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Google GlassにiWatch?ウェアラブル端末の時代は今度こそやって来るか?

2014.04.13

Updated by Ryo Shimizu on April 13, 2014, 09:18 am JST

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 最近、ヘッドマウントディスプレイ(Oculus)やら、手書きコンピュータ(Galaxy Note)やらが話題になっていますが、この手のブームって周期的に繰り返してるのをご存知でしょうか。

 実はヘッドマウントディスプレイも手書きも、パーソナルコンピュータの発明以前から存在しているのです。

 これはアイヴァン・サザーランドが1968年に開発した世界初のヘッドマウントディスプレイ(HMD)です。
 当時は小さいディスプレイが存在しないため、通常の画面に表示した映像を光ファイバーの束で目の前に送るというとても大掛かりなことをやっています。

 ヘッドマウントディスプレイと同時期、サザーランドは手書きコンピュータSketchpadも開発しています。

 これも1960年代のものです。
 つまり、ウェラブルや手書きというテーマは、パーソナルコンピュータが生まれた当初から存在していたのです。

 それから半世紀が経ちました。
 その間にも、何度かヘッドマウントディスプレイを利用したウェアラブルコンピューティングも研究され、たびたび実用化されました。

 これは1985年にVPL Research社が発売していたヘッドマウントディスプレイです。http://kunochan.com/?p=33

 当時はデータグローブという手袋とセットで何百万円もしました。

 初期のバーチャルリアリティの研究ではかなり活躍しました。

 ちなみに、データグローブは手や指の動きをコンピュータに伝えるための入力インターフェースでした。

 これを発展させたデータスーツを着ると、身体の動きを全てコンピュータに伝えることができ、バーチャル空間に完全に没入することができました。

 データスーツやヘッドマウントディスプレイのために作られた要素技術は、その後モーションキャプチャーに応用され、ゲームや映画制作には欠かせない技術の一つとなっています。

 HMD、データスーツ、データグローブはまだまだ高価なワークステーションとの組み合わせでなければ動作させることができませんでした。

 しかしVPL Researchからさらに5年後、1990年にザイブナー(Xybernaut)社が創業されます。世界初のウェラブルコンピュータ会社です。

 これは、Pomaという機種です。2005年に破産します。

 ザイブナーの創業から20年発ち、「ウェアラブル」という言葉を人々が完全に忘れ去りました。

 そして再びGoogle GlassやOculus Riftでヘッドマウントディスプレイが、Android Gearというウェラブルコンピュータが注目を集めています。

 ちなみに腕時計型コンピュータというのも、Android Gearが初めてではありません。

 セイコーインスツルメンツが開発したRaputer(ラピュータ)です。

 また、最近ではKickstarterで大ヒットしたPebbleという腕時計もあります。
 先日のサンフランシスコ出張の帰りに空港の自動販売機で売っていたので買ってみました。

 このPebble、白黒ではありますがなかなか視認性の高い画面で好感が持てます。
 iPhoneと接続すると、時計の盤面(フェイス)をダウンロードして変更したり、ゲームを遊んだりすることができます。

 アプリをダウンロードしてきて、色々と拡張できるのがいいところです。
 

 特に凄いと思ったのは、PebbleをiPhoneカメラのファインダーにしてしまうアプリや、iPhoneの地図アプリと連動して現在地の地図を表示するアプリ。

 このPebbleは大ヒット商品で、既に50万台を出荷したそうです。

 ただ、筆者としてはこのPebble、楽しめはしたものの、使い続けることはできませんでした。
 Pebbleを持ってるよ、と言うと見たがる人が多いので持ち歩いていたのですが、それ以外の時はセイコーの機械式腕時計を使っています。

 何かが出来そうで、しかし何も出来ない、というのが今のところのPebbleの状態です。
 iPhoneとBluetoothで接続しておくと、iPhoneが受け取ったLINEやFacebookの通知がPebbleにも通知されるのですが、そもそも最近は通知が多過ぎてずっと鳴りっぱなしになってしまい、実用的ではありません。もちろんLINEだけとかFacebookだけとか設定することもできますが、そもそもそんなに頻繁に通知が欲しいとは思わないのです。

 Pebbleを付けていてもあまり画面を見たいという気持ちが湧きません。
 セイコーの機械式時計は、いつ盤面を見てもそれほど変化がないのについ見てしまいます。
 手遊び感覚で、竜頭を巻き、ゼンマイを巻き上げてしまいます。機械式時計は見てるだけでモノとして不思議な高揚感があるのです。

 実に不思議です。この違いはなんなんでしょう。
 

 筆者はいつのまにか懐古主義者になってしまったのでしょうか。

 
 でもiPhoneの画面は度々見てしまうのです。

 Android Gearは、ひょっとするとメーカーによって使われかたが全然異なるのかもしれません。
 いつでも見たい、見る度に喜びがある、という質感、それはいつも身につけているものだからこそ、デザインやバンドの素材、革なのかゴムなのか金属なのか、そういうことがとても大事になるのではないかと思うのです。

 ウェアラブルというのは、「身に着けられる」という意味ですが、今、ウェアラブル端末と呼ばれているものは根本的には「身に着けないと使えない」ものです。

 その意味で言うと、PebbleもGoogle Glassも、いまのところ身につけたいと思わせない無骨さを持っています。

 例えば腕時計は、単に時間を見るための道具ではなく、男性にとっては社会的地位や自己の主義主張を示すツールの一つであり、女性にとっても男性にとってもファッションの一部です。

 メガネに至っては、人相や印象まで変えてしまう最も重大なファッションです。
 いま、Google Glassを付けて恥ずかしいと思わずに外を出歩ける人は、もはやファッションや人相に対する意識がどこかしら破壊された状態の人ではないかと思います。筆者は歩き慣れた社内を歩くときでさえ、すこし恥ずかしいような気分になりました。

 先日、友人とメガネを買いに秋葉原のアトレまででかけたのですが、その人に似合うメガネを選ぶのが難しいということを改めて痛感しました。

 性別はもちろん、顔や肌の色、時には服やメイクの色にあわせてメガネを選ばなければ、どこかちぐはぐなものになってしまいます。
 メガネが変わっただけで別の人に見えてしまいます。

 似合わないメガネで出かけるのは誰にとっても大変なストレスになります。
 
 
 その意味で、Google Glassはまだ発展の途上にあると言えるでしょう。
 今のところ、デバイスとしての制約がデザインとしての制約にかなり作用しています。

 ただでさえアシンメトリックなデザインのメガネは好まれません。
 不安定な印象を与えてしまうからです。

 しかし今の技術で作ろうとすると、Google Glassは必ずアシンメトリックなものになってしまいます。

 そもそも人間の顔は、対象形に近い程美しいと感じられることは良く知られています。
 どちらかの目が極端に大きかったり、右と左でメイクを変えたりするととても違和感があるものなのです。

 その意味で、ウェアラブルデバイスとしてのメガネ型端末が広く普及するにはまだまだ技術革新を待つ必要があります。

 一方、腕時計の方はどうかというと、これはまだ可能性があります。
 腕時計を好んで身につける人は大勢おり、Android Gearとして様々なバリエーションが登場する可能性があるからです。

 ただし、これもバリエーションとセットであるべきです。
 腕時計は身につける人の主張であり、ファッションの一部でもあるわけですから、とにかく大切なのはデザイン、そして質感です。

 Pebbleの新機種の材質が鉄になったのも、この「質感」を上げるための工夫でしょう。
 今のPebbleは子供にオモチャとして買い与える2000円くらいの腕時計に見えてしまいます。鉄になれば少しは質感がよくなるでしょう。

 Android Gearも同じく重要なのは質感になるでしょうから、各社がどのようにAndroid Gearを捉え、製造するかは見物です。

 明日から香港の見本市に出張しますが、ウェアラブル端末のプロトタイプもいくつか見つけることが出来るかもしれません。そのときはご報告します。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。