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Facebookのロビー活動

2013.04.05

Updated by Mayumi Tanimoto on April 5, 2013, 03:26 am JST

通信会社やITサービスをやっている会社にとって、お上の決める決まりごとは、会社の先行きを決めるオオゴトであります。

ワタクシは大学院生の頃、こういう会社様の代理人としてアメリカの議会、マスコミ、政治家、国際機関、学者、非営利団体様に「圧力」をかける「ロビー会社」(圧力団体)というところでインターンシップをやっておりました。(アメリカの大学院はインターンシップが必修になっていることがあります)別名「陰の広告代理店」です。

お客様よりお金を頂戴し、自分のコネを使って議員に「これをこうやってゴニョゴニョ」、マスコミさんに「これをこうかいてゴニョゴニョ」、お役人様に「これはこう書いてゴニョゴニョ」とお願いするお仕事です。日本政府様や企業様も外国で当然これをやっていますが、かけているお金の桁がちがうので、今一影響力が弱いのでございます。他の国はこういう「破壊工作」にゼニを突っ込んでいます。世の中において大事なのは、とにかくゼニでございます。ジャパンはもっとゼニを払わなければなりません。

アメリカというのはオープンな国なので、「ロビー会社」様は国会に登録されていて、ロビー会社名簿なる物にも「うちはどの方面の代理をやっていますよ」と公開しています。すごいですね「俺は悪徳広告代理店だぜ!」と自分で言ってしまっているわけです。

ワシントンDCではこの「ロビー会社」というのは、Kストリートという所に集っております。狭い界隈なので業界関係者顔見知りです。この近辺には量り売りのお惣菜屋がたくさんあって、昼になると界隈の「陰の広告代理店」の人々が集って、あんまりうまくない偽日本食とか、べろんべろんに伸びた焼きそばを食べています。たまに、世界銀行とかIMFとかFBIとか連邦政府のお友達も遊びに来ます。

今の仕事に飽きると、まずい焼きそばを食べるフレンドのコネを使って他の機関にいったり、ロビーストになったりしてグルングルン回転するのです。この街では、カジノのルーレットの様に回転するともっと沢山のお金がもらえるという仕組みになっています。そういう物なのです。

ちなみに、皆さんの大好きなFacebook様もKストリートにある「ロビー会社」をやとって色々やっています。シリコンバレーの他の企業とロビー団体(圧力団体)を作って、その団体に資金提供し、外部のプロのコンサルタントを雇っています。最近雇われたのは以下の人々です。

Peck Madigan Jones and Fierce:Mark Isakowitz 元経済団体幹部
Isakowitz & Blalock.: John Michael Gonzalez 元議員秘書
Glover Park Group:Joe Lockhart 元ホワイトハウス高官。元Facebook勤務
共和党戦略家:Jon Lerner
共和党戦略家:Rob Jesmer

この団体、アメリカ政府の501(c)(4)という分類にあたる「福祉の推進団体」にあたります。「誰がどのぐらいの資金を提供したのか開示しなくて良い」という仕組みの団体なので「ダーティーマネーの団体」と呼ばれています。名目上は非営利団体で、福祉を推進しますと言っていても、実態は企業の利権のために働く圧力団体なわけです。

ちなみにこういう団体には、英語圏の大学院で政治学や行政学、広報学、経済学の修士号や博士号を取った研究者や調査の専門家が雇われており、お金を出してくれる企業に有利な調査報告書を作って、マスコミに発表し、世論を操作します。日本ではオーバードクターでワープアになってしまうような人が、アメリカでは高給で雇われます。日本人にも仕事があります。アメリカでロビー活動したい日本のクライアントがいるからです。

大学の研究者が外部専門家として雇われ、クライアントに有利な研究をすることもあります。ただ、自分の研究に政治色が付くことを嫌がる先生はこういう活動には手を出しません。また、仲良くしていた政治家やロビーストが失脚すると仕事を失うばかりか、大学での立場も危うくなりますので、リスクが高いと言えば高いのです。

この団体がロビーして行く分野ははっきりとはしていませんが、外国人移民問題や教育問題に関する圧力をかけていくのではないか、と推測されています。シリコンバレーの会社は優秀な外国人移民でもっている様なものなので、移民規制の緩和は重要事項です。

政治とはなんだか縁がなさそうなWeb系の会社も、色々と政治的なことをやっているわけですね。「政府高官とか政治家に言うことを聞いてもらうつながりも大事♡」ということでしょうか。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。