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24年前にスティーブ・ジョブズ自ら「新しいコンピュータ」のマーケティングを解説したビデオ

2014.12.22

Updated by Ryo Shimizu on December 22, 2014, 11:59 am UTC

 Appleの伝説的な経営者、スティーブ・ジョブズはMacintoshを発売した後、その販売不振の責任を問われてAppleを追い出されます。

 しかしジョブズの去った後のAppleを支えたのはそのMacintoshだったというのは実に皮肉な話です。

 ジョブズはAppleを追い出された後、すぐにNeXTという会社を設立します。

 このNeXTが、現在のOSXやiOSの原型になっています。
 その意味では非常に意義深い会社です。

 つまり、現在のiOSやOSXの根底にあるビジョンは1985年、今から30年も前に発明されていたということになります。

 このNeXTを設立した際にスティーブ・ジョブズがNeXTの何が画期的なのか、そしてどうやって打っていくのかというマーケティング戦略について語っています。

 このビデオの冒頭では、NeXTというマシンの位置づけについて説明しています。

 このマシンはAppleを退職する際に交わした協定などから、Apple製品の競合とならないような、ハイエンドのマーケットに向けて開発されています。

 なので価格は300万円以上となっています。

 しかし、ライバルのSUNがほとんど支配的な地位を収めているそうしたハイエンドマーケットに乗り込む際、むしろSUNを利用すべきだという主張をしています。

 この当たりはスティーブ・ジョブズらしい現実的な視座と言えます。

 そして最後に、この製品の何が画期的なのか、という説明のなかで、三つの特徴を挙げています。

 まず大切なのは、「Custom App」ハイエンドの顧客がカスタムアプリケーションを作りやすい開発環境、ネットワーク、データベースを組み合わせたアプリケーションをサポートした強力なオブジェクト指向OSが必要だと主張します。これは現在のXcodeやそこに含まれるInterface Builderなどを示しています。

 さらに、「Great Prod App」、生産性を非常に加速する便利なアプロケーションが必要です。

 通常のPCと比較して、この生産性の鍵を握るのはネットワークを活用することです(当時のPCにはLANポートなど内蔵されていませんでしたし、オフィスにLANもありませんでした。Microsofttがオフィスでインターネットに接続するようになったのは90年代後半です)。

 そして最後は、「IPC(Inter Personal Computing)」です。

 ジョブズは大胆にも宣言します。

 「これから24ヶ月以内に、人々がコンピュータを購入する最大の理由は、インターパーソナルコンピューティングになるだろう」

 洗練されたコンピュータがネットワーク上で接続され、様々な共同作業に用いられるだろうと言うのです。

 「(高名なマーケッターの)レジス・マッケンナは言った。"最良のマーケティングとは教育である"と。すると、顧客は我々に聞いて来るはずだ。インターパーソナルコンピューティングとは何か?ということを」

 果たしてそれからインターネットをごく普通の人も使うようになり、そしてまさしくインターネットの顔であるWebそのものがNeXTの優れた開発環境から産み出され、そして世界中に拡散していき、最後にまたNeXTの末裔であるiPhoneで見られるようになると、誰が予想できたでしょうか。

 しかしその全てをジョブズはこの時点から企んでいた・・・というのは少し買いかぶりすぎでしょうか。

 iOSがNeXTの直系の子孫である証は、開発環境Xcodeを立ち上げると解ります。
 Xcodeに搭載されたInterface Builderは、もともとNeXTの開発環境だったものですし、Objective-Cもそうです。

 そしてたいていのクラス名にはNSという接頭語が使われています。
 これはNeXT STEP、NeXTのOSを意味しています。

 さて、ジョブズの夢想したインターパーソナルコンピューティングは、もともとアラン・ケイのパーソナル・コンピューティング(一人一台のコンピュータ)という概念をさらに拡張したものです。

 パーソナルで閉じるのではなく、パーソナルとパーソナル、人間と人間の間を結びつけるためにこそコンピューティングを発展させていくべきだ、というのがジョブズの主張でした。

 そして現在、様々なツールが開発され、普及しています。
 

 そして人々の生産性は24年前とは比べ物にならないくらい上がりました。

 その先の未来はどうなるのでしょうか。

 今はインターパーソナルコンピューティングの時代を超えて、人類はさらに次のステップに踏み出そうとしています。

 たとえばプログラムがデバイスを超える、というのももう当たり前になってきました。それはWebが十分発達してきたからです。

 先週公開されたenchantMOONの新しいOS、MOONPhase3.0では、開発したプログラムをiPhoneなど他のデバイスに瞬時に共有し、通信を含んだプログラムの開発が劇的に簡単になりました。

 これまで、通信を行うプログラムの開発は、プログラムそのものが難しいだけでなく、サーバーのセットアップや維持にお金と技術が必要という欠点がありました。しかし、新しく追加されたテレパシー機能を使うと、簡単にMOONとiPhone、iPhoneとPCを繋いだプログラムを作ることか出来ます。
 

 これはインターマシンコンピューティングとでも呼べばいいでしょうか。
 古典的なクロス開発とも言えますが、通常のクロス開発は機能が多いマシンで機能の制限されたマシン向けのプログラムを作るのに対し、これは真逆です。機能がむしろ制限されているマシンで作られたプログラムが、機能のより多いマシンで動くのです。

 このテレパシーブロックはmoonblock.jpからPC/Macでも使用可能です。

 作られたプログラムは、もちろんiPhoneでも動作します。
 

 少しずつの工夫を重ねて行くことでプログラミングはどんどん簡単になっていきます。

 時にはジョブズになった気分で、未来のコンピュータはどうなるか、未来の世界はどう変わるか、仕事の手をちょっと休めて夢想してみるのもまた良いかもしれません

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。