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NTT、大規模災害時に通信の即時回復を可能にする「ICTカー」を開発

2014.01.28

Updated by Asako Itagaki on January 28, 2014, 20:20 pm UTC

NTTは、東日本大震災の教訓をふまえ、東北大学、富士通、NTTコミュニケーションズと共同で推進する研究開発プロジェクトの一環として、大規模災害時に通信の即時回復を可能とするICTカーを開発した。

201401282020-1.jpgICTカーは通話や情報処理などのICT環境の提供に必要な装置類をコンパクトに収容したバンタイプの自動車。東日本大震災の被災地の聞き取り調査などにより、情報通信インフラが破壊されるような大規模災害時には「通話環境の回復」「避難所等での被災者情報収集とデータベース化」が早急に必要であることが明らかになったことを受け、「被災地に最短時間でICTネットワークを立ち上げる」ための移動式ユニットとして開発した。「端末だけが利用できる状況の被災地で、ICTをできる限りすばやくつなげるしくみ」と、NTTみらいネット研究所の高原 厚所長はそのコンセプトを説明した。

▼2012年にNTT研究所では大型・中型ICTユニットを開発して基本機能の確認と実証実験を実施。今回発表したICTカーは、リソースの容量を小さくする代わりに移動性・拡張性・柔軟性を向上させた。
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▼ICTカーの概要。
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ICTカーには可搬型のIP-PBXユニット、サーバー、無線アクセスポイント、電源、アンテナ等が搭載されている。ICTカーを被災地に搬送・設置することで、半径500m以内のエリアを短時間にWi-Fiエリア化する。被災者は自分のスマートフォンでICTカーのWi-Fiネットワークに接続して専用アプリをダウンロードすることで、普段使用している電話番号を使用してWi-Fiネットワーク内に接続された他のスマートフォンと通話が可能になる。1台のIP-PBXユニットに対して5000台程度のスマートフォンが登録できる。

▼通話機能のイメージ。ICTカーのネットワークを使用して、内線電話網を構築するようなイメージとなる。
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▼利用者はICTカーの無線アクセスポイントに接続し、専用のSIPクライアントをダウンロードする。
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IP-PBXユニットを衛星回線や光回線に接続することで、IP-PBXを経由して被災地外とも通話が可能になる。外部からの着信時には、IP-PBXの代表電話番号を経由して「内線番号」として個別のスマートフォンの番号を呼び出す形で、着信が可能となる。

被災者データ収集システムは、NFC対応タブレットを使用して交通系ICカードやおサイフケータイなど被災者が持つIDと、その場で撮影する顔写真、被災者の氏名などが記載された免許証等の写真を日もひもづけ、被災者情報をデータ化する。固有IDに対し被災者情報がひもづけられるので、支援物資の支給や移動の記録、安否情報の作成などが迅速に行える。

▼被災者データ収集システムの利用イメージ。
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さらにICTカーよりも小さいソリューションとして、必要モジュールだけをアタッシュケースに入れた「アタッシュケース型ICT-BOX」も開発。構成機能を限定して被災地に人が移動するだけで最低限の連絡手段を即時に提供する。

▼サーバー・無線アクセスポイント・バッテリーの最小ユニット。サーバーにインストールする機能によってさまざまなサービスを提供できる。
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ICTユニットによる通話機能や被災者データ収集システムについては、2013年に会津大学等の協力による実証実験を行っており、実験参加者に対するアンケートでは、通話機能については災害時の連絡手段として役に立つとしいう回答が95%、被災者データ収集システムについては災害時に役に立つとの回答が83%と高い評価を得ている。

今後は、東南海地震の影響を受けることが予想されており、災害対策に積極的に取り組む高知県南国市、高知県黒潮町と協力して実証実験を実施予定。また、2013年11月に超大型台風の被害を受けたフィリピンにおいて被災地域のICT環境復旧を支援すべく、総務省など関係機関との検討を始めている。

【報道発表資料】
大規模災害時、通信の即時回復を可能とする「ICTカー」の開発について

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。