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最先端ドローンの世界

2015.02.08

Updated by Ryo Shimizu on February 8, 2015, 08:16 am UTC

数年前から、コンピュータを内蔵したラジコンヘリコプター、いわゆる「ドローン」が話題になっています。
たいていは4つ以上のプロペラを持つ「クワッドコプター」で、さらに業務用では8つのプロペラを持つ「オクトコプター」なんてのもあります。

先日発表された人気バンド「OK GO」のプロモーションビデオ「I Want Let you down」もドローンならではの特性を活かした撮影手法で大きな話題になりました。

クワッドコプターは昔からありましたが、なぜ最近になってこれほどまでに大きな話題になっているのでしょうか。

その理由は2つあります。
ひとつは、コンピュータの小型化、省電力化、もうひとつは、市場の行き詰まりです。

携帯電話の進歩によってコンピュータはどんどん小型化・省電力化が進みました。
その結果、非常に軽く小さなCPUで高度な計算をすることができるようになります。

実は通常のヘリコプターの操縦は飛行機に比べても非常に難しく、それまではかなり訓練を積まないと満足に飛ばすこともできないものでした。

なぜなら、メインの大きなプロペラ(ローターと呼ばれます)によって生まれる回転を尾部の小さなプロペラの2つのプロペラで打ち消しながら飛ばなければならないからです。これは極めて複雑な情報処理をパイロットが行わなければいけないことになります。

しかし、ローターを4つにしたクワッドコプターは、互いの回転を打ち消し合いながらバランス良く飛ばすことが出来ます。

その結果、ヘリコプターではそれさえ難しいとされていた「ホバリング」と呼ばれる動作、いわゆる空中に静止するという動作が実に簡単にできるようになりました。

筆者も学生時代からたくさんのラジコンヘリコプターを飛ばしたり、実際に海外でヘリコプターの操縦体験をしたりしましたが、ヘリコプターをきちんと飛ばせるようになるためには本当に何度も訓練する必要があります。

けれどもクワッドコプターのブームの火付け役であるParrotのAR Droneは、何も考えずとも「離陸」ボタンを押すだけでホバリングします。これはさりげないことのように思われますが、実は凄まじいことなのです。

この「ホバリングが簡単」という特性によってクワッドコプターはコンピュータによって制御がしやすくなりました。
高度なフィードバック制御を行いながら姿勢を自動的に安定させ、なおかつ下部に取り付けられた超音波距離計で床との距離を測り、一定高度を保つという処理を行っているのです。

技術的にそれが実現したとしても、それを買う人が居なければマーケットとして成立しません。

では市場にもともとクワッドコプターに対するニーズがあったかというと、NOです。

最初のAR Droneを開発したとき、Parrot社のエンジニアが筆者の会社を訪れ、「ぜひこれでゲームを作って欲しい」と依頼して来ました。

AR Droneは、その名の通りAR(拡張現実感)ゲームをプレイするためのおもちゃとして開発されたのです。
しかしおもちゃにしては値段は4万円強と少々高すぎますし、日本ではそんな巨大なドローンを自由に飛ばせる場所も満足にありませんでした。

たぶんParrotのエンジニア達はクワッドコプターの面白さ、それをコンピュータ制御することの可能性は感じたものの、当初は存在しないマーケットにどうやってモノを売り込んだらいいのかわからなかったのではないかと思います。

しかし、AR Droneを買ってみたユーザが感じたのはコンピュータとしての可能性ではなく、撮影機器としての可能性でした。

「こんなに手軽に空撮ができるなんて!」という驚きをもって迎えられたのです。

これはAR Droneが単なるクワッドコプターではなく、ARゲーム用のクワッドコプターにするため、前方と下方にカメラを配置し、なおかつリアルタイムでカメラ画像を受信できるようになっていたという特性があったからこそうまれた驚きでした。

そこでParrot社はAR Drone 2.0として、HD解像度のカメラを搭載したドローンを発売しました。
これも非常にヒットしましたが、そのときはもはやゲーム用ではなく、空撮を楽しむグッズとして受け入れられ始めました。

もともとのデジカメ市場は行き詰まり、コンパクトデジカメ、高性能な一眼レフデジカメといったものがひと通り普及してしまって、消費者が「さすがにもうカメラを買うのは飽きたけど、なにか変わったものが撮りたい」と思った時に現れたのがクワッドコプターだったわけです。

その後、GPSを内蔵したDJI Phantomが現れ、クワッドコプター業界はさらに盛り上がります。

この製品の画期的なところは、GPSとジンバルでした。
高度なコンピュータを内蔵し、操縦して一時的にはどこに行ったかわからなくなっても、ボタンを押せばすぐにスタート地点まで戻ってくるという機能が搭載されたのです。これは撮影者にとって抜群の安心感になります。

さらに、カメラを安定させながら好きな方向を撮影する「ジンバル」という機器も搭載されました。
本格的な空撮に特化したクワッドコプターの登場です。

これがヒットし、本家本元のParrotもこの空撮ブームをキャッアップすべく開発したのが、Bebop Droneです。

このドローンは非常に画期的です。

まず、GPSやカメラによる撮影機能を全部内蔵しているだけでなく、オプションのSky Controllerを使うと最大2kmまで操縦することができます。

スクリーンショット 2015-02-08 8.17.17.png

初代のAR DroneはiPhoneやiPadのみからコントロールしていましたが、Bebop DroneはSky Controllerを使うことでより操縦性を上げています。

実際、Sky Controllerを使った操縦は非常に安定していて快適です。

さらに凄いのは、カメラの方向を物理的に変えるのではなく、もともと180度の視界を持った魚眼レンズで1400万画素の撮影素子で撮影した画像の部分を切り取り、カメラの方向を電子的に変えていることです。

こうすることで手ブレやモーターの振動によるブレをなくし、本体自身も強力な免震機構を備えることで驚くほど安定した映像を得ることが出来ます。

実際に社内で飛行させたときの映像がこちらになります。

これまで筆者も様々な空撮グッズを試してきましたがここまで簡単に安定した映像を得られる機械は初めてです。

思い通りの位置に飛ばすことが出来、しかも万が一墜落しても本体は非常に軽くて丈夫なのでまず壊れることはありません。プロペラが壊れてしまっても、990円で4本のスペアを買うことが出来ます。

カメラアングルを変えるのも非常に簡単で、とてもコンピュータで湾曲処理された画像とは思えません。

ある意味で空撮ドローンの究極系と言えるのではないかと思います。
さらに、頭部装着型のヘッドマウントディスプレイを組み合わせることもできるようになっています。

こうすると画面の見えにくい屋外でも操縦しやすくなります。

筆者も体験してみましたが、まるで自分が空中浮遊しているかのような感覚を得ることが出来ます。

これはもう空撮アイテムというよりも幽体離脱アイテムと言ったほうがいいのかもしれません。
とにかく独特の体験で、一度やってみることをお勧めします。

撮影された画像はそのままでも非常に美しく、完成度の高い映像が得られます。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。