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NFCって使えるの? 〜モバイルスイカに慣れた日本人の目からNFCを検証

2013.03.05

Updated by WirelessWire News編集部 on March 5, 2013, 17:30 pm JST

NFC(Near Filed Communication)を巡る動きが急激に活発化している。MWC2013では、NFCを巡る大きな発表も複数見受けられ、その兆候が特に顕著に見てとれる展示会となっている。中でもサムスンとビザ・インターナショナルとの提携は業界にとって非常にインパクトがある。スマートフォン販売シェア台数第一位のサムスンの端末に、ビザの提供する「payWave」のペイメントアプリをプレロードすれば、2割ものスマートフォンユーザへ直接接点を持つことが可能となり、他のサービスと比較し優位に立つことができる。 この発表についてビザ・インターナショナルでグローバル製品の頂点に立つJim McCarthy氏は「この両社の提携は業界にとってマイルストーンとなるだろう」とも語っている。

MWC2013では、開催者であるGSMアソシエーション(GSMA)のプロモーション活動も目を見張るものがある。「NFC Experience」と称した今回のGSMAによるプロモーション企画では、NFC対応端末を使って様々なシーンでNFCを利用したサービスを体験できる。端末画面をIDとして利用したり、レストランや売店での支払いや、スマートタグを活用しポスターをかざせば端末に情報が表示されるといったサービスまで利用できるしくみだ。NFC ExperienceはNFC対応のスマートフォン(Android v4.0以上、Windows 8、Blackberry7.1以上)を持参すれば誰でも体験できるとある。

▼NFC Experience
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NFC Experienceでは、より多くの業界人にNFCを取り上げてもらう、大掛かりな工夫をしている。例えばGSMAでは、著名な媒体からの報道陣に招待状を送り、ソニーの新たなフラッグシップ端末「Xperia Z」を配布している。ここには15ユーロ分のバリューがプレロードされており、利用者が自由に使える上、体験が終われば端末はなんとそのままもらえる。さらに一般の訪問者に3,500人にも事前登録により同じ待遇でサービスを体験してもらうという大盤振る舞いぶりだ。GSMAによるNFCのプロモーションでここまで大々的に展開するのは今回が初めてだろう。そしてこの積極的な戦略が功を奏している。これまで「NFCなんて技術用語は口にしなかった」というようなガシェット系ジャーナリストも、今回はこのトライアルについて熱っぽく語っている姿が印象的だった。MWC特集を組む業界誌の紙面には、必ずと言えるほどNFCが取り上げられている。

それでは、どんな具合で利用できるのか。まず会場入り口では通常パスポートなどの身分証明書と入館証が必用となるが、端末にアプリをインストールし、事前に写真付の個人情報を登録すれば身分証明書の提示はなくなる。会場内のポスターには、展示場の案内からバルセロナのレストランまで情報収集できる大きなポスターがあり、ここに端末をかざせば画面にURLが送られ、これをクリックして情報を得る。会場内のレストランでは、端末をかざせば商品が購入できる。

▼NFC Experienceの大きなポスター
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確かに便利なのだが、モバイルスイカに慣れている日本のユーザーにとっては、煩雑に感じられる面があるのも事実である。ポスターに端末をかざしてもURLをクリックして情報を取りに行かなければならず、ひと手間かかる。レストランの支払いでは、端末のロックを解除しアプリケーションを立ち上げPINを入れるという何段階ものステップが必要だ。この一連の作業は、端末の電池が切れてもかざせば使えるというモバイルスイカに慣れたユーザーには厄介に受け止められる。使い勝手では日本のモバイルペイメントが3歩先を行くというのが正直な感想である。

▼タグをかざした時の画面の様子
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そしてもう一つ特筆したいのが、対応端末にも例外があるという点だ。筆者の所有するスマートフォンはNFC非対応であった。「Android 4.0以上」というのを鵜呑みに、GSMAの端末無料配布事前登録もしていなかった私は、顔見知りのジャーナリストにデモを見せてもらうという失態ぶりであった。トップメーカーのフラッグシップ端末でも使えないとは。スマートフォンでもガラパゴスかと落胆させられた。

しかしながら、この状況も改善しつつあることが会場内の展示でみてとれる。日本の端末もこれからはNFC対応になっていくというのを関連するブースの説明員が力説していた。NFCを取り巻く環境は着実に前進しているようだ。

文・宮下 洋子(情報通信総合研究所副主任研究員)

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