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動画コンテンツの未来は制作現場への利益還元をどうするかにある 〜アドテック関西・カンファレンスレポート/動画コンテンツとアドテクノロジー最新潮流〜

2014.12.24

Updated by Yuko Nonoshita on December 24, 2014, 18:30 pm JST

11月26、27日にグランフロント大阪 コングレコンベンションセンターで開催された、国際デジタルマーケティングカンファレンス「ad;tech(アドテック)」の関西版「アドテック関西」より、動画広告テクノロジーをテーマにしたカンファレンス「動画コンテンツとアドテクノロジー最新潮流」の内容を紹介する。

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ここ数年でモバイルを中心に動画視聴に対するニーズが高まり、以前なら敬遠された動画広告も企業が活用する動きが始まっている。GYAOの濱田雄司氏は、Yahoo!映像トピックスをはじめとした動画配信サービスでは、「スポット型や提供型インストリームアドの導入が進み、映像コンテンツを企業タイアップに利用する例もある」という。以前なら動画コンテンツはパッケージ販売が主流だったが、AKBの4時間半にも及ぶライブを無料配信するなど、ブランド向上やライブへの誘致、CD販売などにつなげようとする動きが見られる。

▼動画の活用方法は有料配信以外にブランド向上やライブ誘因などへ拡がっているというGYAO!の濱田雄司氏
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ヒップランドミュージックコーポレーションの野村達矢氏も「ネットコンテンツはフリーミアム化しており、コンサートやライブの体験価値を上げる方向に向かっている」としている。具体的な動きとしては、2013年の幕張メッセでのサカナクションのライブ会場でサラウンド音響を充実させる一方で、WOWWOWのライブ特番と連動した特設サイトでは、12台のカメラで撮影したライブ映像をユーザーが自由に編集できる「12CAMS」(現在は終了)を提供するなどしている。

同様にユーザーが自在に視点を編集できる技術の採用が増えており、KDDI研究所の中島康之氏は、Free View Pointと呼ばれる映像を多視点から見られるシステムを紹介。ライブ映像ではアーティストに近い位置へ移動すると音源も近くに聴こえるなど、臨場感ある動画再生システムの研究を実用化しており、今後は4Kや8Kといった高精細度画像の圧縮技術も進むだろうとしている。

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同じくマルチアングルによる動画再生システムとしては、以前に本サイトで紹介した電通のVIXTがある。カンファレンスのモデレーター役を務める電通の志村彰洋氏は、Free View Point、VIXT、そしてNECが開発中のインフラレス通信が既存の動画概念を破壊し、エンハンスする技術であると紹介。NECの福永孝一氏は、基地局無しで1つの端末から数万台の端末に即時に映像配信できるインフラレス通信は、ライブや東京オリンピックのような大規模イベント、災害での活用を目指しており、さらに「こうした技術でスタジアムに人を集め、運営者やチームの支援につなげようともしている」とコメントしている。

▼ユーザーが自在に視点を変えたり基地局無しで動画配信したり、動画を取り巻く様々な技術が参加者から紹介された(写真左から、KDDI研究所中島氏、ヒップランドミュージックコーポレーション野村達矢氏、NEC福永孝一氏)
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▼「動画に対する既存の概念を変える技術が次々と登場している」と語る電通の志村彰洋氏
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▼NECが2016年の実用化を目指すインフラレス通信
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新しい配信技術が登場するのと並行して課題となるのが、収益やマーケティングへのつなげ方である。VIXTではユーザー毎、視点毎の視聴率を測定できるが、その他の動画配信サービスでも、単純に動画に広告を挿し込む以外の方法として、視点をデータ化して解析し、広告につなげる方法が模索されている。海外では動画ビジネスの収益をコンテンツに再投資する仕組みの検討が始まっているが、多視点動画配信システムのような、ユーザーが作り手の一人として参加できる技術の提供は、動画コンテンツに対する新しいアイデアを生み出し、業界と市場の活性化にもつながるのではないかという意見も出た。フリー素材アイドル MIKA☆RIKAやトヨタの「デートしよう」キャンペーンなど、マーケティングとしてもユーザーが自ら制作できるコンテンツには注目が集まっており、今後はこうした動きはさらに増えると見られている。

▼ユーザーがコンテンツを自在に編集できる仕組みがいろいろ始まっている

・12CAMS
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・VIXT
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・フリー素材アイドル MIKA☆RIKA
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・トヨタの「デートしよう」キャンペーン
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映像についても必ずしもリッチなコンテンツが求められているかというとそうではなく、GYAOでサッカーJ3の決勝中継した際には、定点で左右にパンするだけの映像がかえって臨場感があると評価されたという。KDDIの中島氏も、カメラの台数が少なくても多視点にする技術があり、むしろコンテンツそのものの価値をいかに高めるかが必要になるのではいかとコメント。ヒップランドの野村氏は、「著作者への還元単位は下がっており、良質のコンテンツを制作する資金をどうするか、ユーザーも含めて業界全体で考える必要があるのではないか」と提案した。

いずれにしても動画コンテンツを取り巻く状況は大きな変革が進んでおり、オンラインを中心に今までに無い体験の提供がすでにあちこちで始まりつつある。それがどようなビジネスやマーケティング、広告手法につながっていくのか、今後の各技術やサービスの動きに注目していきたいところだ。

【参照情報】
アドテック関西2014
参考記事:ユーザーが自在にアングルを切り替えられる動画配信システム「VIXT」を発表
12CAMSを採用したサカナクション特設サイト(現在は終了)
トヨタの「デートしよう」キャンペーン
フリー素材アイドル MIKA☆RIKA

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。