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ソーシャルメディアを支配するのはかわいい猫である

2014.11.24

Updated by Mayumi Tanimoto on November 24, 2014, 08:52 am JST

ちゆ12歳を凌駕するかと思われた小学生が作ったサイトが仕込みだった件がバレて盛大に炎上しております。

舶来リア充祭りのハロウイーンも終わり、あとは年末のボーナスぐらいしか楽しみがないという連休の最中の娯楽として、本年を締めくくる盛大な花火を打ち上げて下さり、南極物語よりおもしれーじゃねーの、とお喜びの皆様が多いのではないでしょうか。

【顛末追記】小4『どうして解散するの?サイトつくったからおしえて』民主くん『天才少年現る!』→仕込みっぽすぎて炎上 ➡結果NPO運営でした

小4という非実在キャラの設定の甘さ加減にラノベ界隈やショタ界隈の怒りを買う、ソースで色々もれてるのを暇な技術者が丹念に発掘、某在特会にも協力を要請するなど、前後左右全方向に放射したネタが香ばしい状態になっている所に、援護射撃を始めた人々が「非実在小4はスティーブ•ジョブス」「アクションを起こしたのが偉い」という意識の高い燃料をくべており燃焼する中、さらに某週刊誌とか新聞も巻き込んで全方向的に爆発しております。

さて、この件が仕込みだったのかどうではなかったのかというのははっきりしていませんが、ソーシャルメディアを使ったキャンペーンに関して重要な示唆を与えてくれているという点で注目しなければなりません。

まず始めにこの件が教えてくれるのは「ユーザーを舐めてると痛い目にあう」ということです。

ユーザーの中には、様々なプロや多様な政治的信条を持った人、時間を持て余した人がおり、リアルな空間では成立しない多数のプロや専門家による協業が成立します。「群衆の英知」というと、なんとなく素人の集団の様な気がするわけですが、実際はその中にはプロも含まれているわけです。

今回の件ではWebに詳しい人、政治問題に興味がある人、メディアを熱心にチェックしている人など様々な人が発掘作業に関わったわけですが、仕込んだ方はまさかユーザーの中にはそんな人々がいるとは思わなかったのでしょう。ユーザーに関する想像力が欠けていたわけです。

「群衆の英知」が発揮された件では、今年前半のSTAP細胞の件も良い例です。PubPeerを始めとする検証サイトや掲示板で、素人や匿名のプロによる調査が実施され問題が暴かれて行きましたが、盗作した当事者は、ネットを介して様々なプロや専門家が見るとは思っていなかったわけです。はやり想像力が欠けています。

次に重要な点は、週刊誌の記事の様な下世話な案件であればあるほど、「群衆の英知」が発揮されるという点です。

今回の件は、「何か仕込みがあるらしい」「何かが変だ」「なんだかキモい」という憶測や感情が火をつけたわけで、正義がどうだ、人権がどうだという美しい奇麗事ではありません。その根底にあるのは「知りたい」という下世話な要求であり、怒りであり、面白いネタを見たいという要求であります。

ハーバード大学ロースクールの研究者であるEthan Zuckerman氏は、ネットワークを漂う情報の多くを占めるのは、生真面目な情報ではなく、可愛い猫とネタだと述べていますが、今回の炎上はまさにその典型例であると言えるでしょう。群集心理を描いた名著である「狂気とバブル 」を改めて読みたくなりました。

ところで本年は嘘つき炎上案件が山盛りであり、そのグランプリはサムラゴーチ、オボカタ、野々村、小渕がトップを争っている次第ですが、炎上クイーンのワタクシとしては本案件には銀メダルを贈呈したいと考えております。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。