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台湾で始まったLTEサービス - 統合する亞太電信と國碁電信もLTEの運用を開始

2014.10.20

Updated by Kazuteru Tamura on October 20, 2014, 10:00 am UTC

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台湾では2014年5月下旬以降に移動体通信事業者各社が相次いでLTE方式による通信サービスを4Gとして開始した。周波数オークションを経てLTE用の周波数を獲得した6社のうちLTEサービスを開始していないのは亞太電信と國碁電子のみとなったのである。サービス面では大きな動きが少ないように見える2社であるが、両社は統合が決定するなど業界の再編に大きく関与している。今回はそんな亞太電信と國碁電子にフォーカスを当てる。

統合でFoxconn傘下の携帯電話キャリアに

台湾ではLTEの時代に突入し、勢力図が変化している。周波数オークションでは台湾之星電信がLTE用の周波数を獲得し、移動体通信事業への参入を果たした。台湾之星電信は3Gネットワークを保有しておらず、周波数オークションに参加しなかった威寶電信(VIBO Telecom)を傘下とすることで3Gネットワークも手中に収め、携帯電話サービスを提供するに至っている。

勢力図の変遷は台湾之星電信だけではなく、亞太電信と國碁電子こそが真の主役とも言える状態となっている。

國碁電子は通称Foxconnとして知られる鴻海科技集団(Hon Hai Technology Group)の企業で、LTE用の周波数を獲得して移動体通信事業への新規参入を狙っていた。周波数オークションでは700MHz帯(Band 28)の10MHz幅と900MHz帯(Band 8)の10MHz幅を獲得することに成功した。しかし、新規参入となる國碁電子は3Gネットワークを保有しておらず、携帯電話サービスを提供するには既存の移動体通信事業者との提携などが必要となった。他社との提携や買収などは様々な憶測が飛び交ったが、最終的には株式交換で亞太電信と統合することで決定した。

亞太電信と國碁電子の統合は亞太電信を存続会社とするが、鴻海科技集団が亞太電信の株式を取得して筆頭株主となるため、亞太電信は鴻海科技集団傘下の移動体通信事業者となる。事実上、Foxconnの携帯電話サービスが誕生することにもなる。この統合は亞太電信の取締役会でも承認されており、2015年6月末までに統合が完了する予定である。

▼台北市内にある亞太電信の販売店。A+ Worldをブランド名として展開している。
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台湾大哥大と提携して一部の周波数を売却

鴻海科技集団は台湾大哥大と戦略的提携を締結したことを明らかにしている。鴻海科技集団は台湾大哥大に出資し、台湾大哥大は鴻海科技集団傘下となる亞太電信に出資することが決まっている。統合後の亞太電信は3大株主が出資率の高い順に鴻海科技集団、台湾鉄路管理局(Taiwan Railway Administration)、台湾大哥大となる。台湾大哥大は台湾の3大移動体通信事業者の1社であり、技術的なノウハウの共有なども狙っている。また、戦略的提携の内容には台湾大哥大への周波数売却も含まれている。

國碁電子は先述の通り700MHz帯の10MHz幅と900MHz帯の10MHz幅で計20MHz幅を保有する。一方で、亞太電信は700MHz帯の10MHz幅を保有しており、統合後は700MHz帯の20MHz幅と900MHz幅の10MHz幅で計30MHz幅を保有することになるが、これが問題なのである。

台湾では周波数オークションを実施する際に1社が取得する帯域幅の下限や上限および入札単位など詳細な規則が設定された。入札単位はすべての周波数において5MHz幅単位、取得する合計の帯域幅は下限が10MHz幅と定められた。また、帯域幅の上限についてはより細かいルールが用意されており、入札企業が5社以上の場合は上限が35MHz幅、入札企業が4社の場合は上限が40MHz幅、入札企業が3社以下の場合は上限が45MHz幅と設定された。最終的に入札企業は6社に達したため、上限は35MHz幅が適用されることになった。それだけではなく、周波数ごとの上限も設定され、1社当たり700MHz帯は20MHz幅、900MHz帯は10MHz幅、1.8GHz帯は30MHz幅、更にはエリア展開に有利な1GHz未満の周波数は合計の上限が25MHz幅と決められた。

ところが統合後の亞太電信は700MHz帯と900MHz帯で30MHz幅となり、1GHz未満の上限である25MHz幅を超えてしまう。そのため、5MHz幅は手放さざるを得ない周波数となるのである。そこで、戦略的提携を締結した台湾大哥大に國碁電子が獲得した700MHz帯の一部となる5MHz幅を売却することになった。國碁電子が獲得した700MHz帯は台湾大哥大の700MHz帯と隣接しており、台湾大哥大としては國碁電子が獲得した700MHz帯の一部を取得する方が使いやすいため、國碁電子から取得することになったと考えられる。

最終的に、統合後の亞太電信は700MHz帯の15MHz幅と900MHz帯の10MHz幅でLTEサービスを提供することになる。なお、700MHz帯は10MHz幅と5MHzで分離しており、5MHz幅の方はLTE-Advancedの主要技術であるキャリアアグリゲーションで活用する見通し。なお、3Gネットワークは亞太電信が使用中のCDMA2000方式を利用する。

▼LTEサービスは開始していないが、亞太電信の販売店にはLTEサービスに関する広告が貼られている。LTEサービスの開始が迫っていることを周知させている。
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亞太電信と國碁電子が個別にLTEを運用中

LTEサービスを開始していない亞太電信と國碁電子であるが、LTEネットワークの運用自体は2014年9月末時点で開始している。PLMN番号は亞太電信が466-05、國碁電子が466-12となる。

亞太電信のLTEネットワークが運用しているエリアで國碁電信は運用していない場合もあり、サービス開始前の時点では個別に運用されていることが分かる。いずれも700MHz帯の10MHz幅を運用しており、現時点では各社が獲得した帯域のみで運用している。ただ、國碁電子は5MHz幅を台湾大哥大に売却するので、この帯域において10MHzで運用できる日は長くない。また、亞太電信に統合されることが決定しているため、LTEサービスを開始する際には國碁電子が獲得した帯域においても亞太電信のPLMN番号で運用されることは間違いないだろう。そのため、國碁電子のPLMN番号は幻となる可能性が高い。

また、亞太電信のLTEサービスは亞太電信が設置した基地局と國碁電子が設置した基地局の両方を使用して提供することになる見通し。LTEサービスの開始が遅く、統合の方が話題となっているが、着々とLTEサービスの開始に向けて準備していることが見て取れる。

▼台北市内でネットワークを検索するとLTEネットワークだけで6社も検出する。APT 4Gが亞太電信、46612 4Gが國碁電子である。
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BenQのLTE対応スマートフォンをフラッグシップとして販売中

LTEサービスをまだ提供していない亞太電信であるが、LTE対応スマートフォンの販売を開始している。亞太電信のLTEネットワークに対応したスマートフォンとしてBenQ F5とBenQ T3を販売している。当然ながら亞太電信のCDMA2000ネットワークにも対応したスマートフォンとなっている。亞太電信がLTEサービスを開始すれば、BenQ F5やBenQ T3でLTEサービスを利用できるようになるという。店頭では最も目につきやすい位置に展示されており、ポスターなども掲示してフラッグシップのような扱いを受けていた。3GネットワークにCDMA2000方式を採用することで利用可能なスマートフォンがあまり多くない亞太電信にとって貴重なLTE対応スマートフォンとなっている。それ故にフラッグシップのような扱いを受けているとも解釈できる。

亞太電信は鴻海科技集団傘下となるため、今後はInFocusのスマートフォンが増えるとの見方もある。InFocusブランドのスマートフォンは鴻海科技集団のFIH Mobileが開発や製造を手掛けており、台湾では鴻海の携帯電話を意味する鴻海手机と呼ばれることもある。事実上、InFocusのスマートフォンは鴻海科技集団のスマートフォンと見なされており、亞太電信への供給が増加すると見込まれている。実際に、2014年10月には亞太電信が初めてInFocusのスマートフォンを発売しており、今後はInFocusのスマートフォンが増えそうなことを予感させている。

▼亞太電信の販売店に展示されているBenQ F5。BenQ T3よりも上位のスマートフォンとなる。
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▼BenQ F5の背面。クールなイメージのスマートフォンに仕上げられている。
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▼亞太電信の販売店に展示されているBenQ T3。LTE対応スマートフォンながら比較的リーズナブルな価格に設定されている。
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▼BenQ T3の背面。BenQ F5とは対照的に、若年層を意識したポップなカラーも用意している。
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Foxconnが携帯電話サービスに参入する意図

鴻海科技集団といえば、やはり受託生産(EMS)の大手企業集団というイメージが大きいだろう。実際に受託生産では世界最大手であり、中国に複数の大規模な工場を設置して生産を手掛けている。特に米国のAppleからの受託でiPhoneやiPadなどの生産を手掛けていることは有名なはずである。

受託生産が売り上げの中心となっている鴻海科技集団であるが、新規事業に参入して売り上げを伸ばす狙いがある。鴻海科技集団が手掛ける新規事業としては生物工学や医療などが挙げられるが、移動体通信事業もその新規事業の一つとなる。グループとして様々な事業分野に参入して売り上げを伸ばす方針が、移動体通信事業への参入に結びついたと言える。

台湾では周波数オークションに参加した中華電信、遠傳電信、台湾大哥大、台湾之星電信、亞太電信、國碁電子に加えて周波数オークションに参加しなかった既存の移動体通信事業者である威寶電信の計7社が各々に移動体通信サービスを提供する可能性があったが、結局は中華電信、遠傳電信、台湾大哥大、台湾之星電信、そして亞太電信の計5社に絞られることになる。業界再編の渦中にある亞太電信は、どのような戦略で新たなサービスを提供するのか注視したい。今後の亞太電信の動向から、より具体的な鴻海科技集団の狙いを読み取ることもできるはずである。

▼亞太電信は鴻海科技集団が開発や製造を担当したInFocus M510tの販売を開始した。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。