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学生・社会人のためのプレゼンテーション講座

2014.04.05

Updated by Ryo Shimizu on April 5, 2014, 11:49 am JST

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 新社会人の季節になりました。
 まだ新人研修の段階で、どんな部署に配属されるかは決まっていないと思いますが、社会人として最も求められる能力のうち、大学ではなかなか磨かれないものの一つが、プレゼンテーション能力です。

 今日はプレゼンテーションをプログラマーはどう演出するか、ということについて語ってみたいと思います。


 意外にも、プログラマーはプレゼンテーションの機会が多く与えられます。
 世の中には色々な業界がありますが、プログラマー業界ほど活発に勉強会が開催され、現場の末端の技術者が自分の意見や研究成果を発表する機会に恵まれることは滅多にないのではないでしょうか。

 ゲーム業界ならCEDECやIGDAの勉強会があり、Web業界にもIT業界にも沢山の勉強会があり、発表の機会が与えられています。

 また、副業として本を書くプログラマーも数多く、筆者の会社にも、個人で本を出版している社員が何人も居ます。筆者自身も先日、「教養のためのプログラミング講座」という新書を上梓しました。

 プログラマーは論理的に話を構築する作業を日常的に行っているため、文章を書いたり資料をまとめたりといったことが得意なケースが多いのです。

 人前ではあがってしまってうまく話せない、という人も、文章を書かせるととてもよみやすく、整理されたものになることが多いのです。

 従って、たいていのプログラマーはプレゼンテーションに優れています。
 特に優れたプログラマーほどその傾向は顕著です。

 ものごとの本質を見抜き、整理し、短く適切な言葉にまとめる。
 これは、「最適化」という、プログラミングの極意の一つと通じるものがあるのです。

 ただし、ロジックではなくエモーショナルな部分に関しては、ややニガテな面があります。
 つまり、整理されている、論理的である、ということと、「面白い」ということの間には開きがあるということです。

 プログラマーが経営者になるときに、一番苦労するのが、このエモーショナルな部分をどう演出していくか、ということです。

 誰が見ても頭がいい人、というのが居たとして、しかしその頭の良さが本当に製品の良さに直結していくのか、ということに関しては誰にも評価のしようがありません。

 投資家や取引先は、しばしば頭の良さよりも情熱を求めることがあります.
 結局のところ、自分たちではよくわからないことを依頼しているわけですから、そのぶん、自分たちにも理解できる部分、すなわちその事業に取り組む熱意を表現して欲しい、と思うことがあるわけです。

 ところがこの「熱意」の表明というのは、論理性の対極に位置しているため、これができるプログラマーはとたんに少なくなってしまいます。

 逆にいえば、それができるプログラマーは、過大評価されがちであるということです。
 私の特技は、まさに熱意の表明です。

 私はプログラマーであると同時に、それと同じくらいの時間を執筆やゲームの演出に費やしてきました。
 従って、人々の感情をどのように揺さぶると喜んでもらうことが出来るか、「面白いもの」と「面白くないもの」の境界線はどこにあるのか、といったことについて、非常に長い時間をかけて研究を重ねています。

 ですから、私は自分のプレゼンテーションが「面白い」ということにかけてはかなりの自信を持っています。
 ただそれが「正しい」かどうかは別の問題です。つまり、コンペに勝つかどうかということです。コンペに勝つには、面白さと同時に正しさが必要です。

 私はここぞという時のコンペには常に勝ってきました。が、見積もりの段階で負けてしまうことはありました。

 ただ、「面白いプレゼン」をできれば、また何か会ったときに呼んでもらえます。
 仮にそれがそのまま仕事にならなくても、その人の心にひっかかって、どこかでまた呼んでもらえます。

 先日、気心の知れた友人と4人で食事をしていました。
 そのとき、まだ付き合いの浅い方が一人居たので、彼が「清水さんとはみなさんどこで知り合ったのですか?」と聞くと、口々に答えました。

 しかし、その場にいたなかで僕と一番付き合いの長いディレクターの友人が発したのは意外な言葉でした。

 「実は清水さんはつい最近まで私のことをちゃんと認識してなかったんですよ」

 そういえば僕は彼女とどこで最初に知り合ったのか覚えていませんでした。
 なんとなく、気がついたら食事したり、悩みごとを話し合ったりする関係になっていたのでした。知らないうちに結婚していて、知らないうちにテレビ番組の制作会社でディレクターのようなことをやっているのです。

 「いつだっけ?」

 「おぼえてませんか?わたし、前職のとき、清水さんのプレゼン受けたんですよ。七年くらい前に」

 全く覚えていませんでした。
 しかし彼女はずっとそのプレゼンを覚えていてくれて、それから私の主催するイベントに度々顔を出してくれるようになり、いつのまにか友人になっていたのです。

 そのときのプレゼン自体は上手く行ったものの、実は当時、彼女のいた会社では私のプレゼンした製品と競合する製品を密かに開発しており、購入していただくには至らなかった、ということを聞きました。

 「面白いプレゼン」の効能はほかにもたくさんあります。
 

 僕はしばらくのあいだ、インフィニティ・ベンチャー・サミット(IVS)というIT業界の社長や経営幹部のみが集まるイベントに定期的に出席していました。

 最初はパネルディスカッションで喋って欲しいと依頼されたのがきっかけだったのですが、「Launch Pad」というベンチャー企業のプレゼン大会の審査員を依頼され、そのプレゼン大会がとても面白かったので、自分もやってみたくなり、初回では惜しくも三位、そして次の回からほぼ毎回出席し、最後は優勝を頂いたので、それから行くのをやめました。

 このプレゼン大会、初回と最後の優勝以外は全て選外という極端なものでしたが、なにしろ私が毎回その大会に出てるということ自体がひとつの風物詩になっており、にぎやかし、と認識されていたのでした。

 しかし、このプレゼン、絶対にやったほうがいい、と思いました。
 というのも、このプレゼン大会はいつも二日目の朝にあるのですが、一日目は知っている人としか話をしないのに、二日目、このプレゼンを終えると、とても多くの方から声をかけられるようになったのです。「面白かったよ」とか、「惜しかったね」とか、言葉は様々ですが、会話のきっかけとしてとてもいい掴みになります。

 実を言うと私は立食パーティのような席で知らない人と知り合うのが実はニガテです。
 自己紹介もできればしたくないし、相手のことを値踏みするような会話も疲れてしまいます。

 ところがプレゼンテーションでは、自分の言いたいことを、自分が面白いと思う順番で披露することができます。
 その結果、IVSに参加するIT企業の経営幹部の方々の心に私の印象が刻み込まれるようになったのです。

 そこで知り合って、今でも友達付き合いを続けていただいている経営者の方は大勢居ます。
 そんなチャンスでもなければ、永久に知り合うこともなかったような方々です。

 さらにそれをUstreamで見ていた人が私の会社の求人に応じてくれたり、取引先に伺うと「あのプレゼン見てました。面白かったですね」と言っていただいたり、とにかく、勝ち負けはともかく「面白いプレゼン」によって得することがかなりありました。

 誰でも訓練すれば「面白いプレゼン」をできるようになる、と私は思います。

 これはお笑い芸人が養成所で訓練をすれば「面白い話」ができるようになるのと似ています。
 もちろん才能も若干は関係しますが、少なくとも笑わせるというだけが重要なわけではないですし、基本はビジネスなわけですから、「面白いプレゼン」は「面白い話」よりも簡単にできるようになると思います。

 
 私が考えている、「面白いプレゼン」の基本構成は以下の通りです。

・身近な話題
・問題提起(できるだけ身近な問題がいい)
・鮮やかな解決策(ここで新商品)
・そこから広がるバラ色の未来(大袈裟でもいい)

 たいていのプレゼンは、この構成なら「面白い」「わかりやすい」と受け止めてもらえます。
 ところが世にはびこるプレゼンは、こういう当たり前の構成を全く持っていません。

 よく、「起承転結を大事に」と言いますが、私も子供の頃、マンガを書いてみたくてこの「起承転結」を考えろ、といわれたときに全く思いつかず、そもそも起承転結自体を創りだし、見つけ出すのが難しいのです。

 しかし、上記のようなプレゼンの構成であれば、起承転結の形を踏襲しつつ、様々なことにあてはめやすいパターンになります。いわばプレゼンテーションのデザインパターンです。上記のものは「ドラえもん秘密道具パターン」とでも名付けましょうか。

 ドラえもんでは、のび太がたいていくだらない悩み(身近な問題)を抱えています。その結果、ドラえもんに泣きつくと、ドラえもんが秘密道具(鮮やかな解決策)取り出し、そしてのび太が抜群の発想力を活かしてその道具をどんどん使います(大袈裟かつバラ色の未来)、しかしやりすぎて最後はたいへんなことになる、というのがオチです。

 プレゼンの場合、オチをつけてしまうと製品を売り込むのが難しくなるので、オチはなるべく製品そのものを邪魔しないようなものにすべきですが、たいがいのものはこの構成で説明できます。

 ある商品を売り込みたい、と思ったら、まずその商品が解決する問題(新商品は必ず何らかの前世代の欠点を改良したり何かの反省にもとづいてつくられているはずです)をできるだけ身近なレベルまで落とします。

 例えば電気自動車を売り込もうと思ったら、ガソリンの代が値上がりして夕飯のおかずが一品減った、家族の団欒から笑顔が消えてしまった(身近な問題)・・・くらいまで大袈裟に考えるのです。

 それを解決するためには、ガソリンを使わないクリーンエネルギーの電気自動車が!(鮮やかな解決策)という展開です。
 電気自動車を使えばガソリン代が劇的に節約できて夕飯は毎日しゃぶしゃぶになり、息子は発奮して東大に合格し、娘は玉の輿をゲット、幸福の絶頂にあるパパとママはさらに家族をひとり増やしました、くらいの「大袈裟なバラ色の未来像」を示し、「そんな馬鹿な」と思わせながらも、思わず笑ってしまう。

 それが「面白いプレゼン」の基本構成です。

 これ以外にもいくつかのデザインパターンはありますが、いくつかの型を持っていると、咄嗟のプレゼンの時に戸惑いません。

 私はたいていのプレゼンは当日の朝まで書かないことにしています。

 というのも、当日になるまで、状況が刻々と変化しており、「身近な話題」が変わるからです。
 最も良いプレゼンは、この「身近な話題」としてその日のトップニュースを取り入れていることです。それは世間中の関心事であり、誰もが興味を持つ話題だからです。ただし、ここまでやるには相当な訓練を積み、朝のニュースを見てから臨機応変にプレゼンの最初の数枚のスライドを組み直すスキルと手際の良さが求められます。

 プレゼンの最初の段階を「つかみ」と呼びますが、この「つかみ」の段階で引き込めれば、あとはこちらの書いたストーリー通りに物語を展開できます。

 この「つかみ」が、いかに解り易いか、興味を引くか、といったことが何よりも大事です。
 
 「つかみ」となるのは、とにかく身近な話題です。
 企業のプレゼンなら、先方の会社のニュース、先方の主力製品や、社長のご結婚などの話題、などなどです。

 そういうことを臨機応変に取り入れて行くことで相手の心をガッツリとつかむことができます。
 

 ニコニコ超会議の企業対抗プレゼンバトルに、なぜか弊社がエントリーされ、しかも予選を突破してしまい、プレゼンをやらなければならなくなったのですが、あいにく私はその日は海外出張でプレゼンに参加できなくなってしまいました。しかしずらり並んだなみいる大企業のなかに混じって、上場すらしてない弱小ベンチャー企業がプレゼンバトルに参加するというのは、なかなか、大変です。

 しかし、私はこれを機会に社員にプレゼンの手法を教え、闘わせてみることにしました。

 私が社会人になってから20年近くの間、蓄積してきたプレゼンテーションのノウハウをまとめる良い機会だと思ったのです。ついでに、一般の方も広く募集して急遽「プレゼンテーション講座」を始めることにしました。

清水亮「初めての企画・プレゼン塾」

 全三回で、企画・プレゼンテーションの手法について徹底的に教授します。
 プレゼンの手法や方法論に止まらず、企画、そしてマーケティングの手法について短期間で学べる良い機会になると思います。

 お誘い合わせのうえお越し下さい。
 

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。