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大規模災害時にはWi-Fiで「00000JAPAN」に接続 -無線LANビジネス推進連絡会がガイドラインを公表

2014.05.27

Updated by Asako Itagaki on May 27, 2014, 14:59 pm JST

▼左から 総務省総合通信基盤局 河内達哉氏、無線LANビジネス推進連絡会会長 小林忠男氏、同連絡会運用構築委員会委員長 大内良久氏。
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5月27日、無線LANビジネス推進連絡会(以下連絡会)は、「大規模災害発生時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン」(以下ガイドライン)を公表した。

公表されたガイドラインは、連絡会が2013年9月に釜石市、仙台市で実施した実証実験をもとに策定したもの。公衆無線LANを提供する各事業者等が、大規模災害の発生に備えて検討すべき対応措置や留意事項について明らかにしている。

大規模災害時には通信事業者の判断で無線LANの無料開放を実施

2014年3月末時点で、主要キャリア(NTT東西、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)のWi-Fiスポットは全国で90万か所と直近3年で約70倍に増加している。利用者は利用者は約1700万人で、スマートフォン利用者の約4分の1が無線LANの利用者と推計されており、利用者の間には浸透しつつある。2013年9月、連絡会では釜石市と仙台市で行われた実験では、参加者の9割が「手順さえわかれば解放された公衆無線LANを利用することができていたが、一方で解放のタイミングや利用者への周知、自治体と事業者の連携などに問題があることが課題となっていることが明らかとなっていた。本日公表されたガイドラインでは、その点を踏まえ、公衆無線LANの無料公開を行う大規模災害の定義、発動の目安、推奨するポータル、SSIDなど16項目について規定している。

「大規模災害」の定義については、災害の種類や規模などによって一律に規定することは困難であるため、被害状況から「携帯インフラが広範囲に被害を受け、携帯電話やスマートフォンが利用できない状態が長時間継続する恐れがある場合」と規定。実際の無料開放の判断は、携帯インフラの被災状況や復旧見込みなどを勘案して、通信事業者が主体的に判断することを明記した。また、措置を行う目安としては、人命救助活動などにも活用されることを考慮し、人命救助及び被災者の救護活動を行う災害の初動対応の目安となる「災害発生後72時間以内」に無料開放を行うことが望ましいと規定した。

SSIDについては、災害用統一SSIDとして「00000JAPAN」(ファイブ・ゼロ・ジャパン)を規定した。キャリアWi-FiのSSIDを配信しているエリアであれば、日本全国どこでも統一のIDで、他社のアクセスポイントにも接続できるようになる。

▼災害発生時には「00000JAPAN」でどのキャリアのAPにも接続できるようになる。
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▼会場に置かれていたau Wi-Fi SPOTのアクセスポイントに「00000JAPAN」を利用してドコモの端末から接続。
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端末上での無線LANアクセスポイントの表示が文字コード順に表示される端末が多いこと、また現在SSIDが「0000」からはじまるキャリア運営の公衆無線LANアクセスポイントがあることから、SSIDサーチの最上位になるように「00000」からはじまるアクセスポイントとした。また、これとは別に、地方公共団体などが固有SSIDで提供しており、平常時には登録ユーザー向けに提供されている公衆無線LANサービスについても、住民や地域の安全確保の面で災害時には未登録ユーザーにも開放することが望ましいとしている。

なお、「00000JAPAN」については、誰でも使える状態になっており、暗号化も施されないため、セキュリティ上のリスクは当然発生する。この点について連絡会では、悪用リスクと人命救助も含む災害対応における通信確保の重要性を比較考慮した上で、緊急事態ということで通信の確保を優先し、悪用された場合にトレースできるようにMACアドレスの取得などの対策を考えるとしている。また、「00000JAPAN」の運用は災害発生時のみ、被災地域に限定することで、できる限り悪用のリスクを小さくするとしている。

連絡会では、2015年3月に仙台市で開催される「国連防災世界会議」でも災害用統一SSIDによる無料開放を実施する予定。 また、通信事業者各社ではガイドラインに沿って「00000JAPAN」提供のためにアクセスポイントのエリアコントローラー改修などの準備を進めており、連絡会では2015年3月を待たず、なるべく早い時期に運用を開始したいとしている。

平常時は訪日外国人向けの取り組み

また合わせて訪日外国人向け公衆無線LANの環境整備についての取り組みを発表した。総務省が2014年3月に実施した調査によれば、訪日外国人の約36%が日本の公衆無線LAN環境について十分でないと感じている。現在訪日外国人が利用できる無料Wi-Fiサービスとして成田空港、福岡市、スターバックスなどが提供しているが、サービスごとにメールアドレスを登録する必要があるなど利便性に問題がある。2020年の東京オリンピックに向け、連絡会ではアクセスポイントの拡大と多言語対応やセキュリティと利便性を両立する仕組みづくりなど、訪日外国人の利便性の2つの側面から、業界横断的な検討を行っていく。

質疑応答では、こうした点を解決する具体的な取り組みとして、NTT-BP社の「Japan Connected-free Wi-Fi」が紹介された。アプリをダウンロードしてメールアドレスを登録することで、NTT-BP社がインフラ提供している複数の事業者の無料Wi-Fiサービスに接続できる。(関連記事:訪日外国人が必ず利用し喜んでもらえるWi-Fiサービスを目指して:「Japan Connected-free Wi-Fi」

連絡会では、こうした取り組みを通じて、インフラとしての公衆無線LAN利活用を推進していく。

【報道発表資料】
公衆無線LANの利活用について

※修正履歴
5/27 17:40  記事公開当初、題名にて本発表を行った組織名を「無線LANビジネス推進連絡協議会」としておりましたが、正しくは「無線LANビジネス推進連絡会」でした。お詫びして訂正いたします。(題名修正済み)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。