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「魔法」のようなコンピューティング

2014.03.22

Updated by Ryo Shimizu on March 22, 2014, 19:32 pm JST

1970653_10153012659555752_858723322_n.jpg シリコンバレーに来ています。とはいえ、12時間後には成田へ向けたフライトへ飛び立ってしまうのですが。

 Evernote社に外村会長を訪ねると、カンパニーストアが出来ていました。
 カンパニーストアというのは、アメリカの会社にはたまにあるのですが、来客や社員に向けてグッズを販売するお店です。

 シリコンバレーで有名なのはAppleのカンパニーストアですね。
 ひとつの観光名所のようにもなっています。

 Evernoteのカンパニーストアでは、Tシャツやバッグに混じってScanSnapのEvernote版が売られていました。

 このEvernote版ScanSnapは何が違うのかというと、デザイン以外にも、マニュアルの類いを一切廃してしまって、しかも、レシートやメモ用紙など、色々なサイズのものを一度にスキャンさせても、ちゃんとEvernote側で選り分けて自動的に異なるフォルダに分類したりできるのだそうです。まるで魔法を見ているようでした。

 「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」

 アーサー・C・クラークの第三法則を思い出します。
 そしてこの「魔法」という言葉は、シリコンバレーではしばしば聞かれるキーワードとなっています。


 スティーブ・ジョブズは自身のキーノートアドレスでしばしば「魔法のような(Magical)」という形容詞を好んで使いました。

 Appleの製品に「Magic Mouse」と「Magic Trackpad」があるのも特徴的ですね。

 魔法(Magic)の語源は、イエス・キリストの生誕を拝んだという東方の三賢者、マギに由来していると言われています。

 マギ(Magi)は賢者を意味するマグス(Magus)の複数形でしたが、いつしか彼らが用いたとされる人知を超えた奇術を表す言葉になっていき、マギ的なものを英語でMagicと表現するようになった、と言われています。

 磁石を意味する「マグネット」もマギに由来する言葉のひとつですね。

 ちなみにアニメ、エヴァンゲリオンに登場するスーパーコンピュータ「マギ」はまるきりこの東方の三賢者の引用です。ちなみに三賢者の名前は、カスパール、メルキオール、バルタザールで、これもほぼそのままエヴァンゲリオンの中に出てきますね。

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 さて、Evernote社では、日本から来ていた精密な義手Handieの制作チームの方々とお会いしました。

 この精密な義手の凄いところは、従来の義手に比べて飛躍的にコストが安いことです。

 しかも、3Dプリンタから出力したままの状態で組立てなどの動作を一切することなく、バネから歯車までの形状が組み上がって来ます。

 これはとんでもないものが現れた、と思いました。

 筆者も昨年は中国の工場でタブレットデバイスの製造に立ち会ったのですが、機械を使って基板を作るSMT(サーフェス・マウント・テクノロジー)というプロセスでさえも、実は人手がもの凄く必要なことを目の当たりにしました。そしてタブレットといえど、最も重要なアセンブル(組立て)のプロセスは完全に人力です。

 しかし一方で、スイッチひとつでここまで精密なものが組み上がって出て来てしまうと、まさにこれはまるで魔法です。

 しかも、この義手の操作は腕に取り付けた筋電位センサーをBluetoothでiPhoneに飛ばし、iPhoneから義手を駆動します。

 これも非常に不思議で、私も実際に装着させていただきましたが、私が自分の手を握ったり開いたりするのにあわせて義手が動くのはとても不思議な感覚でした。

 さらに、Evernote社の寺崎さんというエンジニアの方が、iPadのイヤホン端子のみを使用してハードウェアを駆動するデモを見せて下さいました。

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 これはイヤホン端子からの信号のみで、サーボモータを制御するという非常に高度なハックで、従来、こうしたスマートデバイスから外部機器を制御するためには、3000円程度するArduino基板と、かなり高度な設定やプログラミングが必要でした。

 ところが、寺崎さんのこの作品は、全てコミコミで3000円を切る価格でプチロボS2として売られています。

 私の訪問にあわせて寺崎さんは筆者らが開発したビジュアル言語のMOONBlockからでも制御できる特別なバージョンを作って下さっていて、とても感激しました。

 サンフランシスコからSkypeで参加することになったイベント、Android Bazaar and Conferenceの基調講演で、「未来とコンピュータ」というテーマでアスキー総研の遠藤諭さん、AR三兄弟の長男である川田さんと鼎談を行いました。

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 その中で、「ウェアラブル」や「NUI(ナチュラル・ユーザ・インターフェース)」そして「AR(拡張現実感)」はこれからどうなる、という話になりました。

 拡張現実感ではOculus RiftやSONYのプロジェクトMorpheus、ウェアラブルではAndroid Wear、Google Glassのように、身につけるコンピュータが大きな話題を呼んでいます。

 この方向性の延長線上にあるものを俯瞰すると、世界は全体としてマジカルな方向を目指しているのではないか、と私は主張しました。

 ウェアラブルにしろヘッドマウントディスプレイにしろ、どれもこれも、魔法のような方向を目指しているのではないかと感じるのです。

 これまで、コンピュータ産業はなんとなくSF映画のような世界を実現しようと動いて来たと思っていたのですが、すでにSF的想像力を現実が凌駕してしまっている現在、これから目指すべきは「ハリー・ポッター」のような世界なのかもしれませんね。
 

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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