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北朝鮮の携帯電話事情(1) - プリペイドSIMを購入する

2014.02.07

Updated by Kazuteru Tamura on February 7, 2014, 18:00 pm UTC

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)では2014年1月現在、CHEO Technology JV Company(以下、CHEO Technology)の1社がサービス名をkoryolinkとして移動体通信事業を手掛けている。エジプトのOrascom Media and Technology Holding S.A.E.(以下、OTMT)と北朝鮮国営のKorea Posts and Telecommunications Corporation(以下、KPTC)との合弁企業で、2.1GHz帯(バンドI)のW-CDMA方式でサービスを提供している。ロゴマークは伝説上で翼を持ち1日に千里を走るとされる千里馬をモチーフとしている。

▼koryolinkのロゴマークのモチーフとなった千里馬の銅像
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近年、北朝鮮では様々な品目において外国人による持ち込み規制を緩和している。携帯電話もその一つで、これまでは入国の際に携帯電話を出国まで税関預けもしくは袋に入れて開封厳禁としていたが、2013年1月7日より携帯電話の持ち込みを解禁し、同時に外国人向けのプリペイド式SIMカードの販売を開始した。

外国人が北朝鮮に到着後すぐにSIMカードを購入できるよう、北朝鮮唯一の国際空港である平壌順安国際空港にkoryolinkのブースを設けて販売している。税関を抜けてすぐの場所に設置しており、初めて訪れる外国人でもすぐに分かる位置となっている。このkoryolinkブースは外国人向けであるため、北朝鮮を訪れる外国人が少ない閑散期は営業を休止している。そのため、閑散期は平壌市内のkoryolink取扱店で購入する必要がある。北朝鮮への入国方法としては空路以外に国際列車や国際高速バスもあり、空路以外で入国した場合も基本的に平壌市内のkoryolink取扱店で購入することになる。日曜日は一部のkoryolink取扱店は営業を休止しており、購入できる取扱店が少なくなるので注意が必要である。

携帯電話の持ち込み規制について方針を変更した背景としては、外国人から外貨を獲得しようとする狙いがある。北朝鮮はリゾート施設の開設など、国を挙げて観光客の誘致に取り組んでいる。スマートフォンを含んだ携帯電話のカメラの高画質化やSNSの普及により、携帯電話で写真を撮影する需要が高まっており、それは外国人の誘致を推進する北朝鮮当局も無視はできなかった。外国人向けの料金は高く設定されているが、koryolinkは国際ローミングを受け入れておらず、北朝鮮国内で携帯電話を使うとすればkoryolinkを選ぶしかないのである。このように、外国人の需要に応えて誘致を強化し、また高い料金ながら携帯電話を使えるようにすることで、一気に外貨を稼ごうとしているのである。

▼平壌順安国際空港内のkoryolinkブース
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SIMカードのサイズは2013年12月末時点でMini SIMサイズ(2FF)のみが用意されている。そのため、Mini SIMサイズ(2FF)より小さなMicro SIMサイズ(3FF)やNano SIMサイズ(4FF)の携帯電話を使う場合は、SIMカッターを用いてSIMカードのプラスチック部を切断することになる。SIMカッターはkoryolinkの取扱店が予め用意しているため、利用者が用意する必要はない。

外国人向けプランとインターネット接続オプションの料金は下記の通りである。

▼外国人向けプラン料金表
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※1 後から追加されたプランであるため、プラン名が与えられていない。

▼インターネット接続オプション料金表
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※Mobile Internetは携帯電話向け、その他の3つはkoryolinkが提供するUSB型データ通信専用端末向けである。IMEIホワイトリスト制を採用するため、SIMカードを入れ替えて携帯電話でデータ通信専用端末向けのプランを使用することや、データ通信専用端末で携帯電話向けのプラン向けのプランを使用することはできない。

外国人向けのプランは国際電話専用で、北朝鮮国民の回線に電話することはできない。また、インターネット接続オプションは2013年3月1日に外国人向けに提供を開始したが、システム上の問題により1ヶ月足らずで提供を終了している。そのため、2013年12月末時点では一般の外国人がインターネット接続オプションを契約することはできない。ただ、滞在期間等の特定の条件が必要となるが、一部の外国人に対しては提供を継続している。

外国人による料金の支払いは現金のみを受け付けており、クレジットカードは使えない。また、北朝鮮国民以外は現地通貨の北朝鮮ウォンを使えず、外貨で支払うことになる。料金表はユーロで記載されており、ユーロでの支払いが望ましいとしているが、人民元や米ドルを使うこともできる。人民元や米ドルの場合ではkoryolink側が提示した換算額での支払いとなる。北朝鮮国内においてはホテルなどで両替に応じてくれる場合もあるが、事前に両替しておくことが望ましい。

北朝鮮はIMEIホワイトリスト制を採用しており、koryolinkのネットワークへ接続するためにはIMEIの登録が必須である。IMEIを登録する際には一時的に携帯電話を預けておく必要がある。預ける時間は取扱店の規模や混雑度によるが、5~30分程度と見積もっておけば問題ない。全ての処理を終えて開通が完了するとkoryolinkからのメッセージが届く。尚、IMEIを登録していない携帯電話にkoryolinkのSIMカードを挿入すると圏外となりサービスを使えなくなるので注意が必要である。また、koryolinkのネットワークに接続する携帯電話はSIMロックフリーで2.1GHz帯(バンドI)のW-CDMA方式に対応している必要があるのでこちらも注意しておきたい。

SIMカードを購入後に不明な点があれば、コールセンターに問い合わせることが可能となっている。基本的に朝鮮語での案内となるが、エリアなどのサービスに関する窓口と携帯電話の端末に関する窓口を用意している。

現状、北朝鮮国内からのリアルタイムな連絡手段としては国際電話のみとなるため、北朝鮮へ渡航した際には是非とも連絡用としてSIMカードを入手しておきたいところである。

▼koryolinkのSIMカードと台紙
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。