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アフリカ編2013(4)アフリカで成長が期待されるメッセンジャーアプリ

2013.10.09

Updated by Hitoshi Sato on October 9, 2013, 19:30 pm JST

日本では「LINE」が有名なメッセンジャーアプリである。「LINE」は日本を中心に東南アジアなどで人気があり、2013年7月23日、世界で2億ユーザーを突破したと発表した *1。一方、世界では「WhatsApp」が有名である。「WhatsApp」は月間アクティブユーザが全世界で3億に達し、毎日110億のメッセージが送信、200億のメッセージが受信されていると報じられた世界最大級のメッセンジャーアプリである *2。世界中で若者を中心にメッセンジャーアプリの利用も人気が出てきた。その勢いはアフリカにもやってきている。その背景を見ていこう。

(1)電話番号の氾濫による混乱の回避

第2回のレポートで報告したように、アフリカ市場ではプリペイドSIMカードが乱売されている。プリペイドのSIMカードを頻繁に買い替えている人が多いということは、その都度電話番号が変わっているのである。電話番号が変わると相手にSMSを送付しても、相手はその番号をもう利用していないということになる。1人で複数枚SIMを利用している場合、そのSIMの電話番号にメッセージを送付しても携帯電話に挿入してない、ということも多くある。プリペイドSIMカードの料金プランは携帯電話会社によって異なるが30日単位が多いので、30日毎にSIMカードを買い替えることが多い(買い替え時にお得なキャンペーンをやっていないとチャージする)。

新しいSIMカードにした時に仲が良い友人にはすぐに通知するだろうが、頻繁にSIMカードを買い替えていくうちに、通知するのも面倒になってくることがある。もはや電話番号に基づいたメッセージのやり取りが面倒になってしまう。

メッセンジャーアプリであれば、SIMカードが変わって電話番号が変わったとしても、相手に新しい電話番号を通知して自分であることを認識してもらう必要はないから利便性が高い。このようにして電話番号だけでのSMSのやり取りは遠くなってしまう。さらに新興国では海外の出稼ぎに行っている友人、家族とのコミュニケーション手段としてSMSを利用する際は国際SMS料金が発生する。出稼ぎ先の国でも同じメッセンジャーアプリをインストールしていれば無料で通信ができるメッセンジャーアプリの方が人気が出てくる。

携帯電話会社がキャンペーンをやればやるほど(SIMが売れれば売れるほど)、電話番号は「おまけ」になってしまい、SMSの利用は遠くなっていくのではないだろうか。最近ではデータ通信に特化したプランのSIMカードやプランも多く見かけることから、メッセンジャーアプリにとっては追い風である。

*1 LINE(2013) 『「LINE」、世界2億ユーザーを突破』(2013年7月23日)

*2 Mobile World Live(2013), Aug 7,2013, "WhatsApp adds voice, passes 300M users"

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(2) Wi-Fiスポットの増加

データ通信もプリぺイドで行うことが多い新興国だが、最近ではファーストフードやレストランなどで無料または低価格でWi-Fiの利用ができる店舗が多くなってきた。そこではWi-Fiも利用できるため、若者を中心に涼しい店内で長時間に渡ってスマートフォンやラップトップを触っている。

有料の個所もあるが決して高くはない。店員に利用したい旨を伝えると「パスワード」の書いた紙をくれるので、それでWi-Fiにアクセスしている。また、ビジネスマンや大学生などはWi-Fiルータを持っていて、それで通信を行っていることも多い。このようなWi-Fiスポットでメッセンジャーアプリを利用して、かわいいスタンプや写真を送ったりしている(もちろん、メッセンジャーアプリ以外にもFacebookなどのSNSや動画を楽しんでいる人も多い)。

プリペイドで残りの料金が気になるSMSやデータ通信プランよりも、無料または低価格なWi-Fiスポットを利用することによって、通信費を安く抑えることできる。アフリカではデータ通信プランに加入していても、日本のように全国津々浦々で3Gネットワークが完備されているということはないため、通信速度が遅いこともしばしある。

このようにメッセンジャーアプリが普及するであろう要素がアフリカ市場にはある。これからどのメッセンジャーアプリがアフリカで主流になるのか、注目される。

(3)人気高いメッセンジャーアプリ「WhatsApp」

アフリカ主要国で人気が高いメッセンジャーアプリは「WhatsApp」である。「WhatsApp」はアフリカだけでなく全世界で人気が高い。アフリカ主要国でのメッセンジャー系、ソーシャルメディア系アプリケーションのダウンロードランキングでもほとんどの国において「WhatsApp」がトップである(表1)。日本で一番使われている「LINE」はアフリカではまだ浸透していない。

2013年8月にはガーナのVodafoneガーナが、地元ガーナのNokiaと提携して、Nokia Asha 210,、Nokia Asha 302、Nokia 206での「WhatsApp」へのアクセスを30日間無料で提供するサービスを始めた *3。

2013年2月にNHN JapanはNokiaと戦略的業務提携を結び、Nokiaの低価格機種「Asha」向けに「LINE」を提供することを発表した *4。しかし、ガーナではNokiaは「LINE」ではなく「WhatsApp」を採用したことになる。

(表1)アフリカ主要国におけるソーシャルメディア系アプリのダウンロードランキング
「WhatsApp」の人気が高く「LINE」はランキング圏外である。
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(出典)AppAnnie 2013年9月の情報を元に筆者作成

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アフリカにおけるインターネットの普及とソーシャルメディア

それではアフリカにおけるインターネットの普及は携帯電話と比較するとどの程度だろうか。2012年6月時点でアフリカ56の国、地域でのインターネットを利用する人は約1億6,700万と、人口に対する普及率でみるとまだ約15.6%であることから、これからも成長の余地は非常に大きいことが伺える。まだインターネット利用が人口普及率の10%にも満たない国家、地域が31と半数以上である。それでも2000年にはアフリカでのインターネット利用者数は約450万であったことから、その成長の著しさは明らかである。

図3 国別のインターネット利用の人口普及率
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(表2)アフリカにおけるインターネット利用者(2000年、2012年)と人口普及率およびFacebook利用者数
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(出典:Internet World Statを元に筆者作成)

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(1)増加するFacebookの利用者と通信事業者Orangeの取組み

Facebookのようなソーシャルメディアもアフリカにおいて浸透してきている。アフリカにおいて約5,160万人がFacebookを利用している。

2012年2月16日、フランス最大の通信事業者Orangeがアフリカで展開する同社グループ会社にて、どのような携帯電話からでもFacebookにアクセスできるサービスの提供を発表した *5。OrangeはアフリカでのFaebookの成長のポテンシャルの大きさに期待しており、今回もUSSD(Unstructured Supplementary Service Data)経由で、どのような携帯電話でもどのようなネットワーク環境下でもあらゆる人々が利用できるような仕組みになっている。

USSD経由のため、古い携帯電話でもネット接続環境がなくても、テキストベースの書き込み、および閲覧が可能である。日本では馴染みがないUSSDだが、アフリカなど新興国で出回っているほとんどの携帯電話では対応しており、携帯電話端末間でテキスト、メッセージの送受信が可能である。SMSと似ているが、USSDはセッションが行われている間のみトランザクションが発生する仕様である。Facebook専用のアプリケーションは不要で、ユーザはUSSD経由でPINコードを入力してFacebookにアクセスし友達検索・リクエスト・承認、近況アップデート、友達へのコメント、「いいね」ボタンなどFacebookの操作が可能である。料金は分・日・週・月単位から選択できて各国によって異なる。また、Orangeは2011年11月に「Alcatel One Touch」シリーズで、100ドル以下の廉価版Facebook端末を欧州、アフリカ市場に向けてリリースしている *6。Orangeグループ向け専用にフランスのメーカーAlcatel社が開発した端末である。「ALCATEL ONE TOUCH 908F」というAndroid搭載の廉価版スマートフォンもある。

(図4)ALCATEL ONE TOUCH 908F
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(出典:ALCATEL)

*5 Orange(2012) Feb 16,2012 "Orange launches new service to make Facebook® accessible on every phone in Africa"
http://www.orange.com/en/press/press-releases/press-releases-2012/Orange-launches-new-service-to-make-Facebook-R-accessible-on-every-phone-in-Africa

*6 ALCATEL onetouch(2011) Nov 25,2011 "Orange launches widest range of ALCATEL ONE TOUCH phones with dedicated Facebook® functionality in Africa and Europe"

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(2)通信事業者Tunisie TelecomのSMSによるFacebookアップデート

チュニジアの通信事業者Tunisie Telecomは2012年11月にショートメッセージ(SMS)を利用してFacebookが利用できるサービスを開始した。利用者はSMSで情報発信を行うことができる。また情報がアップデートされたり、友人からのメッセージが来た場合はSMSで通知がある。それに対してSMSで返信をすることが可能である。非常にシンプルな仕組みである。

通信事業者にとってSMSは重要な収入源である。SMSによるFacebook利用のサービスの導入によって、通信事業者Tunisie Telecom はSMS収入を確保したいという思惑がある。Tunisie TelecomのSMS料金(プリペイド)は、40通で1DT(30日間有効)、200通で3DT(30日間有効)、1,000通で10DT(30日間有効)である。なお本サービスでのSMS受信は無料である。1DTが約60円であるから、1通につき約1円くらいである。Facebookには登録したが、パソコンやインターネットに頻繁にアクセスできる環境でもなく、Wi-Fiスポットや3G網が行き届いていない地域に住む人々にとっては今でもSMSによる情報発信と受信は有益である。さらに通信事業者にとってもFacebookでの情報発信をトリガーにして、SMSの発信を喚起することにもつながる。

(3)Twitterも成長するアフリカ

2011年第4四半期(10〜12月)にアフリカでのTwitterの利用者調査がPortlandから2012年2月1日に公表された *7。それによると、同期間で南アフリカが1位で5,030,226のツイートがあった。2位がケニアで2,476,800、3位がナイジェリアで1,646,212、4位がエジプトで1,214,062、5位がモロッコで745,620のツイートがあった。そしてアフリカからのツイートのうち57%が携帯電話などのモバイル端末からのアクセスで、60%が20代(20歳から29歳)だった。使い勝手としては、81%が友人とのコミュニケーションツールとしてTwitterを活用している。他に68%がニュースのチェック、22%が仕事探しにTwitterを活用している。

(図5)アフリカでのTwitter利用(2012年2月)
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(出典:Portland)

メッセンジャーアプリやソーシャルメディアの分野においてはアフリカではまだこれから開拓の余地がある。果たしてどの企業がアフリカで覇権を握るのか、注目される。

*7 Portland(2012) Feb 1,2012 "New Research reveals how Africa Tweets"

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。