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ブルネイの携帯電話事情(1) - 2キャリアが携帯電話サービスを展開

2014.08.22

Updated by Kazuteru Tamura on August 22, 2014, 17:23 pm UTC

黄金の国とも言われるブルネイ・ダルサラーム国(以下、ブルネイ)。カリマンタン島の北部に位置しており、面積は三重県と同じくらいの小さな国である。2014年8月現在は日本からの直行便がなく、あまり馴染みがない国かもしれないが、その携帯電話事情を現地で視察してきたので紹介する。

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ブルネイの移動体通信事業者

ブルネイには2社の移動体通信事業者が存在する。シェアが首位のDST Communications Sdn Bhd (以下、DST)と2位のProgresif Cellular Sdn Bhd (以下、PCSB)の2社であり、移動体通信事業者のネットワークに割り当てられるPLMN番号(Public Land Mobile Network Code)はDSTが528-11、PCSBが528-02となる。頭3桁の528はブルネイのMCC番号(Mobile Country Code/国または地域別に与えられる番号)である。なお、ブルネイではJabatan Telekom Brunei (以下、JTB)にPLMN番号として528-01が付与されているが、JTBが移動体通信サービスを提供した実績はない。

LTEサービスも提供するDST

DSTはブルネイで最初に移動体通信サービスを開始した移動体通信事業者であり、DSTグループに属している。DSTグループはDatastream Technology Sdn Bhdを持株会社とし、グループの主要な事業子会社がDSTことDST Communications Sdn Bhdとなる。公式にDST Communications Sdn Bhd をDSTと呼称している。設立は1995年で移動体通信サービスは1996年に開始している。

DSTが提供する移動体通信サービスの通信方式はFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式。周波数帯はFDD-LTEが1.8GHz帯(Band 3)、W-CDMA方式が2.1GHz帯(Band I)、GSM方式が900MHz帯となる。1996年よりGSM方式のサービスを開始、2008年5月よりW-CDMA方式のサービスを開始、2013年11月よりLTEサービスを開始している。

LTEサービスをブルネイで提供するのはDSTが初であり、2014年8月現在もDSTのみがLTEサービスを提供している。帯域幅は20MHz幅を使用しており、LTE UE Category 4に対応した端末であれば下り最大150Mbps/上り最大50Mbpsの高速な通信を利用できる。現在、ネットワークはEricssonが構築している。

DSTは端末の販売も手掛けており、Apple iPhone 5s, Apple iPhone 5c, BlackBerry Q10, BlackBerry Z10を取り扱う。また、その他の端末はDSTグループのIntegrated Communications Sdn Bhd が運営するDSTINCOMMを通じて販売している。なお、DSTINCOMMで取り扱う端末はDSTの販売店やDSTINCOMMのオンラインショップにて購入することが可能である。

▼DSTグループのガドン支店。DSTグループは様々な事業を手掛けており、支店にはDSTグループ各社が入る。DSTの販売店も併設している。
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▼ブルネイ国際空港の近くに位置するAirport Mallに入居するDSTの販売店。DSTが販売を手掛けるApple iPhone 5sとApple iPhone 5cの広告が貼られている。
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▼DSTのネットワーク構築を手掛けるEricssonはブルネイ国際空港近くにオフィスを構える。ERICSSON TELECOMMUNICATIONS PTE LTD (Brunei Branch)としてブルネイ国内で業務を手掛けている。
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社名とブランド名を変更して再出発するPCSB

PCSBはB-Mobileとして2005年2月に設立された移動体通信事業者であるが、2014年7月1日にPCSBとして再出発している。

前身のB-Mobileはブルネイの政府機関であるAuthority for Info-communications Technology Industry (AITI)が移動体通信事業の競争力強化などを目的に、Telekom Brunei Berhad (以下、TelBru)とQAF Comserve Sdn Bhdの合弁会社として設立された。なお、TelBruはDarussalam Assets Sdn BhdとBrooketon Sdn Bhdが主要株主となっており、現在のPCSBはDarussalam Assets Sdn Bhdの完全子会社である。2014年6月23日にPCSBがB-Mobileの買収を完了してB-Mobileの事業を引き継ぐことが決定し、2014年7月1日よりブランド名をPCSBとして営業を開始した。B-Mobileは加入者減少やTelBruの経営難など厳しい状況が続いており、それが買収やブランドの変更に繋がった要因になったと思われる。正式社名はProgresif Cellular Sdn Bhdであるが、公式な略称をPCSBとしている。

PCSBの通信方式はW-CDMA方式のみで、周波数帯は2.1GHz帯を使用する。B-Mobile時代を含めても新しく設立された移動体通信事業者であるため、GSM方式は提供していない。

B-Mobile時代は端末の販売も手掛けており、B-Mobileブランドのスマートフォンを投入したこともあったが、PCSBに変わってからは端末の販売を中止しており、SIMカードの販売と端末の販売を完全に分離している。ブルネイでは多数の携帯電話販売店が存在しており、その数は移動体通信事業者の販売店よりも多い。そのため、端末を購入するのには困ることはないはずである。

▼The Mall Cineplexに入居するPCSBの販売店。ブランドは完全にPCSBに変わっている。アルファベットとアラビア文字(ジャウィ文字)で表記されている。
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▼中古携帯電話販売店にはB-Mobile時代にB-Mobileブランドで投入したフィーチャーフォンB-Mobile BOLTが販売されていた。PCSBになってからは端末の販売をしていない。
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AITIがブルネイの通信を所管

ブルネイにおける通信関連は政府機関のAITI(Authority for Info-communications Technology Industry。AiTiと略されることもあるが、公式にはAITIを略称としている)が所管している。AITIは移動体通信事業や端末販売など、移動体通信に関連したことは全面的に管理する。

ブルネイではスマートフォン、フィーチャーフォン、タブレットなど多数の端末が販売されている。技術的な電波関連の認証は実施していないが、端末の販売にはAITIの認可を受ける必要がある。そのためブルネイ国内で販売されている端末の化粧箱にはAITIの認可取得済みを示すシールが貼られている。ブルネイで端末を購入する場合は、AITIのシールが貼られている端末を購入するように心がけたいところである。ブルネイで販売されている端末はすべてが輸入品となっており、認可の業務を円滑に進められるようにするためか、AITIはブルネイ国際空港の近くに所在している。

また、PCSBの前身であるB-Mobileの設立はAITIが大きく関与している。DST独占であったブルネイ国内の移動体通信の競争力強化を狙い、AITIが主導してB-Mobileを設立させた経緯がある。

▼ブルネイ国際空港の近くにあるAITIの案内。アルファベットとアラビア文字で表記されている。
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▼AITIの施設。ブルネイにおける通信に関する業務はここで行われる。
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マレーシアの電波も入るバンダルスリブガワン市内

ブルネイの陸地はマレーシアに囲まれている。首都のバンダルスリブガワンからはマレーシアの国境と直接は接していないが、マレーシアの国境から6km以上も離れたバンダルスリブガワン市内においてマレーシアのモバイルネットワークを捕捉することを確認した。日本のSIMカードをブルネイに持ち込んで自動国際ローミングに設定するとDSTのネットワークでローミングしていたが、手動でマレーシアのモバイルネットワークに固定すると問題なくローミングで使うことができた。

マレーシアから届くモバイルネットワークの信号強度は弱くなく、マレーシアの各移動体通信事業者の提供エリアを確認すると、ブルネイ国内までエリア化している移動体通信事業者も確認できた。バンダルスリブガワンからはマレーシア国境までの直通バスが出ており、ブルネイとマレーシアの両国は人的交流が多い。マレーシアの移動体通信事業者はブルネイに届かないようなエリア設計をしていないのか、それとも意図的に届くようにしているのかは不明であるが、どちらにしろブルネイに入るマレーシア人が国際ローミングを適用せずにマレーシアのモバイルネットワークを使えるのは嬉しいことだろう。

▼バンダルスリブガワン市内でネットワークを検索するとマレーシアのMaxisはW-CDMA/GSM方式、DiGiはGSM方式のみを検出した。なお、社名とブランド名を変更したばかりのPCSBはB-Mobileとして表示されている。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。