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中国3キャリアがTD-LTEを展開 - 格安の4Gスマートフォンも続々登場

2014.05.27

Updated by Kazuteru Tamura on May 27, 2014, 18:00 pm UTC

中国では中国移動(China Mobile)、中国電信(China Telecom)、中国聯通(China Unicom)の3社が4GとしてTD-LTE方式によるサービスを提供している。2013年12月18日に中国移動が開始したのを皮切りに、中国電信が2014年2月14日、中国聯通が2014年3月18日よりTD-LTEの商用サービスを開始している。これで中国の移動体通信事業者は3社すべてがTD-LTEの商用サービスを展開していることになる。3社のTD-LTEが揃ったところで中国に赴き、TD-LTEに対応した端末やネットワークの展開状況が見られたので、その模様をお伝えする。

▼4Gを大々的に展開する中国移動。中国国内ではいたるところで4Gの看板も見られた。和(and)は中国移動のブランドである。
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多彩なラインナップの中国移動

中国では最初にTD-LTEを開始した中国移動は正式なサービスの開始前からTD-LTEに対応した端末を販売しており、スマートフォンから各種データ通信専用端末まで多彩なラインナップを用意している。4Gの看板を地下鉄などいたるところに掲げて積極的にマーケティングを展開している。

スマートフォンはSamsung Electronics製のGALAXY Note3 (SM-N9008V)やGALAXY S5 (SM-G9008V)、Sony Mobile Communications製のXperia Z2 (L50t)など、各メーカーがフラッグシップとしてグローバルで展開するハイエンドスマートフォンを中国移動向けにローカライズして販売する一方で、Yulong Computer Telecommunication Scientific製のCoolpad 8702やCoolpad 8705といった定価が1000元を切る価格のローエンドスマートフォンも販売してラインナップに厚みを持たせている。他に1000元を切るような格安ではないものの1000元台に設定された安価なスマートフォンが豊富に用意されている。中国移動が正規に取り扱っているわけではないが、グローバル展開するメーカーや中国市場のみで展開するメーカーなど、複数のメーカーが独自に中国移動のTD-LTEに対応したスマートフォンを投入しており、中国移動のTD-LTEを使えるスマートフォンは中国移動のラインナップ以外にも多く存在しているのである。

そして、中国移動のラインナップといえばApple製のiPhone 5sとiPhone 5cは無視できないだろう。中国移動が販売するiPhone 5sとiPhone 5cはTD-LTEに対応しており、中国移動のTD-LTEで使用することが可能で、中国移動の大きな強みとなっている。日本の販売店ではiPhoneが目立つ位置に陣取る光景をしばしば目にすることができるが、その光景は中国でも見られた。深圳市内のとある中国移動の販売店では入口に近い大きなテーブルにiPhoneを展示し、奥のテーブルにその他のTD-LTE対応スマートフォンを展示する様子が見られた。Apple製の端末を扱うには厳しい条件があるとされており、それに従って展示している可能性が高いが、中国移動がiPhoneを大きく扱っていることは確かである。実際に、TD-LTE対応スマートフォンの中ではiPhoneが好調の結果を残しているようで、中国移動としては大きな武器になっているに違いない。

中国が国策でTDDを推進していることもあり、TDDといえば中国をイメージすることも多いかもしれないが、中国の移動体通信事業者でFDD-LTEを提供せずにTD-LTEのみで展開する計画なのは中国移動のみなのである。

TD-LTEについては、中国移動が1.9GHz帯、2.3GHz帯、2.6GHz帯の周波数帯で計130MHz幅、中国電信が2.3GHz帯と2.6GHz帯の周波数帯で計40MHz幅、中国聯通が2.3GHz帯と2.6GHz帯の周波数帯で計40MHz幅を保有しており、TD-LTE用の帯域としては中国移動が他社と比べものにならないくらい多く保有している。中国移動は初めから国策で推進するTD-LTEのみを提供するする計画を示していたため、多くの帯域を獲得できたのかもしれない。中国のみならず世界的にみても加入者が最も多い移動体通信事業者であり、またFDD-LTE用の帯域を割り当てる必要がないため、それだけTD-LTE用に多くの帯域を割り当てられたと考えることもできる。

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一方で、中国電信と中国聯通はFDD-LTEを提供する意向を示していたが、先にTD-LTEを提供することになった。国策でTDDを推進する中国は、まずTD-LTEを提供することを義務化してTD-LTEのライセンスのみを交付したため、FDD-LTEを提供したい2社もTD-LTEを提供することになった。

3社ともTD-LTE用として複数の周波数帯を保有しているが、TD-LTEのサービス開始時点では中国移動が1.9GHz帯と2.3GHz帯と2.6GHz帯の一部、中国電信と中国聯通が2.6GHz帯のみで提供しており、未使用の帯域は後から拡張する予定である。中国移動は2.6GHz帯のエリアが限定的となっているが、2.6GHz帯に対応した新しい基地局も増やして拡大していくという。ライセンスの交付はまだであるが、中国電信と中国聯通にはFDD-LTEの周波数帯も割り当てられており、2014年前半中にライセンスが交付されるとも言われている。

▼中国でTD-LTE用に割り当て済みの周波数範囲
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▼中国でFDD-LTE用に割り当て済みの周波数範囲
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▼深圳市内にある中国移動の販売店。iPhoneが目立つ位置に展示されている。
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▼中国移動向けのGALAXY Note3 (SM-N9008V)で中国移動のTD-LTEに接続。中国移動のTD-LTE対応スマートフォンは一部を除いて音声通話時のLTEと旧システムの連携方式にSGLTEを採用する。TD-LTEでのデータ通信とGSMでの音声通話を同時に行うことが可能で、データ通信用のTD-LTEと音声通話用のGSMを同時に待ち受ける。そのため、2つのアンテナピクトが並んで表示される。なお、CSFBを採用するスマートフォンであればアンテナピクトは1つとなる。
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TD-LTEに消極的な中国電信

中国で2番目にTD-LTEを開始した中国電信は中国移動とは対照的である。4Gの大きな看板こそ見られるが、販売店に入るとTD-LTE端末は店内の隅にひっそりと置かれている程度である。中国移動や中国聯通の販売店ではSIMカードが挿入されてTD-LTEを体験できる状態で展示するところもあったが、中国電信の販売店ではTD-LTEを体験できるような状態ではなく、やる気がないという印象を持たざるを得ない状況であった。

中国電信のTD-LTE端末のラインナップはUSBモデム型やモバイルWi-Fiルータといったデータ通信専用端末のみが用意されており、いまだにスマートフォンは用意されていない。中国電信のTD-LTEに対応したスマートフォンを独自で販売するメーカーもあるが、それらは中国電信が正規に販売しているものではない。スマートフォンがなく数機種のデータ通信専用端末が用意されるにとどまる現状のラインナップでは盛り上がるわけもないだろう。

TD-LTEには消極的な姿勢であることが見て取れるが、4G自体に消極的なわけではない。初めから予定していたFDD-LTEを早く始めようとしているのである。FDD-LTEを一刻でも早く提供したいと望んでいることは、中国電信が早期からFDD-LTEのネットワークを運用していることからも明白である。中国の各地で2013年の半ばからFDD-LTEのネットワークを展開しており、2013年末には早くも主要都市の主要なエリアはカバーしたという。TD-LTEのサービス開始前からFDD-LTEのエリアを充実させていることになる。中国電信はFDD-LTEに注力する方針であるために、TD-LTEはあまり積極的な展開はしたくないのだろう。余談ではあるが、中国電信の4Gを契約したSIMを中国電信のFDD-LTEの周波数帯に対応したスマートフォンに挿入すると、FDD-LTEを使えてしまうことも確認されている。4Gを契約した場合、TD-LTEとFDD-LTEは特に区別していないものと思われる。

▼中国電信4Gの看板。立派な看板はよく見かけたが、販売現場では4Gのアピールが弱く感じた。
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▼中国電信の販売店。TD-LTE端末はデータ通信専用端末のみが用意されており、販売店における展示は寂しい。
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中国聯通のFDD-LTEにも対応したスマートフォンを投入する中国聯通

中国では最後にTD-LTEを開始した中国聯通は中国移動ほどではないものの、4Gについてはそれなりに積極的な展開を見せていた。特に販売店ではTD-LTEを体験できるようにするために、わざわざTD-LTEの屋内基地局を設置し、通信速度を測定するためのアプリケーションをインストールしたTD-LTE対応スマートフォンを置いていたことが印象的である。

通信速度を測定してくださいと言わんばかりの展示をしていたので、試しに測定してみたところ、下りは90Mbps以上を記録することも多かった。意図的に速度が出やすく作り上げられた環境ではあるため、通信速度についてはあまり参考にならないが、これだけ速度を出る環境を用意するということは、TD-LTEに対する意気込みが感じられる。ただ、中国聯通は中国電信と同様にFDD-LTEも提供する予定で、中国国内の一部ではFDD-LTEのネットワークの展開も開始している。中国聯通も当初はFDD-LTEを提供する意向を示しており、将来的にはFDD-LTEに注力する可能性もある。

中国聯通はTD-LTEに対応した端末のラインナップとして複数のスマートフォンを用意している。当初はハイスペックなスマートフォンのみを用意していたが、TCL製のS830UやTianyu製のK-Touch Touch 3Wのように1000元台もしくは1000元未満の格安なスマートフォンも揃えている。中国移動にはまだまだ及ばないが、ラインナップを徐々に拡大させている。

特筆すべき点は、低価格なスマートフォンもFDD-LTEに対応させている点である。中国移動の場合は1000元前後の安価なTD-LTE対応スマートフォンは基本的に国際ローミング用のFDD-LTEは非対応としているが、中国聯通は1000元前後の安価なスマートフォンを含めたすべてのTD-LTE対応スマートフォンがFDD-LTEにも対応している。

安価なスマートフォンまでもFDD-LTEに対応させた背景としては、将来的に中国聯通のFDD-LTEも使えるためにする意図があるのではと推測している。機種によって対応するFDD-LTEの周波数帯は異なるのであるが、少なくとも中国聯通が提供する予定の周波数帯にはすべてのTD-LTE対応スマートフォンが対応しているのである。中国聯通が提供する予定のFDD-LTEは世界で最も採用されている周波数帯と同じとはいえ、FDD-LTEに対応することでコストが上がることには間違いない。それでも安価なスマートフォンでさえも対応させているのである。名目上は国際ローミング用としながらも、やはり将来的に中国聯通のFDD-LTEでも使えるようにすることを視野に入れているのではないだろうか。

▼中国聯通4Gの看板。中国聯通はHSPA+も4Gと呼んでいる場合があるので、注意が必要である。
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▼深圳市内でSony Mobile Communications製のXperia Z1 (L39u)を用いて中国聯通のTD-LTEの通信速度を測定したところ、下りは90Mbps以上を記録した。速度が出る条件が整っている環境とはいえ、販売現場でこれだけ速度が出るのを見せつけられたら印象が悪くなることはないだろう。
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各社の方向性が明らかに

中国の3社がTD-LTEを開始したところで、各社の方向性が徐々に表面化している。TD-LTE一本の中国移動はスマートフォンからデータ通信専用端末まで多彩なTD-LTE対応端末のラインナップを用意しており、選択肢が多すぎて困るくらいである。TD-LTEのみを提供するのでTD-LTEに注力するしかないのであるが、TD-LTEに対する中国移動の本気度が見て取れるだろう。仕方なくTD-LTEを開始したといっても差支えないような状態の中国電信や中国聯通は、TD-LTEのサービス開始前からFDD-LTEを見据えた動きを見せており、中国聯通はまだしも中国電信のTD-LTEに対する消極的な姿勢は顕著であった。端末ラインナップやネットワークの展開状況からも各社の方針や思惑が明らかになりつつある。中国の移動体通信市場は世界最大級の市場でもあるだけに、今後の動向から目が離せない。

▼FDD-LTEのみに対応したスマートフォンでネットワークを検索すると、中国聯通と中国電信のFDD-LTEを検出した。中国電信はPLMN番号の46011で表示されている。ネットワークを検出することからFDD-LTEのネットワークを展開済みであることが分かる。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。