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ボーダフォン買収に向け根回しを進めるAT&T - 来年にも交渉開始の可能性

2013.11.01

Updated by WirelessWire News編集部 on November 1, 2013, 12:59 pm JST

米携帯通信市場第2位のAT&Tが、欧州の携帯通信事業者の買収を検討していることは既報の通りだが、同社の幹部らがボーダフォングループ(Vodafone Group;以下、ボーダフォン)の買収に向けた準備作業を進めているとする匿名の関係者の話がBloombergで報じられている。

Bloombergによれば、AT&Tはボーダフォンとの買収交渉こそ開始していないものの、ボーダフォン買収後に保有し続ける資産の洗い出しや、処分する資産の引受先候補などについて検討を進めているという。またAT&Tでは、米国に比べて無線ブロードバンドの普及が進んでいない欧州市場におけるボーダフォンの事業戦略策定も進めているという。

AT&Tによるボーダフォン買収に関しては、今年4月にベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications;以下、ベライゾン)と共同でボーダフォンを買収する可能性も報じられていた。その際は、ベライゾンがボーダフォンから、同社の保有するベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless)の株式45%を取得して完全子会社化するいっぽう、AT&Tが米国以外の地域で展開されているボーダフォンの事業や資産を取得するという案も出されていた。ただし、今年9月には、ベライゾンがボーダフォンの保有するベライゾン・ワイアレス株式を1300億ドルで購入することで両社が合意に達していた。

Bloombergによれば、AT&Tはボーダフォンが各国に保有する傘下の携帯通信事業者のうち、とくに欧州の事業者獲得に高い関心を示しているいっぽう、アフリカやインドの傘下事業者への関心はそれほど高くなく、これらの携帯通信事業者をアメリカ・モビル(America Movil)やチャイナ・モバイル(China Mobile)などの他社に売却する可能性も検討されているという。また、アフリカの事業者については、フランステレコム(France Telecom)傘下のオレンジ(Orange SA)も買収に興味を示しているという。

AT&Tのボーダフォン買収が実現すれば、時価総額が2500億ドルを超え、加入者が5億人を超える世界最大規模の携帯通信事業者が誕生する可能性がある。ただし、買収にはベライゾンとボーダフォンの取引が完了する2014年前半まで待つ必要がある。

なお、Bloombergは、AT&Tがボーダフォンの代わりに、英国で事業を展開するEEの買収を検討しているとする話も紹介している。この場合、AT&Tは、ドイツテレコム(Deutsche Telekom AG)とオレンジのJVであるEEの買収を欧州展開の足がかりにする狙いだという。

いっぽう、この話題を採り上げたWSJでは、米国家安全保障局(National Security Agency:以下、NSA)によるスキャンダルがAT&Tによる欧州の携帯通信事業者買収の妨げになるだろうとする記事を出している。NSAが広汎な情報収集、分析活動を行っていたこの問題は今年6月に判明し、最近ではドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相の携帯電話を盗聴していたとする報道も出ていた。このなかで、AT&TもNSAに情報を提供していた携帯通信事業者に含まれていた。

【参照情報】
AT&T Said to Explore Vodafone Takeover as Soon as Next Year - Bloomberg
AT&T said to be mulling Vodafone takeover - CNET
http://news.cnet.com/8301-1035_3-57610282-94/at-t-said-to-be-mulling-vodafone-takeover/
NSA Fallout Hits AT&T's Ambitions In Europe - WSJ

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