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インドネシア、高級スマートフォンに「ぜいたく税」を検討

2014.05.16

Updated by Hitoshi Sato on May 16, 2014, 01:51 am JST

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インドネシア政府は現在、高級携帯電話、スマートフォンを対象に課税しようという動きがある。小売価格が500万ルピア(約430ドル)以上のスマートフォンに対して、20%の課税をすることを検討している。いわゆる「ぜいたく税」である。

実施されれば、「iPhone 5S」の購入価格は、アジアではインドネシアが最も高くなってしまう。インドネシア携帯電話協会は、同国政府が計画している高級機種を対象とする課税について、実施された場合は国内のスマートフォン販売が最大50%減少する可能性があると、課税による業界へのマイナス影響の懸念を示した。

インドネシア政府の課税の狙いは国内ブランドの保護である。インドネシアには国産ブランドであるMITO Mobile、Evercross、Nexianなどが存在している。これらは日本では馴染みがないだろうが、現地ではあちこちでビルボードなどを見かけ、認知度も高い。それでもサムスンやソニーのようなグローバルメーカーの勢いは確かに強い。

インドネシア産業省のBudi Darmadiインドネシア産業省総局長によると、2014年の国産携帯電話機台数は500~600万と見込まれる。同省では、国産携帯電話機が国内需要の20%に対応できることを目指しており、2013年の5%から成長することを期待している。 2013年の携帯電話機需要は6,000万であったが、95%(約5,700万台)は輸入品であった。このように経常赤字の原因となっている輸入急増を抑制する目的もあると見られる。課税案は2014年10月の新政権発足後に採決にかけられる見通しである。

課税の対象になるのは、正規なルートで販売される新品の端末であることから、「ブラックマーケットの違法スマートフォン」が大量に流通される恐れもある。実際、現在インドネシアでは大量の中古端末が販売されている。多くの若者は中古端末を購入している。

今回検討されている課税対象は500万ルピア(約430ドル)以上のハイエンド端末である。インドネシアで一番多く出回っているのは、150~300ドルのミドルエンド端末であること、中古端末の需要が高いことから、それほど今回の「ぜいたく税」の影響を受ける人は少ないかもしれない。

さらに、国内携帯電話メーカーの保護を目的としていても、海外のメーカーが安価な端末を輸入した場合は、そちらが選ばれる可能性が高い。インドネシアのスマートフォン市場は今後も成長が期待されているため、国内地場メーカーだけでなく、海外のメーカーも虎視眈々と狙っている。最近では中国のOPPOが約330ドルで「OPPO Yoyo」というスマートフォンをインドネシアで販売開始した。高級な機種に課税することで、本当に国内メーカーの保護になるのだろうか。引き続き注目である。

【参照情報】
・Indonesia Smartphone Sales Could Fall 50 Percent Under Tax Plan

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。