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TDDとFDDのデュアルモードトライバンドを強みとする中国移動香港のLTEを試す

2014.05.08

Updated by Kazuteru Tamura on May 8, 2014, 11:30 am JST

▼深水埗にある中国移動香港の販売店。
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中国移動香港(China Mobile Hong Kong)はTDDとFDDの両方でLTEを提供している数少ない移動体通信事業者である。現状、世界的にLTEサービスはFDDのみが主流であり、TDDのみもしくはTDDとFDDの両方でLTEサービスを提供する移動体通信事業者は20社にも満たないくらいに少ない。一般的に、LTEサービスを提供する移動体通信事業者は、FDDやTDDというような技術的なワードを前面に出してマーケティングに使うことは少ないが、中国移動香港はTDDとFDDで雙模三頻の4Gネットワークを強みとしている。雙模三頻はデュアルモードトライバンドを意味しており、デュアルモードはTDDとFDDの2方式、トライバンドは使用している3つの周波数帯を示す。3つの周波数帯はTDDが2.3GHz帯(Band 40)、FDDが1.8GHz帯(Band 3)と2.6GHz帯(Band 7)である。香港ではFDDの1.8GHz帯と2.6GHz帯でLTEを提供する移動体通信事業者は他にも存在するが、中国移動香港の強みはそれにTDDの2.3GHz帯が加わったことである。

▼TDDとFDDで「デュアルモードトライバンド」の4Gを提供することをアピールしている。TDDとFDDのデュアルモードで提供するのは「世界初」かつ「香港唯一」である。
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中国移動香港はLTEを使えるプリペイドSIMを提供しており、香港国際空港や街中の屋台などで購入することができる。今回は中国移動香港のプリペイドSIMを購入してデュアルモードトライバンドの実力を試してみた。香港ではTDD/FDD-LTEに対応したInFocus IN810にSIMカードを挿入し、接続中の周波数帯を確認しながら使用した。InFocus IN810は中国移動香港でも正規に取り扱っており、中国移動香港が提供する全ての周波数帯は勿論のこと、計6バンドのLTEに対応している。

香港には羅湖口岸から入ったのであるが、香港に入った途端に2.3GHz帯に接続されるのを確認できた。その後も2.3GHz帯に接続されることが多くなっていた。他の端末を利用してFDDの1.8GHz帯もしくは2.6GHz帯の電波も入ることを確認しているため、優先して2.3GHz帯に接続されていたと考えられる。しかし、移動中や地下鉄内ではFDDに接続されることもあり、特に屋内では1.8GHz帯に接続されることが多かった。2.6GHz帯や2.3GHz帯は周波数帯が高いために障害物の裏や屋内には弱く、より低い周波数帯の1.8GHz帯に接続されることが多かったものと思われる。尚、3Gに落ちることは非常に稀で、2Gに落ちる場面には遭遇しなかった。

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InFocus IN810はLTE UE Category 3に対応するため、通信速度の理論値はTDDで下り最大68Mbps/上り最大17Mbps、FDDで下り最大100Mbps/上り最大50Mbpsとなる。理論値はFDDの方が速いために、実測値もFDDの方が速くなる傾向であったが、理論値に対する実測値の割合を見るとTDDの方が理論値に近く、実測値の振れ幅が少なくなっている。現状はTDDに対応した端末が少なく、帯域が空いているために安定して速度が出ていたと考えられる。これはデュアルモードトライバンドの強みと言えるだろう。

ただ、この恩恵を受けるのはTDDを使うユーザだけではない。TDDに対応する端末が優先的にTDDに接続することでそれだけFDDが空くため、実はFDDのユーザも恩恵を受けることになる。結局は広い帯域幅で提供することが、より高品質なサービスの提供を可能とする。

▼InFocus IN810で接続中の周波数帯を確認する。Band 40であるため、TDDの2.3GHz帯であることが分かる。
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TDDのエリアを確認するために、Yulong Coolpad 8720Lでも試してみることにした。Yulong Coolpad 8720LはFDDには非対応であるため、LTEに接続されれば確実にTDDの2.3GHz帯となる。尚、3GはW-CDMAに非対応であるため、LTEが圏外であれば2GのGSMに落ちる。FDDのLTEが入るような場所でも2Gに落ちることはしばしばあり、また香港国際空港のような主要施設でも2Gに落ちることが多かった。FDDが入る場所でTDDが入らない場所は少なくなく、TDDだけで見るとエリアには不安が残るところである。そのため、中国移動香港でLTEを使うのであれば、TDDとFDDの両方に対応した端末で使いたいところである。

Yulong Coolpad 8720LはLTE UE Category 4に対応しており、理論値は下り最大112Mbps/上り最大17Mbpsとなるため、通信速度の測定も実施しておいた。下りは最高値が76.36Mbpsを記録し、LTE UE Category 3の理論値を超えていることが分かる。やはり、TDDは空いているので速度が出やすいと考えられる。

▼中国移動香港のLTEに接続したYulong Coolpad 8720L。
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▼Yulong Coolpad 8720Lで通信速度を測定。下りは76Mbpsを超えることもあった。
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また、1.8GHz帯のみで提供する数碼通(SmarTone)のLTEも試してみた。エリアは中国移動香港と比べて遜色ないものの、速度は全体的に中国移動香港よりも劣っていた。シングルバンドでも帯域幅が多い場合もあるので、必ずしも周波数帯が多ければ帯域幅も多くなるとは限らないし、加入者数も加味して判断しなければならないが、中国移動香港の場合は各周波数帯の帯域幅が少なくなく、数碼通より快適で安定したLTEサービスを提供できていたことは事実である。中国移動香港のデュアルモードトライバンドは強みであることは確かであり、それをマーケティングに活用するのは十分に納得できた。今後は、TDDに対応した端末も急増すると見込んでおり、その際にネットワークにどのような変化が起こるのか注視しておきたいところである。

▼旺角で通信速度の測定を行う。左のGoogle Nexus 5は数碼通のLTEでFDDの1.8GHz帯に接続、右のInFocus IN810は中国移動香港のLTEでTDDの2.3GHz帯に接続。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。