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プログラマー中国放浪

The programmer visit China

2015.09.22

Updated by Ryo Shimizu on 9月 22, 2015, 10:08 am JST

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 シルバーウィークを利用して中国に来ています。

 一時期、香港には年に三回くらいは通ったり、深センには1.5ヶ月ほど滞在したりしていたのですが、今回は上海です。

 今の中国は本格的にGoogleが使えなくて驚きます。

 VPNを使おうが使うまいが、とにかく使えないのです。
 モバイルでの使用は絶望的で、なぜかホテルではVPN経由ならGoogleやFacebookにアクセスすることができます。

 VPNをリアルタイムに解析してドメインごとブロックするなど、もはや通信の最適化というレベルではないのですが、そこまでやってしまう中国の技術力と根性にただただ脱帽するしかありません。

 上海に入国して気づいたのが、入国管理の効率の良さです。

 だいたい、アメリカでは下図のような感じで入国管理がされています。

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 大きな列を作って、その列から一人づつ入国管理官にディスパッチ(割当)されるという方式です。

 これは、プログラミング用語的にはシリアライズ(直列化)と呼ばれる方法で、行列の制御を一本化し、全体としての効率を最大化するという方式です。

 しかしこの方式は、例えば遠くはなれた入国管理官に呼び出されても、列の先頭の人がボーッとしていると気づかず、行列全体のボトルネックになるという問題があります。

 また、列の後ろの方に並ぶと、「あとどれくらい待てばいいのだろうか」ということが解らずにうんざりします。

 中国の入国管理は二種類あります。

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 ひとつは、成田の入国管理のように、全体を一列にするのではなく、バラバラの列にする方法です。

 論理的にはこの方式は行列の最適な配置とは言えません。
 各個人が平均どのくらいの時間で入国手続を終えることができるかということが、運に左右される要素が大きいからです。

 自由と平等の国アメリカでは、だから一列にならぶ方式を選択するのだと思います。つまり不公平感が出ないことをボトルネックによる効率低下よりも重視した配置です。

 しかし現実的には、行列に何人並んでいるかわからないよりは、「自分の前はあと6人だ」と思うほうが同じだけ時間がかかっても気が済みます。

 心理的には「いつ終わるのかわからない」よりも、「あと6人」の方が同じ時間がかかっても負担が少ないのです。

 これはプログレスバー表示の問題とも解釈することができます。
 

 とあるプロジェクトで、あまりにも起動が遅くてイライラする人が居ました。
 そこで、私は起動時にプログレスバーを表示するように改造してみました。

 実際にはかなり非力なマシンなので、プログレスバーを表示する処理を入れることによって、全体の起動スピードは5%ほどさらに遅くなりました。

 しかし、それを見た人の大半が、「プログレスバーがついたほうが速くなった」と"感じた"のです。

 人間の認知機能にはまだまだ未知な部分が多く、体感時間と実際に過ぎる時間が異なることはよく知られています。

 例えば交通事故に遭った人などは、事故の瞬間をスローモーションのように思い出せるといいます。

 ショッキングな出来事があると、その瞬間だけ、認知機能がフル回転するのかもしれません。

 
 つまり実際に早く効率的に終わることよりも、「早く終わった」という体感を与えることが大事だとすると、列はシリアライズしないほうがいいのです。

 もうひとつのパターンは、大量の人がやってくる上海のような空港では、やはり途中まではアメリカ式と同様の列のシリアライズが行われます。

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 ただし、最前列になると、常にパラレルで、いきなり列の先頭が分裂します。
 ラッキーな人は前の人よりも早く入国手続ができるようになっています。

 また、常に一人あたり三人の入国管理官をチェックすることになります。
 これは退屈しません。

 気が付くとあっという間に入国手続きが終わっていて驚きました。

 また、中国の入国管理官は非常にテキパキ仕事をこなします。
 アメリカの入国管理官が「どこいくんだ?」「なにしにいくんだ?」「犬は飼ってるのか?」などと無駄口を聞いてくるのとは対照的です(もっとも、彼らも不まじめなわけではなく、何気ない日常的な質問からテロリストをあぶり出すために聞いているのですが)。

 しかしこれは国民性が勤勉だとか、テキパキしているから、ではありません。

 実は中国の入国管理官は採点装置で常にチェックを受けているのです。
 大満足から大不満まで、五段階の評価をするためのボタンが備え付けられていて、管理官の管理番号と対応した数値が7セグメントLEDで表示されています。

 あまり手続きにもたついていると大満足を押してもらえないため、無駄話は最小限に、パッパッと手際よく処理するのです。

 このあたり、さすが大帝国が栄えた国だけあって、さまざまな民族からなる大勢の公務員をうまく運用するノウハウが徹底しているな、と感心させられます。

 北京では、デパートのトイレの中にまで軍人が(防犯のため)配備されていることに比べると、上海は貿易都市だけあってそこまで徹底されていません。中国の都市の中では香港に似ています。

 土地バブルは崩壊したそうですが、それほど治安が低下している感じもせず、町行く人々も最新のスマートフォンを手にしていました。

 ここ、上海の平均年収は日本円にして90万円程度で、北京を抜いて中国一位になったそうです。

 平均月収が7.5万円と考えると、iPhone6Sなどは月給一ヶ月分という計算になります。
 
 なので、最先端のスマートフォンを持ち歩く富裕層の何倍も貧困層が居ることになるのでしょう。

 しかし誰もがiPhone6のような高級品を持てるわけでもなく、大半はAndroidです。
 ところが今年の1月からGoogleが完全に中国から閉めだされてしまいました。

 しかしAndroidの重要な機能の大半はGoogle由来のものです。
 実際、筆者の愛用するXperia Z3 Compactも、ほとんどの機能がつかなくなってしまいました。

 マップ、メール、Chrome、検索、は全滅です。
 検索エンジンをGoogleではなくてYahoo.co.jpにすれば辛うじて使うことが出来ました。地図もブラウザから百度地図を参照してなんとか誤魔化してます。

 しかたがないので新しいアプリをダウンロードしようと思ったら、Google PlayすらGoogleなので当然、ダメなわけです。

 中国について身近で一番詳しい、CEREVOの岩佐琢磨氏に聞くと、「中国では独自のAndroid/iOSマーケットが発達している」とのことでした。

 しかし中国語なのでぜんぜんわかりません。

 
 中国に来ると、英語が使える人がほとんど居なくて驚きます。

 筆者も、短い中国滞在経験で、YESを意味する是(シー)とNOを意味する不是(ブーシー)、「ない」を意味する没有(メイヨー)くらいは覚えていたのですが、当然、それだけで会話になるわけもなく。

 仕方ないのでYahoo Japanの翻訳機能で自分が言いたいことをホテルで一通り翻訳してスクリーンショットを取り、iPad miniで表示させるという方法でなんとか生活しています。

 特に、上海の市街はまだいいのですが、水郷など中国語しか通じない地域を訪問するときにはこのテクニックが役立ちました。

 たとえば「今日中に上海に帰りたい」「上海行きのチケットを下さい」などという言葉を予め翻訳・スクリーンショットをとって、必要に応じて見せるわけです。

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 また、ピンインの発音は難しいので、カタカナで発音するとほとんど通じません。
 地名ですら通じないので自分のホテル近辺の地名や、行きたいところの地名もスクリーンショットをとっておくと通じやすくなります。

 
 スクリーンショットをとる、という、およそハイテクらしからぬ方法ですが、意外やこれが一番効率的です。

 「指さし英会話」みたいなものもバカにはなりません。
 どのみち、「これいくらですか?」「ここに行きたいです」以上の言葉は使う必要がないわけですから、自分専用の指差し中国語会話帳みたいなものを作っておくと便利です。

 このテクニックは、もちろん、中国以外でも使えます。

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清水 亮(しみず・りょう)

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

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