き残り。Reed Business Informationでは米国の編集者らとの太いパイプを築き、欧米アジアの編集記者との付き合いは長い。著書「メガトレンド半導体 2014-2023」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」など。