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モンゴルの携帯電話事情(1) - 日韓との繋がりが深いキャリアも

2014.06.17

Updated by Kazuteru Tamura on June 17, 2014, 18:00 pm JST

モンゴルの移動体通信事業者にはMobiCom、Skytel、Unitel、G-Mobileの4社が存在しており、加入者のシェアはMobiCom、Skytel、Unitel、G-Mobileの順となっている。モンゴル自体が日本や韓国と密接な関係にある国だが、移動体通信においても。4社のうち3社が日本や韓国の企業が出資または協業した移動体通信事業者である。今回はそんなモンゴルの移動体通信事業者を紹介する。

KDDIや住友商事が出資するMobiCom

MobiComはウランバートルに本社を置く企業で、1996年3月18日に設立されている。日本との関わりが最も深い移動体通信事業者である。日本の企業であるKDDIと住友商事が出資し、モンゴルでは唯一の日本企業が出資する移動体通信事業者となっている。KDDIと住友商事に加えて、モンゴルのNewComも共同で出資しているが、出資比率の過半数が日本企業となっている。

モンゴルで初めて設立された移動体通信事業者であり、加入者のシェアは他3社よりも圧倒的に高い。通信方式はW-CDMA/GSM方式で提供している。移動体通信事業の開始当初はGSM方式でサービスを提供し、後にW-CDMA方式を導入している。パケット通信規格は2009年よりW-CDMA方式を発展させたHSPA方式を3Gとして提供しており、その後はHSPA+に拡張して3.5Gとして提供している。モンゴル全土の主要都市を3.5Gの提供エリアとしている。

モンゴル最大の移動体通信事業者であるだけに、ウランバートル市内では多くの販売店が見られた。モンゴル唯一の携帯電話専門ショッピングセンターであるTEDY mobile phone shopping centerの1階には旗艦販売店を設置している。Apple iPhoneシリーズやSamsung GALAXY S5を主力として扱うが、高価であるために売れ行きはあまり芳しくないようである。

▼TEDY mobile phone shopping centerの1階に入るMobiComの旗艦販売店。屋上には基地局も設置されている。
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▼MobiComの旗艦販売店が入居するTEDY mobile phone shopping centerのすぐ隣にはMobiComとAppleの巨大な広告も見られる。
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▼MobiComの旗艦販売店には一部メーカーの販売店も入る。TEDY mobile phone shopping centerはモンゴルの移動体通信業界を代表するような場所であり、訪問した日は偶然にもメディアの撮影が入っていた。
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韓国企業2社の合弁で設立されたSkytel

Skytelはウランバートルに本社を置き、1999年5月に設立された韓国企業2社の合弁企業である。設立時は韓国のSK TelecomとTaihan Electric Wireの2社が出資していた。

2011年12月にはモンゴル企業グループが韓国企業から株式を取得し、100%モンゴル企業となった。そのため、現在はSK Telecom、Taihan Electric WireともにSkytelの事業からは退いている。SK TelecomはSkytelの設立時に通信設備などを供給しており、Skytelの設立や事業運営に大きく貢献した。

2012年からは中国のZTEが開発した通信設備に置き換えを開始している。ZTEの通信設備はアップグレードでLTE方式の通信に対応することが可能であり、Skytelは次の通信規格はLTE方式を採用することが確実となっている。

移動体通信事業は2001年2月12日から開始している。通信方式はW-CDMA/CDMA2000方式を採用する。パケット通信規格は移動体通信事業の開始当初はIS-95B方式を採用していた。2004年にはEV-DO Rev.A方式にアップグレードしており、2012年半ばにはウランバートル市やすべての県の主要都市をEV-DO Rev.A方式の提供エリアに拡大している。一方で、W-CDMA方式を発展させたパケット通信規格であるHSPA+方式も並行して導入しており、下り最大21Mbpsの3.75Gとして2010年より開始している。

Skytelの販売店はウランバートル市内において多くの小さな店舗が見られた。Huawei TechnologiesやLG Electronicsの低価格なスマートフォンをメインとして展示している。

▼Skytelの販売店。一見すると一般の家のような外観であるが、看板を見ると携帯電話の販売店と分かるだろう。
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▼Huawei TechnologiesやLG Electronicsのスマートフォンをメインとして取り扱っている。モンゴルではミッドレンジ以下の低価格なスマートフォンの需要が高い。
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▼すべての店舗に設置しているわけではないが、充電スペースを設けている店舗も少なくない。
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韓国企業が出資したUnitel

Unitelは2001年にモンゴルのMCSComによって設立された企業で、ウランバートルに本社を置く。韓国のTaihan Electric Wireが出資をしていたが、後にモンゴルのMCSComに売却されている。2010年に外資系の出資がなくなり、100%モンゴル企業となっている。

2011年にはUnitelやUnitelを設立したMSCComなど複数の企業がUnitelグループを形成した。移動体通信事業は2006年6月26日よりGSM方式でサービスの提供を開始し、2009年にW-CDMA方式を導入している。パケット通信規格はW-CDMA方式の導入と同時にHSDPA方式を開始しており、後にHSPA+方式まで拡張している。

ウランバートル市内では販売店が多く、店内にはSamsung Electronicsのスマートフォンやタブレットを展示している場合が多い。Samsung GALAXY S5を主力としてTVCMを放映するなどの積極的なマーケティングを実施しているが、モンゴルで需要が高いローエンドのスマートフォンも揃えている。

▼Peace Avenue沿いにあるUnitelの販売店。UnitelのTVCMの撮影に使われることもある。
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▼Samsung Electronicsのスマートフォンやタブレットが並べられており、手に取って試すことができる。TVCMの撮影に使われる店舗だけあって、お洒落な内装に仕上げられている。
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▼ウランバートル市内のCentral Tower。Unitelグループ各社の本社が入る。
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純粋なモンゴル企業のG-Mobile

G-Mobileはモンゴルで最も新しい移動体通信事業者で、ウランバートルに本社を置く。設立時から純粋なモンゴル企業で、モンゴルの移動体通信事業者では唯一の外資が入ったことがない企業である。

2006年4月に設立されており、2008年より3Gとして450MHz帯(Band Class 5)のCDMA2000方式でサービスを開始している。並行してW-CDMA方式によるサービスも提供する。パケット通信規格は2008年の時点でCDMA2000方式を発展させたEV-DO方式を導入しており、2012年以降にはW-CDMA方式を発展させた下り最大21MbpsのHSPA+方式や下り最大42MbpsのDC-HSDPA方式をそれぞれ3.75Gや3.99Gとして導入している。ただ、DC-HSDPA方式に非対応の端末でも3.99Gを名乗っていることがある。

G-Mobileは車載端末向けのテレビ放送やラジオ放送も提供しており、これらの地上デジタル放送には韓国で開発された地上波DMBを採用する。地上波DMBは韓国では多くのスマートフォンが対応しており、韓国のスマートフォンをモンゴルに持ち込むとG-Mobileが提供する地上デジタル放送を受信することができる。資本関係では韓国とは縁がないが、技術的には韓国の技術を導入しているのである。

ウランバートル市内では販売店が少なく、モンゴル全体で見ても販売店は少ないと思われる。モンゴルの移動体通信事業者では唯一の自社ブランドでスマートフォンを展開する移動体通信事業者でもあり、販売店ではG-Mobileブランドのスマートフォンを展示するか、それのポスターを掲載していることが多い。G-Mobileブランドのスマートフォンは価格を抑えられているが、それでも安価な中古品が主流のモンゴルでは高いため、あまり売れ行きは伸びていない。

▼G-Mobileの販売店。他3社と比べて店舗数は少ない。
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▼販売店にはG-Mobileブランドのスマートフォンなどが展示されている。左がHisense製でG-MobileブランドのG-Mobile U2。右はPantech Pocket (P9060)である。
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▼G-Mobileが提供する地上波DMBを韓国KT向けのスマートフォンLG Optimus V: II (LG-F200K)で受信。偶然にもMobiComとSamsung Electronicsが放映しているSamsung GALAXY S5のTVCMが流れた。
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LTEサービスはまだ開始せず

LTE方式のサービスを提供する国や地域は100を超えたが、モンゴルにおいてはまだLTE方式のサービスを開始していない。

モンゴルではMongolia Telecomが最初にLTE方式のサービスを開始する見通しとされている。Mongolia Telecomはモンゴル最大の固定電話事業者で、1995年に民営化されている。韓国のKTが2015年まで株式の40%を保有することになっており、移動体通信だけではなく固定通信でも韓国との関わり深くなっている。このKTがLTE方式に関する技術を提供する予定である。

Mongolia Telecomは移動体通信サービスを提供していないため、LTE方式の通信は固定回線のバックボーンとして使用される見通しである。2015年中にLTE方式のサービスを開始する予定とされているが、それ以上の具体的な時期は明らかにされていない。

日韓と密接な関係

以上のように移動体通信事業者のMobiCom、Skytel、Unitel、G-Mobile、そして固定通信事業者のMongolia Telecomは、いずれも何らかの形で日本または韓国との関わりがある。モンゴルには日本や韓国にちなんだ名前が与えられた道路や区域が数多くあり、モンゴルに滞在するだけで日本や韓国と密接な関係にあることを感じ取れるが、モンゴルの通信業界においても両国との関係が深いことが分かる。

モンゴルに対しては日本や韓国による多方面からの援助が提供されており、通信関連における技術面での貢献度も高いはずである。LTE方式を含んだ次世代通信方式に関する技術的援助の実施も確実と思われ、モンゴルの移動体通信業界の発展に期待したいところである。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。