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SprintとT-Mobile US アメリカ市場での熾烈な「料金競争」によるユーザー獲得戦争

2014.08.27

Updated by Hitoshi Sato on August 27, 2014, 06:46 am UTC

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Image by Michael Nyika(CC-BY)

2014年8月、ソフトバンクのアメリカ子会社SprintはT-Mobile USの買収を断念した。その両社がユーザー獲得に向けた本格的な「料金競争」に突入しつつある。T-Mobile USはアメリカでは4位の事業者だが、「Un-Carrie戦略」に代表されるように様々なサービスや料金プランを出して、アメリカ市場で物凄く勢いがある(参考:進化するT-Mobile USの「Un-carrier 戦略」)。

「Spritのお客様、T-Mobile USへどうぞ!」T-Mobile USのSprintユーザー争奪に向けた「友人紹介キャンペーン」

T-Mobile USは2014年8月21日、T-Mobile USの既存ユーザーがSprint、AT&T、VerizonからT-Mobile USへ乗り換えを希望する友人を紹介した場合、紹介者である既存ユーザーとT-Mobile USに移行した友人に「データ通信プランを1年間無料にするキャンペーン」を発表した。

リリースのタイトルも「Sprintのお客様を救出してあげよう」(T-Mobile Urges Its Customers to Rescue Beleaguered Sprint Customers)と過激である。

リリース文の出だしも
「Sprintのお客様は苦しんでいる」(Sprint's customers have suffered much.)
で始まっており、内容も、
「Sprintのお客様はアメリカで最も遅いLTEネットワークに耐えている」(They've endured America's slowest nationwide LTE network. )
「見てられない」(It's hard to watch)
「T-Mobile USが、そのようなSprintのお客様に救いの手を差し伸べる」(But now T-Mobile is stepping forward to help.)

と徹底的にSprintを名指しして、同社のお客様を奪いに行く姿勢を表している。

Sprintの「競合と比べて2倍のデータ量」データプラン、「月額60ドルの無制限データプラン」

Sprintはといえば、T-Mobile USがSprintを名指しで宣戦布告するようなリリース文を出す3日前の2014年8月18日、ファミリー向けデータシェアプラン「Sprint Family Share Pack」を発表した。Sprintは「競合他社と同額またはより安価で、2倍のデータ容量を提供する」とのこと。「Sprint Family Share Pack」は月額100ドルで20Gバイトのデータシェア容量、無制限の通話およびテキストメッセージ(SMS)が利用可能で、1家族あたり最大10回線まで対応。SprintのリリースによるとAT&TとVerizonは100ドルで10GBまでとのこと。

また、T-Mobile USが上記のリリースをした同日(8月21日)には、Sprintは月額60ドルで制限なしにデータ通信、通話とテキストメッセージ(SMS)が利用可能な新たなプランを発表した。これはT-Mobile USよりも20ドルも安いため2年間で480ドルお得、T-Mobile USのキャンペーン価格よりも120ドルお得であることをアピールしている。

まだまだ続く「料金競争」とユーザー獲得戦争

Sprintは「2強2弱」のアメリカ市場で戦うには、T-Mobile USを買収して「3強」になりたかったが、当局からの認可を得ることができず、SprintはT-Mobile USの買収を断念した。そのSprintは当面は現在のままで戦っていかなくてはならない。Sprintは現在3位であるが、4位のT-Mobile USの攻勢は激しく、様々なサービスや料金プランを市場に投入して、ユーザーを獲得しており、加入者数ではSprintの背中も見えてきた。Sprintだけがアメリカの主要4通信事業者の中で、加入者の純増、利益で「独り負け」となっている。これからもSprintとT-Mobile USの「料金競争」によるユーザー獲得戦争は続く。もちろんAT&TやVerizonといった「2強」も参戦してくるだろうから、アメリカの通信市場の競争はますます熾烈になっていく。「料金競争」は財務面での「体力勝負」となるから、長期化するとSprintにとっては不利である。Sprintとしては「料金競争」での勝負もさることながら、ユーザーを惹きつけるためのネットワーク、新サービスが求められる。

▼(表1)2014年第1四半期 米国通信事業者 決算比較
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▼(表2)2014年第2四半期 米国通信事業者 決算比較
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(出典:いずれも公開情報を元に筆者作成) ※純増数は携帯電話・ポストペイドのみ

【関連動画】T-Mobile USの広告(AT&Tとの比較広告)

【参照情報】
Sprintのリリース" It's a New Day for Unlimited Data"
Sprintのリリース" It's a New Day for Data for American Consumers"
T-Mobile USのリリース"T-Mobile Urges Its Customers to Rescue Beleaguered Sprint Customers"

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。