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ブルネイの携帯電話事情(3) - iNO MobileやUTOOのスマートフォンも展開

2014.09.05

Updated by Kazuteru Tamura on September 5, 2014, 20:30 pm JST

▼ALCATELのスマートフォンを専門に扱う販売店。スマートフォンやタブレットの実機を展示しており、客が次々と入っては手に取って試している。
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ブルネイ・ダルサラーム国(以下、ブルネイ)は日本からの渡航者が多くなく、スマートフォン事情が報じられる機会はあまりないだろう。実際に足を運んで視察してきたところ、地理的な影響からもブルネイならではのスマートフォン事情も見られた。

ALCATELのスマートフォン販売店が存在

中国のHuizhou TCL Mobile Communication(以下、TCL)はスマートフォンやフィーチャーフォン、データ通信端末などを世界各国で販売しており、中国ではTCLブランド、中国以外ではALCATELブランドで展開している。ブルネイではALCATELブランドを冠したTCLのスマートフォンをよく見かけたのである。スマートフォンに限らずALCATELブランドの携帯電話はALCATEL onetouhchシリーズとして販売されている。

ブルネイ国内にあるモールなどの商業施設には携帯電話販売店が入っていることが多く、その携帯電話販売店の多くはALCATELのスマートフォンを取り扱っている。ALCATELのスマートフォンはLTE対応のハイエンド寄りのものからローエンドまで幅広く用意されている。また、スマートフォンのみならずタブレットやフィーチャーフォンまで販売しておりラインナップは非常に豊富である。

そして、ALCATEL専門の販売店も少なくない。ALCATEL onetouhchの看板が出ており、遠くから見てもALCATEL専門の販売店と分かる。ALCATEL専門の販売店は数ヶ所あるのだが、内装のデザインは統一されており、お洒落で清潔な印象を受けた。客入りは悪くないようで、ALCATELのスマートフォンをよく見かける理由も納得できた。

▼上下にある透明のパーツが特徴的なALCATEL onetouch IDOL α。ブルネイで取り扱う販売店は非常に多かった。
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シンガポールのiNO Mobileや中国のUTOOのスマートフォンも

Samsung Electronics、Apple、Nokiaなど、グローバルで展開するメーカーのスマートフォンは当然ながらブルネイでも販売されている。どの携帯電話販売店でも取り扱っており、これらのメーカーの世界での強さを改めて実感するところであるが、ブルネイにおいては他国ではあまり見かけることが少ないメーカーのスマートフォンも販売されていた。それがiNO MobileとUTOOである。

iNO MobileはシンガポールのForesight Manufacture (Singapore) Pte. Ltd. (以下、Foresight Manufacture)が展開するブランドで、シンガポールブランドを強調している。ブルネイは地理的な影響からもシンガポールとの経済的交流や人的交流が盛んである。通貨のブルネイドルはシンガポールドルと等価であり、ブルネイでシンガポールドルを使えることも、交流が盛んなことを物語っていると言えるだろう。シンガポールとの交流が盛んになる中で、iNO Mobileのスマートフォンがブルネイに定着したと思われる。iNO Mobileはあまり多くの国や地域では展開していないが、シンガポールとの交流が盛んなブルネイだからこそ、iNO Mobileのスマートフォンを見ることができると考えらえる。

▼iNO MobileのスマートフォンiNO One Plus。化粧箱にはSingapore Brands/新加坡品牌と記載されており、シンガポールブランドを強調する。
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ブルネイではUTOOのスマートフォンやタブレットを見ることもできた。UTOOは中国のaigo Digital Technology (以下、aigo)が展開するブランドである。社名の漢字表記は愛国者数碼科技で、中国では愛国者として家電製品などを展開している。愛国者という名前では多少は日本でも認知されているかもしれない。タイのバンコクにAigo Thailandとして法人を設立しており、タイやマレーシアなど東南アジアにおける事業を手掛けている。

同社は東南アジアではスマートフォンやタブレットをUTOOブランドで展開している。広告などにはUTOO by aigoと書かれることもある。ブルネイは地理的な関係からマレーシアとも交流が盛んであり、iNO Mobileと同じような理由でUTOOのスマートフォンやタブレットがブルネイに定着したものと思われる。

UTOOはスマートフォンとタブレットの中間サイズでファブレットと呼ばれる大型のスマートフォンを低価格で投入しており、これがブルネイでは比較的売れているという。実際にブルネイではUTOOのスマートフォンを何度も見かけた。ブルネイは経済的に恵まれている国であるが、ハイエンド中心の市場ではなくミッドレンジからローエンドのスマートフォンも多い。必要以上に浪費するのではなく安くて大画面ということで、UTOOのスマートフォンが選ばれているのだろう。

その他、HTCやASUSTeK Computer、Acerなど台湾メーカーのスマートフォンも多く見られた。多くの市場と同じようにグローバルメーカーのスマートフォンはブルネイでも見られるが、特にALCATELの存在感の大きさや、他国との交流の過程で定着したiNO MobileやUTOOのスマートフォンが見られることは、ブルネイのスマートフォン市場の特徴と言える。

▼UTOOはタブレットも投入している。広告にはUTOO by aigoと記載されている。
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スマートフォンの保証は販売店

数多くのメーカーのスマートフォンが販売されているブルネイであるが、基本的にグローバルメーカーでもブルネイには現地法人を設立していない。そのため、メーカー保証を受けるにはハードルが高く思われるかもしれないが、ブルネイでは購入時に販売店の保証書が同梱されるため、故障時などトラブルが発生した場合は販売店に持ち込めばよい。購入時に開封して本体や電池パックに販売店のシールが貼られることもあるが、将来的に保証を受ける可能性があるのであれば剥がさない方が無難だろう。

移動体通信事業者はDST Communications Sdn Bhd (以下、DST)とProgresif Cellular Sdn Bhd (以下、PCSB)の2社体制となっている。DSTはグループ会社のIntegrated Communications Sdn Bhd が運営するDSTINCOMMを通じてスマートフォンなどの端末を販売するが、PCSBは2014年7月1日にB-Mobile Communications Sdn Bhd (以下、B-Mobile)から生まれ変わってからは端末を販売していない。B-Mobile時代はB-Mobileブランドのスマートフォンやフィーチャーフォンなども販売していたが、それらが見られなくなったのは少し残念である。

▼ブルネイのモール内に入る携帯電話販売店。ここでスマートフォンを購入した。
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▼ブルネイで購入したNokia X Dual SIM。本体や電池パックには販売店のシールが貼られている。
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▼パソコン販売店でもスマートフォンを取り扱う。OPPO自体はブルネイ市場に参入していないが、OPPOのスマートフォンも販売されている。
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スマートフォンの購入にはAITIマークの確認を

ブルネイでスマートフォンなど端末を販売する際には、ブルネイ当局の認可を受ける必要がある。この認可はブルネイの政府機関であるAuthority for Info-communications Technology Industry (以下、AITI)が手掛けている。

認可と言っても、技術的な認証試験を実施するのではなく、販売許可を付与するようなものであるが、認可を受けた端末の化粧箱にはAITIのシールが貼られている。このシールにはAITIマークと認定番号がプリントされている。化粧箱にAITIのシールが貼られている場合は、ブルネイ当局の販売許可が下りていることを示すので、ブルネイで端末を購入する際はAITIのシールを確認するようにしたいところである。

▼化粧箱に貼られたAITIのシール。AITIマークや認定番号が確認できる。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。