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新興国で続々登場!Nokiaの新たなミドルエンドAndroidスマートフォン「Nokia X」

2014.03.17

Updated by Hitoshi Sato on March 17, 2014, 10:55 am JST

2014年3月、Nokiaは同社初のAndroidスマートフォン「Nokia X」をケニアで販売することを発表した。KES 12,499(約10,000円)でスマートフォンとしては低価格である。アフリカでは携帯電話販売のうちスマートフォンが占める割合は18%程度であることから、これからも大きな成長の余地が期待される市場である。

同端末はマレーシアで既に399リンギット(約12,000円)で販売が開始されており、インドでも2014年3月15日から8,500ルピー(約14,000円)で販売する予定である。新興国市場に新たなNokia旋風が巻き起こるかもしれない。

Androidベースの新たなNokiaのミドルエンド端末「Nokia X」シリーズ

Nokiaは2014年2月24日、長い間、登場が噂されていた同社初のAndroidベースのスマートフォン「Nokia X」をスペインのバルセロナで行われたMWC 2014のプレスカンファレンスで正式に発表した。

今回Nokiaから新たに発表された端末は「Nokia X」、「Nokia X+」、「Nokia XL」の3機種である。「Nokia X」は端末名にも採用されているが、NokiaはAndroid Open Source Project(AOSP)で公開されたAndroid 4.1のソースコードをベースに独自に構築したプラットフォーム名にもNokia X(「Nokia Xソフトウェアプラットフォーム」)を採用している。つまり、NokiaはAmazonの「Kindle Fire」のようにAndroidを使って独自のエコシステムを構築しようとしている。Androidを採用しているのでAndroidアプリも動作するが、アプリはNokia Storeという独自のアプリストアを通じて配信される。Google PlayなどのGoogle Mobile Service(GMS)には対応していない。NokiaとMicrosoftのサービスとの統合も図っていく。

Nokiaのエロップ氏は「ユーザーはAndroidアプリやエコシステムの恩恵を受けられるが、我々は差別化している」とコメント。つまりマイクロソフトやNokiaのアプリがいろいろプレインストールされている。例えばSkypeアプリが入っており、固定電話や携帯電話に1ヵ月間無料で通話できる。Nokiaのナビゲーションアプリも入っている。さらに「Nokia X」シリーズの端末で利用するクラウドサービスはグーグルではなくマイクロソフトである。「Nokia X」シリーズはAndroidをベースにした端末であるが、極力グーグルと距離を置こうとしているのではないだろうか。エロップ氏は「Nokia XとLumiaはともに、マイクロソフトのサービスを強化するための戦略を体現している」とコメントしている。

LumiaとAshaシリーズの中間を狙う

Nokia Xの価格は125ドルと超低価格なスマートフォンで発売地域はアジア、インド、欧州、南米、中東、アフリカの新興国。Nokia X+とNokia XLは2014年Q2から発売される。価格は、Nokia X+が135ドル、Nokia XLが150ドル。これら3機種ともに先進国だけでなくアジア、アフリカなどの新興国をターゲットとした価格帯である。Nokiaのエロップ氏は「Xシリーズは、Lumiaシリーズより手頃なラインとして位置づけるべく作った」と強調した。
低価格帯には45ドル程度で購入可能なフィーチャーフォンAshaシリーズが存在しているから、今回の「Nokia X」シリーズはLumiaとAshaの中間に位置付けられたラインナップである。

Nokiaのミドルエンド端末としての「Nokia X」シリーズ~なりふりかまわぬNokiaの今後の戦略

「Nokia X」シリーズの登場でNokiaの製品ポートフォリオはエントリーモデルから順に「Nokia」シリーズ、「Nokia Asha」シリーズ、「Nokia X」シリーズ、「Nokia Lumia」シリーズの4つとなった。そして今回登場した「Nokia X」シリーズはAndroidベースであり、世界の多くのスマートフォンはここのレンジに入るであろう。ハイエンドで高い価格の端末は購入できないが、スマートフォンは欲しいという層を取り込むことができる。そしてスマートフォンOS市場で圧倒的なシェアを誇るAndroidのアプリと互換性があることによって、ユーザーからの違和感をなくし、さらにNokiaやマイクロソフトのサービスも利用可能とすることによって差別化を図ろうとしている。Nokiaは新興国市場では今でも人気が高く、多数出荷されている。

▼Nokiaの端末ポートフォリオとそれぞれの特徴
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Nokiaはサムスンに次いで携帯電話の世界で2位の出荷を誇っている。しかしスマートフォンではNokiaランクインされていない。調査会社IDCによると2013年にはスマートフォンの出荷台数が10億台を超え、携帯電話の全出荷台数に占めるスマートフォンの比率は55.1%となった。今後もスマートフォンの出荷は増加するであろうことから、NokiaとしてもいつまでもWindows Phoneの「Lumiaシリーズ」に依拠していくわけにはいかないだろう。今回の「Nokia X」シリーズはミドルエンドの端末として、Nokiaにとっては競争が激しい世界のスマートフォン市場で勝ち残れるかどうかの重要な端末である。「Nokia X」シリーズはNokiaにとっても背に腹変えられない状況で登場したスマートフォンである。Windows Phoneを供給しているマイクロソフトに買収されたから、Windows Phoneしか出さないというようなことをいっていられる状況ではない。ある意味、Nokiaとしてはまさに「恥も外聞も捨てて」生み出した"生き残りをかけた端末"といえる。

すでに中国や新興国には、低価格なAndroidスマートフォンが大量に出回っている。Nokiaは携帯電話メーカーとしては老舗であるが、スマートフォン市場ではそれらの新興メーカーを追いかける立場である。これからのNokiaは世界中で「なりふり構わず」戦いを挑んでくるのではないだろうか。これから市場にどう受け入れるのか楽しみである。

【参考動画】

【参照情報】
Kenya: Nokia Launches Android Smartphone in Kenya
'Nokia X' Android smartphone will be available in India from March 15
Nokia X()

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。