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【MWC2015】ドイツテレコムが示す、通信事業者のあり方

2015.03.03

Updated by Shigeyuki Kishida on March 3, 2015, 22:54 pm UTC

2015年のMobile World Congressでは「The EDGE of INNOVATION」というテーマが掲げられている。筆者がイベント初日(Day1)の講演セッションのいくつかに参加した印象としては、どの分野で誰がイノベーションを起こすかというよりは、IoT(Internet of Things)時代になりあらゆる産業をイノベーションが変えてゆく、今はその転換点にいるのだという認識をするべき、というのが底流に流れるメッセージのように思える。

中でも、午前中に行われたキーノートに登場したドイツテレコムのホッジスCEOのプレゼンテーションは、印象的であった。

▼ドイツテレコム社 ホッガスCEO
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  • イノベーションについて考えると、一般的にはプロダクトを思い浮かべるが、キャリアにとってはプロダクトだけではなく、インフラ運用のプロセスも考えることになる。また、組織のあり方やスキルセットも見直すことになる。

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  • 我々をとりまく環境の変化は、3つの大きなトレンドに分類できる。コンシューマのサイド、テクノロジーのサイド、そしてエコシステムに関するビジネスモデルのサイドである。
  • コンシューマサイドでいえば、人々の22%が60歳以上だ。すべての人をデジタルの新しいエコシステムに入れるにはどうしたらいいのだろう。ドイツテレコムでは、コンシューマの動きについてはシンプルに「シェアリング・パラダイム」だと考えている。人々は気持ち、ビジネス、商品などもシェアしたい。これに対し、キャリアはシームレスなコネクティビティを提供していく。

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  • テクノロジーについては、通信事業者にとって4つのメガトレンドがある。
  • 1つ目はソフトウェア化。インフラの制御はソフトウェアで行うようになる。eSIMも目の前に来ている。セットトップボックスも仮想化される。ハードウェアは分散化(decentralized)される。
  • 2つ目は仮想化。仮想化は、ネットワークをクラウド化する。欧州各国で動画配信する際に、欧州でひとつのクラウドから配信すればいいと思わないか?クラウド化による効率化は今後も進展する。
  • 3つ目はコンバージェンス。旅行時にセルラーでなくWi-Fiを探したりではなく、すべてを含めていくら、というものなのではないか。
  • 4つ目はデータ分析。データで複数の業界をコネクトすることができるが、そのためにはリアルタイムなデータ制御が必要である。

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  • そして次のポイントは、ビジネスモデルの崩壊である。この企業は通信事業者、この企業はメディアカンパニー、この企業はOTTカンパニー、......現実には、これらは融合(converge)している。facebookはコミュニケーションサービスか?といえば、間違いなくイエスだ。もちろん通信事業者は毎年何千億円も投資してこのサービスを維持してきたが、OTTサービスとのカニバリを起こしている。通信事業者も効率化の努力はするが、無料サービスと競争するのはタフだ。

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  • 規制機関も、現実の市場が進む市場のペースについてくる必要がある。卸売料金規制などは20年古い。周波数政策も新たなものが必要だ。ネット中立性も必要だが、クルマがインフラと通信するのと、spotifyで音楽を聞くのとが同じでいいのか。IoT時代にはサービス品質のクラス分けが認められることも必要になってくる。データ保護も必要だ。
  • 競争環境を揃えることも重要。通信事業者にもOTTにも、同じビジネスモデルのプレイヤーには同じルールを適用すべきだ。
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ドイツテレコムは、欧州の通信事業者が置かれている環境を簡潔に説明しつつ、同社の考えをクリアに示していた。

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岸田 重行(きしだ・しげゆき)

情報通信総合研究所上席主任研究員。1990年一橋大学卒業、NTT入社。1997年より現職。海外・国内のモバイル通信業界に関して、サービス動向から企業戦略まで広く調査研究を行っている。「通信事業者はどこへ行く」(「情報通信アウトルック2011」共著)「アプリケーション・ストア・ブームの衝撃」(「情報通信アウトルック2010」共著)「LTEの提供エリアはスムーズに広がるのか-世界におけるLTE普及への展望」(日経コミュニケーション2009年7月15日号)など、記事執筆・講演多数。