米ウェブサービス各社、FCCに圧力 - 「ネットワーク中立性」維持を求める連名の公開書簡
2014.05.08
Updated by WirelessWire News編集部 on May 8, 2014, 11:11 am JST
2014.05.08
Updated by WirelessWire News編集部 on May 8, 2014, 11:11 am JST
グーグル、フェイスブック、アマゾン,マイクロソフトなどをはじめとする米ウェブ関連企業各社が米国時間7日、米連邦通信委員会(Federal Commucications Commission、FCC)に対して、いわゆる「ネットワーク中立性」に関するルールの維持を求める書簡をウェブで公開した。
この公開書簡に署名しているのは、アマゾン(Amazon)、イーベイ(eBay)、フェイスブック(Facebook)、グーグル(Google)、マイクロソフト(Microsoft)、ヤフー(Yahoo!)、ネットフリックス(Netflix)、リンクトイン(LinkedIn)、ツィッター(Twitter)、ジンガ(Zynga)といった株式上場企業各社。そのほか、レベル3(Level 3)やヴォナージュ(Vonage)のようなネットワーク関連企業,ブラウザーメーカーのモジラ(Mozilla)とオペラ(Opera)、さらにドロップボックス(Dropbox)、フォースクウェア(Foursquare)、ユーストリーム(Ustream)、タンブラー(Tumblr、Yahoo!子会社)、キックスターター(Kickstarter)、レディット(Reddit)、ディグ(Digg)、ミディアム(Medium)、オライリー・メディア(O'Reilly Media)、フラーリー(Flurry)、ビットトレント(BitTorrent)など、実にさまざまな立場で活動する関連各社の名前も並んでいる。
ネットワーク中立性をめぐる問題は、2000年代前半以来何度か大きな争点となってきた事柄で、増大するトラフィックの発生源となっているウェブサービス/テクノロジー系企業と、そのトラフィック増大から直接的な形で利益を得られない通信インフラ事業者とが対立するという構図は変わっていない。
この問題では、2010年暮れにジュリアス・ゲナコウスキー(Julius Genachowski)FCC前委員長が、2008年の大統領選挙でネットワーク中立性支持を公約に掲げたオバマ大統領の意向を受ける形で、対象を固定回線に限ってトラフィックの差別的な取り扱いを禁じる内容の「Open Internet Order」を発表していたが、これに異議を唱えるベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)は訴訟を起こしていた。そして今年1月には、このFCCとベライゾンとの訴訟で,「ネットワーク中立性のルールをブロードバンド事業者に課す権限がFCCにはない」とする判断が連邦控訴裁で下されていた。これを受け、FCCでは新たな方針の策定作業を進めてきている。
FCCのトム・ウィーラー(Tom Wheeler)委員長は4月半ばに、「ネットワーク中立性」のルールを実質的に改める考えを明らかにしていたが、それ以来この問題に対して改めて大きな関心が集まっている。とくに同委員長がブロードバンド事業者に「ファーストレーン」(ネット上の「有料高速車線」)を設けることを認める考えを示したことに対しては、ウェブサービス企業と近いネットメディアなどから大きな反発の声が上がってきている。また5月はじめには、一部のウェブ系ベンチャー企業や消費者団体関係者らがワシントンに足を運び,連邦議会やFCCの関係者に対して「ネットワーク中立性」のルール維持を働きかける陳情を行ったことも伝えられていた。
FCCではいまのところ「ブロードバンド事業者によるファーストレーン設置を認めても、ネットワーク中立性が損なわれることはない」「どのウェブ事業者も対等な条件でファーストレーンの契約を結べるよう、FCCがISP事業者を監視していく」などとする見解や方針を示している。だが、ファーストレーン設置の容認はコムキャスト(Comcast)やAT&Tといったブロードバンド事業者に対して、それぞれの加入者に提供するウェブサービスの実質的な選別権を与えることになるとする見方もある(たとえば、同じ分野で競合するA社がブロードバンド事業者にコストを支払い、B社がコストを支払わないといった場合に,通信速度や品質の点でA社が「はるかに使いやすい」となれば、B社のサービスの利用者は自然と減少する可能性が高い、など)。
ブロードバンド事業者によるネットトラフィックの差別的取り扱い(ファーストレーン設置の容認)の可能性については、これまで「資金力で勝る大手のウェブサービス事業者が有利になる」「新興企業の市場参入障壁が高まり、イノベーションの停滞につながりかねない」といった批判の声も上がっていた。だが、今回のFCC宛公開書簡で、グーグルやアマゾンといった大手が多数のベンチャーなどとともに名前を連ねていることから、いわゆるシリコンバレー勢は「ファーストレーン容認反対」で足並みを揃えたという見方もできる。
なお、ウィーラー委員長の動きに対しては、FCC内部からも懸念の声が上がっているという。たとえば7日には、民主党系のジェシカ・ローゼンウォーセル(Jessica Rosenworcel)委員が、2014年末までに新たな方針の策定を完了させたいとするウィーラー委員長の姿勢を「性急すぎる」とする見方を示したことが伝えられた。また、共和党系のマイケル・オライリー(Michael O'Rielly)委員は米国時間5日にThe Hillに掲載された寄稿記事のなかで、同委員長が1996年に定められた通信法(Telecommunications Act of 1996)のなかにある第706条(Section 706)をつかって、FCCの監督権限をウェブサービス事業者にまで拡げようとしている可能性があるとする懸念を示している。
【参照情報】
・Amazon, Netflix and tech giants defend net neutrality in letter to FCC - GigaOM
・Huge coalition led by Amazon, Microsoft, and others take a stand against FCC on net neutrality - The Verge
・What is network neutrality? - Vox
・Comcast-TWC Deal Opens Door for Net Neutrality - WSJ
・Netflix opposes Comcast-TWC merger over 'anticompetitive' concerns - The Verge
・It's here: FCC adopts net neutrality (lite) - Ars Technica
・Federal appeals court strikes down net neutrality rules - Washington Post
・Meetup, Kickstarter and Tumblr head to D.C. to save net neutrality - GigaOM
・Who's fighting to save the internet now? - The Verge
・FCC commissioner implores colleagues to take time on net neutrality - The Verge
・FCC's grab for new regulatory power could go beyond broadband providers - The Hill
・FCC commissioner says FCC "invented" new authority to regulate Internet - Ars Technica
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