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「もじテレ」が描く、テレビが情報のハブになる世界

2013.12.06

Updated by Asako Itagaki on December 6, 2013, 18:00 pm UTC

10月30日、NTTドコモ(以下ドコモ)は、放送中のテレビ番組の内容書き起こし(以下TV放送ログ)をスマートフォンやタブレットでリアルタイムに提供するセカンドスクリーンサービス「もじテレ(テレビ実況)」(以下もじテレ)を開始した。テレビ局各社がセカンドスクリーンサービスの開発にしのぎを削る中、なぜドコモが参入したのか、その狙いを聞いた。

「テレビ放送ログ情報」を消費者向けにリアルタイム提供

「もじテレ」で提供するTV放送ログは、放送中の番組名、コーナー名、コンテンツの内容、出演タレントなどの情報で、放送から5分程度(*1)タイムラグで更新される。気になった情報は「クリップ機能」で2週間保存してあとで見返すことができる。途中からドラマを見始める時にそこまでのあらすじを見たり、クリップ機能で店の名前やレシピなどをメモ代わりに保存して後で見直したりなど、番組情報を利用してさまざまな楽しみ方ができる。

▼もじテレの機能(図版提供:NTTドコモ) ※画像をクリックして拡大
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iOS端末、Android OS端末で利用でき、利用料金は無料。サービス開始当初は関東と関西のそれぞれ6局が対象となる。サービス地域は今後も拡大する。dメニューで提供するが、ドコモ以外のキャリアの端末からも利用できる。

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NTTドコモ コンテンツビジネス推進部 ポータルサービス 第一ポータル推進担当 前田健太氏

もじテレの肝になるTV放送ログを提供するのは、株式会社ワイヤーアクション。同社が従来は企業向けに提供していた情報を、今回はじめてリアルタイムに一般視聴者向けに提供する。これまでにもdメニュー内では「テレビ」のカテゴリーでテレビ番組表やバラエティやドラマなどの旬な人へのインタビューなどのコンテンツを提供していた。比較的読み物的な要素が強く、更新も週1回程度で、リアルタイム性に欠けるという課題に対して、「テレビ」カテゴリーのコンテンツを運営していたD2Cからの開発提案があり、サービス開始につながった。

「もともとTV放送ログは、自社が提供する番組内で自社商品がどのように取り上げられているかを調べたい企業などが利用していましたが、一般視聴者から見てもおもしろく役立つ情報だろうということで今回の企画をご提案いただきました」(NTTドコモ コンテンツビジネス推進部 ポータルサービス 第一ポータル推進担当 前田健太氏)

よりテレビを楽しむためのサービス

TV情報ログは、放送されているテレビ番組をリアルタイムに人が視聴し、内容をデータ化したものが即時に提供される。そのため、テロップが多い旅番組や料理番組の情報は充実している。後から情報を見返す、検索するといった、情報探索ニーズにもマッチしている。dメニューのユーザーも女性や主婦の利用が多く、こうした層が、「テレビを見ていてメモを代わりに使う」という利用シーンをまず想定した。

番組内に登場する人物名や固有名詞は「タグ」としてリンクがつけられるので、タップするだけで検索結果をスマートフォンで参照できるのも、テレビとの同時視聴を意識している。

利用者のニーズが大きそうなのはスポーツイベントだが、もともとは企業向けの番組内容サマリーサービスから始まったこともあり、「現在は試合のスコアぐらいしか提供できていないので、今後充実させていく」とのことだ。2014年にはソチオリンピック、FIFAワールドカップと大きなスポーツイベントが続くので、その前には競技ごとにどのような情報をリアルタイムに伝えることが視聴者に求められているのかをすり合わせて速報性を上げていく。

テレビは「情報のハブ」になる

なぜ、ドコモがdメニューの中で「テレビ」の情報を提供するのか。その理由は2つある。

一つ目は、これからスマートフォンを使い始める人たちにとってテレビは慣れ親しんだものであることだ。「iPhoneがドコモから発売され、これまでフィーチャーフォンを使っていた層もスマートフォンに移行する時期。これからスマートフォンを使う人には、ポータルからディレクトリをたどって、テレビのコンテンツを楽しむことで、スマートフォンはより便利で楽しいと思っていただけます」(前田氏)

もう一つの理由が、ドコモは、テレビを「情報に接するハブ」と位置付けていることだ。もじテレは、テレビとドコモが提供するサービスを直接つなぐゲートウェイとなる。「歌番組からは着うたサービス、旅番組からはdトラベルなど、ドコモが提供するさまざまなサービスへのハブとしてテレビ番組は機能します。将来的には、テレビ局といい関係を築きつつ、総合サービス企業であるドコモが提供するさまざまなサービスのハブとなるように育てたい。そのために、まずはこのサービスのスケールを大きくするために利用者を増やしたいと考えています」(前田氏)

このサービスについてテレビ局側からのアクションは今のところまだないという。しかし、サービスの利用者が増えてくれば、テレビ局側から「番組内のこの情報をリアルタイムに紹介してほしい」といったオファーを受けるようなことも可能になるかもしれない。

ただし、今のところ、もじテレを広告媒体として収益化することは考えていないとのことだ。「iモード時代には情報を有料で提供して収益化できましたが、スマートフォンの世界になってPCと同様に"情報は無料"が当たり前になりました。お金を落とすかどうかは情報を手に入れた後の判断になりますが、ユーザーのリテラシーは高いですから、その情報に広告色が強いと財布のひもは緩めてくれないかもしれない。提供する情報は誰が発信したものか、そこはきっちり線引きが必要だと思っています」(前田氏)

新しい「放送と通信の融合」の形が生まれる契機となるか

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株式会社D2C ターゲットメディア部 部長 鈴木登志夫氏

もじテレの説明を受けて最初に感じた疑問が、ソーシャル連携機能がないことだった。この点について質問すると、「Twitter、Facebookへのソーシャル連携機能や、Evernoteとの連携機能はあえてつけていない」という意外な答えが返ってきた。

「現在は、テレビ局の番組情報を活用したWEBコンテンツはテレビ局のものだという考え方が主流です。業界の慣習として視聴者がリアルタイムの視聴をより楽しむことに役立つサービスならいいけれど、番組情報というコンテンツを第三者が外部サービスで共有することについては、コンセンサスがまだ十分ではないと判断しています」(株式会社D2C ターゲットメディア部 部長 鈴木登志夫氏)

テレビ番組の情報をネットで共有することについては、番組にかかわる権利関係の処理などがまだ追いついていないという側面もある。テレビ局側でもスマートフォンとのさまざまな連動の形を模索している状況の中、セカンドスクリーンサービスとしてもじテレのようなサービスまずが形になることで、テレビ局の意識を変え、契約や商習慣が整理され、新たな「放送と通信の融合」の形が生まれる契機となる可能性を秘めている。

「日本で一番テレビが見られるのは年末とお正月。今年の年末年始は、もじテレでもっとテレビを楽しんでほしい」と語る前田氏。まずは1日20万UU(ユニークユーザー)、月間100万UUを目指すという。圧倒的なコンテンツ力を持つテレビ局と正面からぶつかるのではなく、現状に寄り添いながら情報のハブとして連携していくアプローチが、どのような実を結ぶのか、今後の展開に期待したい。

【関連情報】
もじテレ

*1 番組によっては更新に5分以上かかるものがある。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。