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CGM/UGMともう言わない方がいいのかも:ユニクロ炎上ケースに思う事

2014.05.21

Updated by Satoshi Watanabe on May 21, 2014, 23:51 pm JST

まずは、ざっと起きたことの簡単な確認。ネットで一種のお祭りみたいになっていた空気感も含めるとねとらぼの記事が上手く雰囲気を拾えてるようなので経緯は記事の方に。
■ いまどきそういやだいぶ無くなってきた展開
CGM、という言葉がまだ現役だったころ(最近はあまり出くわさない言葉になった)、この手の規約の議論やすったもんだは定期的に起きるものだったが、このところめっきり減っていたので、そういえば久しぶりのこの手の炎上事案かもしれぬ、というのが初期所感であった。
Web2.0という言葉がきらきらしたフレーズとしてもてはやされていた頃と比べると、Blog的なものをひとつとってもYahooニュースの個人枠があり、ハフィントンポストにも個人枠的なものがあり、Naverまとめ的なものもあちこちにあるなど、ユーザーが公式、あるいは準公式的なコンテンツに直接関わるとの場面はもうまったく珍しいものではなくなっている。そうこう言っているとOCNのブログサービス「ブログ人」がサービス終了の予定との報がちょうど出ていた。何かが綺麗に一周回った感がする。
一周回る間に起きたこととして、ユーザーの一般理解、リテラシー的なものも一周していたようで、今回のユニクロの規約の話が出回り始めると、「あー、これは確かにダメだ」「うん、ダメだね」とあっさりコンセンサスが成立し、且つ事後対応もちょっと下手だったんじゃない?とのところまでが割と普通に議論されていた。いわば、秩序だった炎上とでもいう状況になっており、あちこち野放図に議論が派生して収拾がつかないのを炎上と定義するのなら、むしろこれは炎上と呼べないのでは?と思わせるくらいである。
■ オープン化した企業に必要なスキルセット
ユニクロ/ファーストリテイリングについて何かモノ申したり是非論を連ねたりするのは本稿の意図ではない。あちこちの反応を見つつ考えていたのは、
・ユーザー参加的なスキームを採用するのは別にもう珍しい訳ではなく、ユーザー側もそれなりに弁えている
・ユーザー参加で炎上するしないを議論するような段階状況ではない。炎上すれば失敗というのでも炎上しなかったから成功、というのでもない。(炎上はしなかったけれどもだから何?という試みもたくさんある)
・一方的に巻き上げるだけの企業は歓迎されないし、よほど強いビジネスポジションが無い限りは相手にして貰えない。またポジションの強さに依存していただけの場合は、ポジション揺らぐとそっぽ向かれる。
・また、不必要に暴れるユーザーも一般には好意的に受け入れられない(ネトウヨ的な構図や議論はここでは割愛する)。主張は提言はともかく、過度な我儘は企業が炎上を恐れて穏便に対応しようとしてるところで、周囲のユーザーはそっぽ向いてたりするのはもう珍しくない。
というところである。
もちろん、まったく問題が起きないのかと言われたらそんなことはなく、炎上と呼ぶのが適切かどうかは分からないが諍いに近い議論は度々起こる。しかし、そういった炎上的事象を起こしたから、その企業は駄目である、という短絡的な理解は必ずしもされない。無碍に扱ったのか、独善的に振る舞ったのか。そういったところが気にされているのであり、本気でフェアにやろうとしていたら途中手続きで少々下手なところがあっても、根本的なダメ出しが行われる訳ではない。傾向として、ユーザーのリテラシーはそこまで育ってきている。
(むろん、全員がそうとは言えないので難しい問題を残していることも同時に事実である)
という風に、最近の各所での議題は、「どうやって炎上を起こさないか」ではなく「どうやってちゃんとユーザーに向き合い、彼らの力を引き出すか」及び「出た成果についての取り扱い、取決めを定めるのにどのような法制あるいは社会通念を参照するといいのか(みんなが納得できる落としどころってどこなの?)」という創造的な方向に向かっているように見える。
ハッカソン的なものになると、ユーザーは企業のマーケティングメッセージを代理拡販することを期待されてるのでもないし、ある程度大き目の範囲は定めるにしても、決まりきった枠のなかで受動的な役割に終始するのではなく、むしろ企業に主体的に提案をしてきてください、と平等な立場が期待されている。顧客というよりは取引先にむしろ近いか。この立場の平等さは、扱い慣れない企業には炎上対応などよりも遥かに難しいハードルであるのは、各所の議論や様子を伺っていても分かる。下請け=叩くもの、お客さん=買っていく人、との回路しかない企業からすると事案として内部検討を進めることさえ難事であろう。
このあたりは、いわゆるビジネスモデル設計でも、業務プロセス定義でも、広告/広報的なコミュニケーションデザイン設計でもない、新しいバランス感覚とコミュニケーションプロトコルが要されている。先行例として挙げられるのは、ソフトウェア技術の世界でのデベロッパーコミュニティであろうか。ソーシャルマーケティングスキルというのともまた違うように思える。前回記事で紹介したIAMAS小林先生のメイカソンガイドラインは知財面についての記述が多いが(理由はそこが揉めやすいポイントだからに他ならない)、趣旨的にはユーザーとの新しい向き合い方の心構えである。ご本人からも伺ったので間違いない。
プロシューマー、との手垢のついた表現を持ち出すのがいいかはともかく、少なくともCGM/UGMという言葉は(適合する場面ではともかくとして)そろそろ卒業してもいいのかもしれない。

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渡辺 聡(わたなべ・さとし)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。

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