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ノキアはAndroidスマートフォンを開発するのだろうか?

2014.02.03

Updated by Hitoshi Sato on February 3, 2014, 00:33 am JST

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The Vergeより)

携帯電話老舗メーカーのフィンランドのノキアがAndroid OSを搭載したローエンド・スマートフォンの開発を進めているとする話をThe Vergeなど複数のアメリカのメディアが2013年末に報じていた。開発コード名は「Normandy」と呼ばれているようだ。
ノキアは2013年9月に携帯電話部門をマイクロソフトに売却することを発表しており、またマイクロソフトはいうまでもなく「Windows Phone OS」の供給元であることからAndroid OSを搭載したスマートフォンのリリースは考えにくい。今回の報道は正式なリリースではなく、あくまでもメディアでの情報である(2013年1月31日時点で正式なリリースなし)。しかし「火の無いところに煙は立たぬ」である。ノキアはAndroid OSを搭載したスマートフォンをリリースするのだろうか。また、マイクロソフトはどのように考えているのだろうか。

ノキアがAndroid OSのスマートフォン?

ノキアが開発しているのではないかという憶測で報じられているAndroid OSを搭載したスマートフォンの開発コード名「Normandy」は、同社のエントリーレベル端末「Asha」に代わるものとされている。同端末には、ノキアが独自にカスタマイズしたAndroid OSが搭載される予定で、アマゾンの「Kindle Fire」OSと同様、従来のAndroid OSとは見た目や提供されるサービスなどの点で大きく異なったものとなると報じられている(The Verge)。同スマートフォンはAndroidアプリをサポートし、ノキアは2014年に発売する計画だと報じている。

この端末は2013年11月下旬に画像がリークされTwitterなどソーシャルメディアで多く配信されていたため、ノキアがAndroid OSのスマートフォンを開発しているという話に信憑性を持たせることになった。また2013年9月、ノキアがマイクロソフトによる買収に合意する前にも「Lumia」端末上でAndroidをテストしていたという報道もあった。ノキアは2011年にマイクロソフトと提携を行い、以降Windows Phone OSのスマートフォンを世に出してきた。そして同社は2013年9月に携帯電話部門をマイクロソフトに72億ドルで売却することを発表していた。買収は、2014年第1四半期に完了する予定である。今までAndroid OSのスマートフォンを出したことがないノキアだが、ここまで多くの報道を目にするとノキアが本当にAndroid OSのスマートフォンを出すのではないかと思われてくる。

それでもまだ世界の携帯電話販売世界2位のノキア

米調査会社ガートナーは2013年2月に2012年の世界の携帯電話(スマートフォンを含む)販売台数を発表した。メーカー別の1位は韓国のサムスンで、年間販売台数は3億8,463万1,200台となった。世界市場シェアは22.0%だった。スマートフォンの売り上げが好調だったサムスンの市場シェアが2011年の17.7%から22.0%に大きく伸びた一方、1位のノキアは2011年の23.8%から19.1%へとシェアを落とした。

ノキアの後退はスマートフォンへの対応が遅れた上、従来型携帯の減少を補えなかったことが要因と指摘されている。ノキアの2012年の販売台数は3億3,393万8,000台である。スマートフォン対応に乗り遅れ、マイクロソフトに身売りすることが決まっているとはいえ、ノキアは今でも世界で2位の販売台数を誇る携帯電話メーカーなのである。そして凋落の要因の1つとされているスマートフォンの乗り遅れだが、スマートフォンOSでの市場シェアは圧倒的とされるAndroid OSを搭載したスマートフォンを開発してこなかった。

ノキアはもともと自社でSymbian OSを開発してスマートフォン、携帯電話を提供してきたが、その後登場するiPhone(iOS)やAndroidの勢いには敵わず、2011年にはマイクロソフトと提携を行い、Windows Phone OSでのスマートフォン開発の道を選んだが、それらのスマートフォンはノキアの業績回復に貢献しているとは言い難い。2013年第3四半期の世界のOS別出荷台数でもWindows Phoneは950万台で、昨年同期比では156%の伸びを見せているものの、シェアは3.6%程度である。Androidが81%でiOSが12.9%でこの2つのOSが独占している状態である。

前述のようにノキアが世界2位を維持している理由は新興国市場におけるフィーチャーフォンの販売台数が圧倒的だからである。しかし、フィーチャーフォンは1台あたりの単価も安い分、利益率もスマートフォンと比べると決して高いとはいえない。つまりメーカーからすると利益率の高いスマートフォンを販売したいところである。一方で、Android OSは無償で提供されているものの、Windows Phone OSはOS供給元のマイクロソフトに対してライセンス料の支払いが必要である。すなわちメーカーはWindows Phone OSのスマートフォンの1台販売につき、いくらかをマイクロソフトにライセンス料として支払う必要がある。また、現在ではAndroid OSを搭載したスマートフォンは新興国の地場メーカーからも多く安価で提供されてきている。それらはデザイン、性能ともにグローバルメーカーのものと遜色がない。ノキアだけでなく他のグローバルメーカーはこれらの新興国の地場メーカーが提供するAndroid OSスマートフォンと市場で競争していかなくてはならない。

また、Android OSは無償で提供されていることだけでなく、既に多くのメーカーが開発していることから、端末開発のノウハウが蓄積されている。ノキアのように多くのエンジニアを抱えているメーカーにとってはAndroid OSでスマートフォンを開発するのは決して難しくはない。Windows Phone OSはマイクロソフトが提供していることから、同社からの支援を受けることはできるものの、技術やノウハウはマイクロソフトに依拠しているため、メーカーはいざという時はマイクロソフトに依存しなくてはならない。

▼表1:世界の携帯電話出荷台数(2012年)
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(ガートナー発表資料を元に作成)

▼表2:世界のスマートフォンOS出荷台数(2013年Q3)
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(IDC発表資料を元に作成)

ノキア、マイクロソフト陣営のスマートフォン戦略変更は今がラストチャンスか?

ノキアは2014年1月23日に2013年第4四半期決算を発表した。もはや携帯電話事業はマイクロソフトへの売却が決まっていることから、通信機器部門にばかり注目が集まっており、携帯電話事業についてはDiscontinued Operationとして扱われている。フィーチャーフォンとスマートフォンの2013年の販売台数はどちらも減少し、第4四半期における携帯電話製造部門の売上高は前年同期比で29%減の26億3,000万ユーロだった。またWindows Phone OSを搭載したLumiaシリーズは第3四半期には880万台の販売台数だったが2013年第4四半期には820万台まで減少した。ノキアの携帯電話事業での失速が伺える結果となってしまった。

またマイクロソフトはノキアを買収したが、今後のスマートフォンの方針が見えてこない。マイクロソフトが、ノキア携帯端末部門の買収完了後にNormandyのプロジェクトを継続するかどうかは現時点では明らかではないが、The Vergeによると同プロジェクトに関わるノキア従業員の話として、「Normandy」端末の開発が2014年のリリースに向けて全力で進められている、とのことである。

これからもWindows Phone OSで開発を続けて高価な端末を市場に出していくのか、それともAndroid OSを採用した安価なスマートフォンで従来のノキアの販売網、ブランド力がある新興国のスマートフォン市場で巻き返しを図るのだろうか。マイクロソフトのビジネスモデルはOSのライセンス供与である。つまり自社開発のOSをメーカーに供与することによってライセンス費用を徴収するビジネスモデルである。無償のAndroid OSを搭載した端末を開発することは同社の長年に渡るビジネスモデルすら変更することになってしまうだろう。

一方で、スマートフォン市場におけるマイクロソフト、ノキアの置かれた現状を鑑みるとWindows Phone OSで開発を続けることでAndroid OSやiOSの牙城を崩せるとは考えにくい。ユーザーの立場でも自分のスマートフォンやタブレットが「どうしてもWindows Phone OSでなければいけない」という人がほとんどいないのだろう。そしてデザインや性能でもAndroidの端末に大きな差別化を図ることができていない。現在ではノキアのフィーチャーフォンがよく売れている新興国市場では地場のメーカーが開発したスマートフォンが台頭してきている。マイクロソフトとノキアがスマートフォン戦略の軸を変えていくには、マイクロソフト社全体に資金的余裕がある今がラストチャンスかもしれない。

▼参考動画:Leaked Nokia Normandy With Android OS

【参照情報】
ノキア、Android OS搭載のローエンド・スマートフォンを開発(米媒体)
This is Nokia's Android phone | The Verge
ノキア2013年Q4決算(PDF)

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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