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成長余地の高いインドのスマートフォン市場に挑むパナソニック

2013.09.27

Updated by Hitoshi Sato on September 27, 2013, 12:45 pm JST

パナソニックは2013年9月26日、パナソニック モバイルコミュニケーションズが担当する携帯電話事業を見直し、国内通信事業者に供給している個人向けスマートフォンについて、2013年度下期以降の新製品開発を休止することを発表した。日本国内のコンシューマー向け市場から、「P」のブランドで長年に渡って親しまれたパナソニックの製品が姿を消すことになる。

今回は、そのパナソニックの海外でのスマートフォン販売の取組みを紹介していきたい。2013年8月に、ドイツでスマートフォンの販売を発表したパナソニックだが(関連記事)、5月にはインドでもスマートフォンの販売を発表している。日本では報じられることが少なかったが、インドではインドの俳優Varun Dhawan氏らがテレビに出て宣伝していたり、テレビ、新聞、Webのニュースで取り上げられており、現地での注目度の高さがうかがえた。

▼インドでのパナソニック「P51」について語るインドの俳優Varun Dhawan氏

パナソニックはインドでAndroid OS搭載のスマートフォン「P51」を2013年5月23日から26,990ルピー(約43,000円)で販売すると発表した。インド市場では高価格なハイエンド端末である。デュアルSIM(1つの端末に2枚のSIMカードを挿入できる)対応など、現地のニーズに応えている端末で、都市部の若年層を中心に売り込む方針だそうだ。

続いて2013年7月末には廉価版のスマートフォン「P11」を16,900ルピー(約28,000円)で発売、「T11」は10,000ルピー(約16,000円)で発売することを発表した。2013年9月からはオンラインでも購入が可能で「P11」が16,364ルピー、「T11」が9,520ルピーになっていた。

OEMメーカーが開発したものをインドのパナソニックが販売しているとのことであるが、それでもパナソニックブランドのスマートフォンである。パナソニックは「P51」発表時に、インドのスマートフォン市場でシェア8%を目標にすると述べた。

▼「P51」
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▼「P11」(左)と「T11」(右)
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▼「P11」と「T11」(48秒から)

インドの携帯電話市場

人口が約12億4,100万人で世界2位のインドの携帯電話加入者数は約8億7,000万である。人口普及率では約70%だが、これは決して8億7,000万人が携帯電話を保有しているのではなく、SIMカードの販売枚数である。そしてインドでは90%以上がプリペイドでの利用である。つまり1人で複数枚のプリペイドSIMカードを購入しているので、実際には携帯電話を保有していない人はまだ多数存在している。3Gはまだ3,400万程度で携帯電話加入者全体に占める割合だと4%程度である。そのため携帯電話やスマートフォンからのインターネットアクセスはWi-Fiを利用することが多い。通信事業者も多数あり、競争は非常に激しい市場である。

▼インド市場での携帯電話加入者数(当局公開情報を元に筆者作成)
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インドのスマートフォン市場:台頭する地場メーカー

インド市場ではスマートフォンの人気も高いが、今でもフィーチャーフォンも根強い人気がある。携帯電話販売台数が2013年第1四半期(3カ月)で約6,073万台、そのうちスマートフォンは約611万台と10%程度である。携帯電話(フィーチャーフォン)はまだフィンランドの老舗メーカーNokiaのようなレガシーなメーカーが強いが、スマートフォンでは地場メーカーのMicromaxとKarbonnといった企業がランクインしている(この2社は携帯電話の販売でもランクインしている)。日本では聞いたことがない馴染みのないメーカーであるが、インドではテレビやビルボードでの宣伝も目立っており、インド市場においてブランドが確立されてきている。

▼2013年Q1にインドで販売された携帯電話 メーカー別台数とシェア
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(IDC情報を元に筆者作成)

▼2013年Q1にインドで販売されたスマートフォン メーカー別台数とシェア
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(IDC情報を元に筆者作成)

そしてインドでは10,000ルピー(約16,000円、160ドル)以下のスマートフォン端末が人気である。インドの平均月給を以下に掲載するが、160ドルのスマートフォンはマネージャークラスであれば購入可能であろう。作業員にとってはほぼ月給と同じ価格であり、エンジニアやスタッフにとっても月給の3分の1程度である。日雇労働者にとっては「高嶺の花」である。

▼インドの平均賃金(月給)
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(JETROや当局の公開情報を元に筆者作成)

そして地場メーカーの10,000ルピーのスマートフォンとはいえ、デザインやスペックでは決して見劣りをしない。また広告宣伝も多く見かけるので、ブランドも確立されているためインドにおいて人気が高くなってきている。その市場にグローバルメーカーであるサムスンやソニーも10,000ルピー以下の端末を投入しており、競争はますます激しくなってきている。サムスンやソニーも利幅の高いハイエンド端末ではなく、利幅は低いが「数が稼げる」(ボリュームゾーン)ローエンドな端末で勝負をしかけようとしている。

以下がMobile Indiaが公開した2013年9月のインド市場でのスマートフォンの人気商品である。名を連ねているのはほとんどがインドの地場メーカーである。またインドでは中国のメーカーの端末も人気がある。それらはHuaweiやZTEといったメジャーな中国メーカーではない。

▼インドでの10,000ルピー以下のAndroid スマートフォントップ5
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(Mobile Indiaを元に筆者作成)

▼インドでの20,000ルピー以下のAndroid スマートフォントップ5
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(Mobile Indiaを元に筆者作成)

パナソニックがインドのスマートフォン市場で8%を到達するために戦わなくてはならないのは、グローバルメーカーだけではない。台頭している地場メーカーとも競争する必要がある。しかしインド市場はまだまだこれからスマートフォンが成長する余地がある。調査会社IDCによると2013年から2017年までのインドでの出荷台数の伸び率は459.7%を予測している。現在はサムスンがインド市場においては強いが、そのサムスンも台頭してきている地場メーカーの追い上げに戦々恐々としている。インドのスマートフォン市場はこれからであり、どこが制するのか、まだわからない。つまりパナソニックにもまだチャンスが十分にある。日本の個人向けスマートフォン市場から撤退が報じられたばかりのパナソニックだが、インド市場での戦いは始まったばかりである。

▼スマートフォンの出荷台数と国別市場シェア
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(IDC発表資料を元に作成)

(参考:インド市場で台頭してきているメーカー)
・Micromax(http://www.micromaxinfo.com/
・Karbonn(http://www.karbonnmobiles.com/
・Xolo(http://www.xolo.in/
・iBerry (http://iberry.asia/)

【参照情報】
Panasonic re-enters India smartphone market with P51(ZDNet)
Panasonic P11 and Panasonic T11 dual-SIM Android smartphones available online(NDTV Gadgets)
Panasonic India「P51」

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。