無線通信をイタリアのグリエルモ・マルコーニが発明した1895年から数えても無線を使った通信の歴史は120年足らずだが、ラジオやテレビ放送、携帯電話と次第に高い周波数の電波が使われるようになった。歴史が浅いため、電磁波が人体に及ぼす影響については論争が絶えず、悪影響があると信じている人は世界中に大勢いる。
電磁波による体調不良を指すEHS(electromagnetic hypersensitivity)──電磁波過敏症──は多くの国では病気と認められていないが、多くの人が頭痛や皮膚炎、動悸、めまいなどさまざまな症状の原因が、電磁波を浴びたことだと考えている。スウェーデンとスペインでは、EHSが病気だと認められているようだ。
電波は壁を通り抜けるので、電波過敏症の人は家の中にいても安心できない。そういう人の強い味方が、外壁や内壁に塗ると電磁波シールドになるペンキだ。塗料に銀、ニッケル、銅、アルミニウムなど導電材の粒子を混入して静電遮蔽により電波を透さなくする。
・Y-SHIELD高周波シールド・ペンキ
・Blocpaint伝導シールド・ペンキ
・江戸川合成 電磁波シールド塗料
など、多くの製品が市販されている。
先日はイングランド南部のウエスト・サセックスで4,000ポンド(70万円弱)を投じて自宅を「アンチWiFiペンキ」で塗った72歳の女性が現れた。外壁と内壁、合わせて4層、アルミニウムイオン酸化物混合の特性ペンキを分厚く、業者に塗らせた。WiFiの電波が屋内に入って来るのを遮断する効果があるという。
この女性、医師から診断されたわけではないもののWi-Fiの電波に接すると頭痛や吐き気などの症状が出るそうだ。症状は深刻で、人々がWiFiをいつでもどこでも多用する今、バスにも乗れないし、おちおちと外出もできなくなっているらしい。紹介記事の中には、「心配し過ぎのおばあちゃん(paranoid granny)」と揶揄しているものもあるが、ペンキの「効果」はあったようで、気分はずっと良くなったそうだ。
なお、こうした電磁波シールド用ペンキは、本来実験室や工場などで利用するために開発されたものだ。外部からの電波で実験が妨げられたり、産業用機械が誤動作したりするのを防ぐのが目的だ。
【参照情報】
・Grandmother, 72, spends £4,000 covering her house in 'anti wi-fi' paint after suffering health problems from wireless signals
・Paranoid granny spends £4,000 defending her home against wi-fi signals
・Grandmother spends £4,000 on anti-Wi-Fi paint on her home
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