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Pepperが作り出そうとしている未来

2014.11.21

Updated by Masakazu Takasu on November 21, 2014, 12:22 pm UTC

先日、半年ぶりぐらいに東京に来たときに、Pepperの発表会、Tech Fesに参加しました。そこでの発表は、他の国では考えられないような刺激的なものでした。Pepper Tech Fesの内容は、こちらにまとまっています。

Pepperはソフトバンクロボティクスが発売している家庭用の人型ロボットです。家庭用の人型ロボットが発売されるのは世界最初だと思います。

「日本の強みはロボット」のように、物語の中でなく、いま社会のなかにいるロボットを指す場合、多くは自動車の組み立てなどを行う、産業用ロボットを指します。産業用ロボットは、人間の指示通りにいろいろ作業を正確にこなし、中には「不良品を跳ねる」などの判断をしてくれるものもあります。それらの機械は数十年にわたる歴史を持ち、大きな産業になっていますが、人型のロボットはごく希です。「作業をこなす」上で人型である理由はほとんどないからです。

ソフトバンクも、Pepperを開発しているAldebaran社(ソフトバンクが出資しているフランスの企業)も、「人型ロボット」を開発している会社です。人型にこだわる理由は、「人間とコミュニケーションを取るためのロボット」を作るためだと言います。

Tech Fesで話したAldebaranのBruno社長は、「ボディーランゲージをするために人型を、表情を出すために顔を備えている」と語りました。実際にAldebaranは、「納得したように見せる」「相手に好意を持っているように見せる」ためには、どのような挙動をすればよいかといった技術開発を蓄積しています。「機械が人間に感情を伝えるための研究」です。

逆に、「機械が人間の感情を読み取る研究」は、たとえば笑顔認識みたいな有名なものをはじめとして、いくつもあります。インターネットを使っていると、AmazonやYoutubeのレコメンドなどで、「何を欲しいか」という情報はけっこう上手に、時にはオオハズレもありつつ、コンピュータが読み取っていると感じることはあるでしょう。コンピュータと僕たちは、もうすでに、ギクシャクしながら意思疎通ができるようになっています。

Pepperは機械の側から僕らに意思を伝え、コミュニケーションするために人の顔と身体を持っています。しかも、かつてのAIBOやオムロンの介護用ペットロボットPALOと違い、スマホやコンピュータのようにプログラミングすることができます。「人間が自由に操れる、感情表現ができるコンピュータ」です。

「人間と意思疎通ができる人型のコンピュータ」に、何ができるのかはわかりません。どの程度の精度かはともかく、遠慮がちに目覚ましをしてくれたり、悪いお知らせは哀しそうに伝えてくれたりはできそうですが、それで世の中がどう変わるかはわかりません。

これはチームラボが作成した「Pepperが指揮者になる」動画です。指揮者が人間に指示を出し、動かすときのちょっと誇らしい感じとか、動いてもらうためにお願いするときの感情とかが出ているでしょうか。

コンピュータがはじめて「個人で買える」ものになったとき、今日の使い方を予想した人はいなかったでしょう。インターネットが普及しはじめた時も、InstagramやTwitter、Kickstarterのようなものがきちんと使われるようになることを、その前に予想した人はいなかったと思います。iPhoneの発売時、「ビールを飲むアプリ」を作る人がでてきて、しかもそれが人気になる」とスティーブ・ジョブズをはじめとしたAppleの人たちは、予想してもいなかったでしょう。でも、多くの人が参加できるようになったとき、時に大多数の予想を超えた「何か」が生まれます。

僕はシンガポール在住で、同僚の大半は東京にいるので、「感情表現ができるPepperに東京での会議に出てもらって、僕の身振り手振りや表情を伝えてもらえるといいなあ」と思っています。単なるskypeよりその方がよさそうです。

そして、第1回で触れたように、歌唱合成ソフトに人格を与え、初音ミクムーブメントを生み出した日本のDIYカルチャーは、Pepperにも思いもよらない使い方を見つけるんじゃないかと思っています。ビールを飲むアプリぐらいしか人気アプリがなかったiPhoneは、開発者の手によって大きな進化を遂げました。

チームラボ社長の猪子は、「"ほぼ意思疎通ができないんだけど友達"という人間はいるから、Pepperは人間の友達になれるんじゃないか。話が通じなくても、なんか叩いたりしたくなる」とTechFesで語っていました。僕も猪子と意思疎通できたと思うことは2年に1回ぐらいしかないので、彼の言うことはわかる気がします。

Tech Fesでソフトバンクロボティクスの社長が語ったように、ソフトバンクは80年代にPCのソフトウェア、インターネットの黎明期にYahoo、その後もYahoo BB、iPhoneと、「当時はマイナーだけどその後流行ったモノ」に大きな投資を行って、世の中を変えてきました。「人間と友達になれる可能性があるロボット」が家にあることで、僕らの生活がどう変わるのかわかりません。そもそも変わらないかもしれません。でも、そういうチャレンジがあることそのものが、未来への道だと思うのです。

最後に宣伝:
日本のオタクが、初音ミクを進化させたように、ロボットの未来もオタクが切り開くのではないかと、ソフトバンクロボティクスの人も思っているようで、ニコニコ技術部を対象に、Pepperを思う存分使い倒せるハッカソンの機会をもらえました。11/22に実施します。当日、こちらから事前に配布するPepperのSDKをノートPC(Windows,MacどちらもOK)にインストールして持ってこれる人なら、どなたでもご参加いただけます。
・11/22 13:00- の会(https://atnd.org/events/57532
・11/22 15:30- の会(https://atnd.org/events/57534

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高須 正和(たかす・まさかず)

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動をしています。日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、メイカーズのエコシステムという書籍に活動がまとまっています。ほか連載など:http://ch.nicovideo.jp/tks/blomaga/ar701264