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カンボジアの携帯電話事情(1) - キャリアは7社がひしめき合う

2015.02.02

Updated by Kazuteru Tamura on February 2, 2015, 11:30 am JST

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カンボジア王国(以下、カンボジア)ではViettel(Cambodia)、Smart Axiata、MobiTel、Sotelco、Cambodia Advanced Communications、South East Asia Telecom(Cambodia)、Xinwei(Cambodia) Telecom の7社が移動体通信事業者として存在する。ブランド名はViettel(Cambodia)がMetfone、Smart AxiataがSmart、MobiTelがCellcard、SotelcoがBeeline、Cambodia Advanced Communicationsがqb、South East Asia Telecom(Cambodia)がExcell、Xinwei(Cambodia) TelecomがCooTelとなっている。カンボジアの人口は2013年時点で約1500万人とされており、人口が約1500万人の国に7社もの移動体通信事業者がひしめき合うことになる。

カンボジアでは2013年以降に移動体通信事業者の撤退、統合、参入など再編の動きが活発で、2014年にはようやくLTEサービスも開始した。そんなカンボジアの移動体通信を首都・プノンペンで視察してきたので紹介する。

トップはベトナム軍傘下が運営するMetfone

カンボジアの携帯電話普及率は国際電気通信連合(ITU)によると2012年時点で132%となっている。支払い方式はプリペイド式が大多数で、1人が2枚以上のSIMカードを保有しているケースも多い。ほぼ全員が携帯電話を保有しているというほどではないが、携帯電話はカンボジア国民の生活に浸透している。

そんなカンボジアで最も利用者数が多い移動体通信事業者がViettel(Cambodia)である。Viettel(Cambodia)の親会社はベトナム国防省付属機関でベトナム軍傘下のViettelで、カンボジアを含めた世界の複数の地域で事業を展開している。カンボジアにおいてはブランド名をMetfoneとして移動体通信サービスを提供する。Metfoneはカンボジアの公用語であるクメール語で友達を意味する単語と英語で電話を意味する単語の発音を組み合わせている。

Viettel(Cambodia)は2006年6月に設立されており、移動体通信サービスは2009年2月より開始している。出資比率はViettelが90%、カンボジアのNHホールディングが6%、その他の4%はカンボジアのパートナとしている。

通信方式はW-CDMA/GSM方式を使用している。Metfoneブランドを冠した端末の販売も手掛けており、スマートフォン、フィーチャーフォン、据置型電話、USBモデム型データ通信端末などをラインナップに揃えている。歴史的な問題で対越感情が良くないカンボジア国民も少なくないが、無料のSIMカードを配布するなどの施策で利用者数を伸ばしている。また、Google Play Storeではクメール語の文字入力システムを公開するなど、ベトナム資本の企業ながらカンボジア市場で受け入れられるよう努める取り組みも見られる。

▼プノンペン市内のViettel(Cambodia)本社。屋上には基地局が設置されている。
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▼本社に併設されているMetfoneの販売店。
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カンボジア初のLTEサービスを開始したSmart

Smart Axiataはブランド名をSmartとして移動体通信サービスを展開している。同社はマレーシアのAxiataグループの企業で、Hello AxiataとLatelzが統合したことで誕生した。Hello AxiataはHelloブランドで、LatelzはSmart Mobileでそれぞれ移動体通信サービスを提供していたが、2013年2月の統合で社名をSmart Axiata、ブランド名をSmartとした。カンボジアでは2番目に利用者が多い移動体通信事業者となっている。

Smart AxiataはFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式で移動体通信サービスを提供する。2014年1月に1.8GHz帯(Band 3)でLTEサービスを開始しており、カンボジアで初めてLTEサービスを提供する移動体通信事業者となった。カンボジアが世界で100番目にLTEサービスを開始した国や地域とする調査もある。

Smart Axiataは端末の販売も手掛けているが、基本的に移動体通信事業者のブランドではなくメーカーブランドの端末を販売している。多数のグローバルメーカーの端末を取り扱う中、SINGTECHの端末も販売する。SINGTECHはシンガポールの企業であるが、カンボジアにおいて積極的に展開しており、カンボジアでは頻繁に見かけるブランドである。Smart Axiataが展開するラインナップはカンボジアならではのラインナップとも言える。また、Apple製のiPhoneを正規に取り扱う移動体通信事業者でもあり、販売店では目立つ位置にiPhoneが展示されている。本社併設の販売店にはカフェが併設されており、移動体通信事業者の販売店ながらゆっくりとくつろげるスペースも提供している。

▼プノンペン市内のSmart Axiata本社に併設されているSmartの販売店。Apple iPhone 6を大々的に宣伝しており、屋上には基地局が設置されている。
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イオンモールに販売店を設置するCellcard

CellcardはCamGSMの子会社であるMobiTelが展開するブランド名で、CamGSMはMobiTelを通じて移動体通信事業を手掛けることになる。CamGSMは1996年にカンボジアのRoyalグループとルクセンブルクのMillicom International Cellularの合弁会社として設立されており、設立時の出資比率はMillicom Internatilnal Cellularは61.5%、Royalグループが38.5%であったが、2009年11月にRoyalグループがMillicom Internatilnal Cellularが保有する全株式を買収して100%子会社とした。

移動体通信サービスの開始当初はGSM方式を使用していたが、2006年10月よりW-CDMA方式による移動体通信サービスも開始している。スマートフォンやフィーチャーフォンなど端末の販売も手掛けているが、Cellcardブランドを冠する端末はUSBモデム型データ通信端末やモバイル無線LANルータのようなデータ通信専用端末のみとなる。2014年6月30日に正式開業となったイオンモールプノンペンには販売店を設置している。

▼プノンペン市内のMobitel本社に併設されているCellcardの販売店。
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▼イオンモールプノンペンに入居するCellcardの販売店。
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過去にVimpelComグループが出資したBeeline

Sotelcoはブランド名をBeelineとして移動体通信事業を手掛ける。BeelineブランドはVimpelComグループのブランド名であるが、Sotelcoはそれを使用している。

VimpelComグループは設立がロシア・モスクワで、本社はオランダ・アムステルダムに置く。ロシアや独立国家共同体(CIS)の国々を中心に世界の複数の地域で移動体通信事業をBeelineブランドで展開している。2008年7月にVimpelComグループがSotelcoの株式90%を取得し、SotelcoをVimpelComグループ傘下とすることでカンボジア市場に参入した。

VimpelComグループ傘下となったSotelcoは2009年5月にBeelineブランドで移動体通信サービスを開始したが、2013年4月にVimpelComグループがSotelcoの株式を手放すことが決定した。VimpelComグループがSotelcoから手を引いた後もブランド名はBeelineから変更しないことになったため、SotelcoはVimpelComグループとの資本関係が解消後もVimpelComグループのBeelineブランドを使い続けている状態となっている。

2Gと呼ばれるGSM方式のみで提供しており、3G以降の規格は導入していない。スマートフォン、フィーチャーフォン、据置型電話の販売を手掛けている。Beelineのブランドを冠した端末も存在するが、端末の販売にはあまり積極的ではなく、ラインナップは非常に少ない。

▼プノンペン市内のSotelco本社に併設されているBeelineの販売店。
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▼本社近くにはBeelineカラーの街灯柱やパラソルが見られた。
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CADCOMMSが提供するqb

qbはCambodia Advanced Communicationsが展開するブランド名である。Cambodia Advanced Communicationsは2006年に設立された企業で、社名が長いために、略してCADCOMMSと呼ばれることも多い。

GSM方式は導入せずにW-CDMA方式のみで移動体通信サービスを提供している。スマートフォン、据置型電話、データ通信専用端末などを取り扱うが、基本的にスマートフォンはメーカーブランドのみで、端末の販売にもあまり積極的ではない。人気が低く利用者数が少ないため、SIMカードの販売を手掛ける独立した携帯電話の販売店ではqbのSIMカードを扱っていないことも多い。

▼プノンペン市内のCambodia Advanced Communications本社。屋上には基地局が設置されている。
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▼本社に併設されているqbの販売店。
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海外キャリアの端末を販売するExcell

Excellは2008年に設立されたGT-TELL(Cambodia) Investment Companyが展開してきたブランド名であるが、2014年にシンガポールのSouth East Asia Telecom(SEATEL)グループによる買収で社名をSouth East Asia Telecom(Cambodia)に変更している。

通信方式はCDMA2000方式を使用して移動体通信サービスを提供しており、カンボジアでCDMA2000方式を採用する唯一の移動体通信事業者となっている。スマートフォンやデータ通信専用端末の販売を手掛けているが、SIMカードを採用しておらず、端末に電話番号を書き込む方式を採用している。

CDMA2000方式を採用していることから利用できる端末が限られており、また小規模な移動体通信事業者であるため、South East Asia Telecom(Cambodia)向けに独自の端末を開発することは難しく、カナダのBell Canadaや米国のVerizon Wirelessなど海外のCDMA2000方式を採用する移動体通信事業者に投入された端末がそのまま販売されている。そのため、South East Asia Telecom(Cambodia)の販売店には海外の移動体通信事業者の端末が並んでいるのである。筆者はCDMA2000方式およびSIMカード(R-UIM)に対応したスマートフォンを持ち込み、電話番号の書き込みを試みたものの失敗に終わった。

2015年にはLTEサービスを開始する計画で、LTEサービスの開始と同時にSIMカードの発行も開始すると思われる。

▼プノンペン市内のSouth East Asia Telecom(Cambodia)本社に併設されているExcellの販売店。
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▼本社に併設されている販売店の店内。
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▼Bell Canada向けのHTC Touchをそのまま販売しており、Bell Canadaの旧ロゴが入っている。
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▼USBモデム型データ通信端末としてUTStarcom UM175やPantech UM190も販売する。Pantech UM190はVerizon Wirelessのロゴが入っている。
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McWiLL方式を使用するCooTel

CooTelは中国の信威通信産業(Xinwei Telecom Enterprise)グループがカンボジアで展開するブランド名である。信威通信産業グループは北京信威通信技術(Beijing Xinwei Telecom Technology)を中心とした企業グループで、カンボジア法人としてXinwei(Cambodia) Telecomを設立している。2013年10月31日にプノンペン市内で記者会見を開催し、CooTelブランドでカンボジアにおける移動体通信サービスの開始を発表した。2015年初めの時点ではカンボジアで最も新しい移動体通信事業者となっている。

通信方式はSCDMA方式をベースとした1.8GHz帯のMcWiLL方式を採用している。McWiLL方式に対応した端末は非常に少なく、CooTelブランドでMcWiLL方式に対応した端末の販売を手掛ける。端末のラインナップはスマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、据置型電話、データ通信専用端末を揃えている。端末の開発は信威通信産業グループの企業である重慶信威通信技術(Chongqing Xinwei Telecom Technology)が手掛けている。

世界的にMcWiLL方式の採用事例は少なく、カンボジアでは移動体通信サービスから端末の開発および販売まですべて信威通信産業グループで手掛けている。なお、世界で初めて個人消費者向けにMcWiLL対応スマートフォンを一般販売した移動体通信事業者がXinwei(Cambodia) Telecomとなる。SIMカードを採用しておらず、SIMlessを特徴の一つとしている。そのため、電話番号は端末に書き込むことになる。

▼プノンペン市内のXinwei(Cambodia) Telecom本社に併設されているCooTelの販売店。
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破産でサービスを終了したキャリアも

カンボジアでは過去にMfoneも移動体通信サービスを提供していた。Mfoneはカンボジア政府とタイのThaicomが合弁で設立したThaicomグループの企業で、1993年の設立当初は社名をCambodia Shinawatraとしていたが、2009年に社名をMfoneに変更した。

カンボジアでは移動体通信事業の免許を獲得しながら移動体通信サービスを開始することなく撤退した企業も存在する中、Mfoneは移動体通信サービスを提供していたが、経営難の末に2013年1月に破産を申請して移動体通信サービスを終了した。Mfoneの利用者についてはMobiTelが吸収することで合意し、無料でMobiTelのSIMカードに変更、Mfoneの移動体通信サービス終了から60日間はMobiTelのネットワークに自動で国内ローミングといった処置を取った。

2013年に顔ぶれが大きく変化したカンボジア

2013年初めの時点ではViettel(Cambodia)、MobiTel、Sotelco、Cambodia Advanced Communications、South East Asia Telecom(Cambodia)、Hello Axiata、Latelz、Mfoneの8社が移動体通信サービスを提供していたが、人口が約1500万人の国で8社はさすがに多すぎたせいか、Mfoneの破産による撤退やHello AxiataとLatelzの統合で2013年第1四半期だけで移動体通信事業者が2社も減ることになった。

しかし、同年にはXinwei(Cambodia) Telecomが参入したことで、同年末の時点では移動体通信事業者がViettel(Cambodia)、Smart Axiata、MobiTel、Sotelco、Cambodia Advanced Communications、South East Asia Telecom(Cambodia)、Xinwei(Cambodia) Telecomの7社となり、2013年にはカンボジアの移動体通信事業者の顔ぶれが大きく変化した。それだけではなく、VimpelComグループによるSotelcoに対する出資の引き上げも2013年4月であり、2013年はカンボジアの移動体通信業界が大きく動いたと言える。

2015年初めの時点では2013年末から移動体通信事業者の顔ぶれに変動はないが、動きが激しい業界であるだけに今後も再編が進む可能性はある。

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2015年はLTEサービスの提供キャリアが増加へ

2014年1月にSmart AxiataがLTEサービスを開始し、ようやくカンボジアでLTEサービスが始まったが、2015年初めの時点では依然としてSmart AxiataのみがLTEサービスを提供する。しかし、2015年はカンボジアでLTEサービスを提供する移動体通信事業者が増える見込みである。

South East Asia Telecom(Cambodia)はLTEネットワークの構築で中国のZTE(中興)と合意しており、2015年中にLTEサービスを開始する計画である。また、カンボジアではWiMAXサービスを提供する通信事業者も存在するが、一部の通信事業者はWiMAX方式からLTE方式への転用を進めることを表明している。WiMAXサービスを提供する通信事業者の一つであるEmaxx Telecomも2015年中にLTEサービスを開始する予定である。2015年はカンボジアでLTEサービスが一気に増える可能性があり、引き続き注目しておきたい市場である。

▼プノンペン市内のEmaxx Telecom本社。LTE方式の導入は決まっているが、WiMAX方式も4Gと呼称している。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。