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[2015年第11週]あの日から4年、いまも続く防災・復興対策、電車もクルマもスマホと連携

2015.03.16

Updated by Naohisa Iwamoto on March 16, 2015, 12:00 pm JST

東日本大震災から4年が経過した3月11日に向けて、通信事業者も防災や災害対策、復興支援などの取り組みを相次いでアナウンスした。「風化」が懸念される今、あらためて私たち一人一人があの日を思い出し、今できる支援を考えてみたい。山手線の電車に「チェックイン」できる「Air Stamp」がJR東日本以外の事業者にも公開されるトライアルが始まった。Yahoo!カーナビは利用者増加を受けて、プローブ情報を使った渋滞予測を始める。MVNOのスマートフォンとして注目されていた「VAIO Phone」がついに登場するというニュースもあった。

東日本大震災から4年、各通信事業者の取り組み

東日本大震災から4年目を迎え、各地で災害を想定した訓練が行われている。国内通信事業者各社も、3月7日午前0時から3月18日午前0時まで、災害用伝言板と災害用音声お届けサービスの体験サービスを実施している。この機会に自分のスマートフォンのアプリをチェックし、インストールされている場合でも最新バージョンにアップデートしておくことをお勧めする。また、災害時の携帯電話の利用法や、復興、チャリティーにかかわるコンテンツも公開されている。来年には震災後5年間と設定された集中復興期間が終了するが、安倍首相は次の5年間の新たな復興支援の枠組みをこの夏までに策定すると表明した(関連記事:4年目の3.11、あの日を忘れないための備えと行動を)。

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NTTドコモは、防災関連の新しい技術を2つと、緊急地震速報に対応したトランシーバー端末を発表している。防災関連の技術の1つは、スマートフォンが搭載するBluetooth Low Energy(BLE)を使って、異なるOSのスマートフォンの間でも音声やパケット通信などを可能にするもの。音声やパケット通信は、携帯電話網を介さずにBLEでやり取りし、携帯電話網とつながるスマートフォンまで伝送して携帯電話網へと送ることが可能になる。もう1つは、緊急速報「エリアメール」向けに多言語に対応したアプリを試作したというものだ。試作アプリは、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語の5カ国語に対応した(関連記事:ドコモが防災関連の新技術、BLEでエリア外の通信を可能に、エリアメールの外国語対応も)。

また、NTTドコモは2パケット通信を利用した法人向けのトランシーバーサービス「ドコモビジネストランシーバ」に、緊急地震速報に対応した新端末2機種の発売を順次開始する。製品は2機種。車載タイプのトランシーバー「iMH-1000」は、緊急地震速報、津波警報、災害・避難情報の受信機能を搭載した端末。ハンディタイプのトランシーバー「iVo-300」は、緊急地震速報の受信機能を搭載し、防水・防塵性能を備える携帯型の端末である。企業のBCP(事業継続計画)対策での需要に対応するものである(関連記事:ドコモ、「緊急地震速報」が受信できる法人向けトランシーバー端末を提供)。

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電車にチェックイン、クルマで安全運転評価、スマホの活用が広がる

サービス面での話題を見ていこう。NTTドコモとJR東日本は、音波技術を使ってスマートフォンアプリにチェックイン機能を組み込める「Air Stamp」を、2015年3月15日から9月30日の期間、他のモバイルサービス提供事業者向けにトライアルとして提供する。Air Stampはこれまで「JR東日本アプリ」だけが対応する機能を提供していたが、山手線全車両に設置されている音波装置の機能を他事業者も利用できるようにする。

ショッぷらっと
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ライアル実施サービスの第1弾は、ドコモが提供するO2Oサービス「ショッぷらっと」で、期間中に山手線車内でアプリを起動してチェックインすると、「ショッぷらっと」のポイントであるstarが獲得できるキャンペーンを実施する(サービスサイト:ショッぷらっと)。

ヤフーは、カーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」に独自の渋滞予測情報を提供するなど新しい機能を追加する。まず2015年4月にプローブ情報を基にした独自の渋滞予測データの提供を開始する。またドライバーの安全運転を支援するものとして、2015年夏にスマートフォンの加速度センサーやGPS情報などを基に、ドライバーの運転力を客観的に評価する機能を追加する。さらに、独自のテレマティクス構想「ヤフーカーナビプラス」(仮称)で、カーナビと親和性の高い領域のパートナー企業と連携を進める(関連記事:Yahoo!カーナビ、プローブ情報による渋滞予測を開始、安全運転診断機能なども提供へ)。

区が主導してフリーWi-Fiの整備を進めるというニュースもあった。東京都豊島区とNTT東日本、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)は、5月7日にオープンする豊島区新庁舎の全フロアと、池袋駅周辺に「フリーWi-Fi」環境を整備する。5月7日から「TOSHIMA Free Wi-Fi」として提供を開始する。手軽なインターネット接続環境を庁舎と街で提供するとともに、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、外国人旅行客の受け入れ環境の整備や観光情報の発信力を高め、また災害時のライフライン確保にもつなげる。今後は池袋駅周辺を中心に豊島区全域へとフリーWi-Fiを拡大するため、事業所や店舗を対象に「TOSHIMA Free Wi-Fi」への参加を呼びかけていく(報道発表資料:豊島区新庁舎、池袋駅周辺から「TOSHIMA Free Wi-Fi」を提供開始)。

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VAIO Phone登場、LTE対応の「シンプルスタイル」スマホ

デバイスの新製品のニュースもあった。日本通信とVAIOは、両社の協業による成果の第1弾として「VAIO Phone」を発表した。

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VAIOがデザインを監修した端末と日本通信の専用サービスのSIMをセットにして提供し、月間1GBの高速通信と090などの携帯電話番号による音声通話機能を備えたプランは月額2980円から利用できる。VAIO Phoneの端末は、VAIOのデザインにより日本通信が製造元となって提供する。ビジネスでも違和感なく使える黒のボディーは、表裏のガラスの光沢と側面のマット素材とのコントラストで上質感を演出する。スペックは、5インチHD(720×1280ドット)液晶、1.2GHzクアッドコアCPU、メインが1300万画素、サブが500万画素のカメラ、2500mAhのバッテリーといったもの。OSには最新のAndroid 5.0を採用する(関連記事:日本通信とVAIO、ストライクゾーンど真ん中を目指した「VAIO Phone」、端末代込み月額2980円から)。

ソフトバンクモバイルは、基本使用料無料で使いたい分の料金を前払いする「シンプルスタイル」専用スマートフォン「BLADE Q+(ブレードキュープラス)」(ZTE製)を開発し、2015年4月以降に発売する。シンプルスタイルは基本使用料が無料で、2日プラン(900円)、7日プラン(2700円)、30日プラン(4980円)から利用方法に合わせたプランを選び、利用時にチャージして使えるサービス。「BLADE Q+」は、シンプルスタイル対象機種として、初めて「SoftBank 4G」「SoftBank 4G LTE」に対応した(報道発表資料:基本使用料無料の「シンプルスタイル」専用スマートフォン「BLADE Q+」開発)。

Appleが2015年3月10日(米国時間3月9日)に発表したApple Watchについて、認知度などを調査した結果をMMD研究所が発表している。調査ではApple Watchの認知度は65%に上るという。ただし、Apple Watchを知っているかという認知度については、「3月10日に発表される前から知っていた」回答者は22.2%で、今回の発表が商品の認知につながったことが明らかになった。また回答者全員に、Apple Watchの写真や価格といった製品情報を示して購入意向を尋ねた結果、3種類の製品いずれも、「購入したいと思う」と「やや購入したいと思う」購入意向は2割に満たなかった(関連記事:Apple Watch、今回の発表前から知っていた人は2割、購入意向も1割台--MMD研究所)。

昨年の第11週のできごと

・NECは米事業者とSDN/NFVで協業、富士通研はクラウドサービスの分散化
・タブレットは続伸、Windowsタブレット端末が存在感
・ドコモは遠隔サポート、KDDIはキュレーションサービスで動き
・Xperiaで環境貢献、モバイル向け不正サイト急増、iOS向け無償オフィスアプリ

[2014年第11週]SDN/NFVでNECが協業、MSのタブレットが伸びる、スマホから環境保護支援

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。