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ニコニコ超会議に見る、若者と組織の対話の構図

2014.04.27

Updated by Ryo Shimizu on April 27, 2014, 08:43 am UTC

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 昨日、今日と幕張メッセで「ニコニコ超会議3」が開催されています。
 筆者の会社、株式会社ユビキタスエンターテインメント(UEI)も出展しているため、午前中だけ顔をだしてきました。


 今年のニコニコ超会議は、ゲーム会社やファミマ、ローソンといったコンビ二はもちろん、在日米軍、自衛隊、JAXA、自民党や公明党、民主党、果ては大相撲といったわけのわからないものが大集合した本当にごった煮のようなイベントになっていました。

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 毎年わけがわからないのですが、今年は輪をかけてわけがわからず、しかもそんなものに10万人も来場するというから、本当にわけがわからないイベントです。

 そもそも、一企業のプライベートイベントに過ぎないものになぜ、政党や自衛隊が出展しているのか。不思議に思う方もいらっしゃると思います。

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 しかし、考えてみると、これはうまい手です。

 なぜなら、在日米軍や自民党などの政党、自衛隊といった組織は、できれば広報活動を行いたいと思っており、実際に予算を持っているにも関わらず、実際にはこうしたイベントに呼んでもらえることは少ないからです。

 たとえばアメリカのロサンゼルスで行われる世界最大のゲームショウ、E3(エレクトリック・エンターテインメント・エキスポ)では、米軍がスポンサードしたブースが大々的に出展しています。

 アメリカではそもそも民放に米軍の徴兵を呼びかけるCMが流れることは珍しくなく、映画産業も米軍が出資した映画がいくつかあります。ゲーム分野でも、古くはCIAのダミー会社がゲームを作っていたり(しかもそこそこヒットしていたり)、軍事関連企業のスペクトラムホロバイト社がリアルなフライトシミュレータを発売したりとエンターテインメントと軍の関係性は深いのですが、東京ゲームショウに自衛隊が出展することはまずあり得ません。

 日本では軍隊や政治は文化とあまり縁のないものと思われており、時には敵視さえされています。
 そういう意味では、若い支持者を取込みたい政党や、自衛隊、米軍など、普段ふつうの人と接する機会のない組織が進んでこういうイベントに出展するというのも無理なからぬ話なのです。

 ニコニコ超会議は規模の割にブース出展料が比較的安いので、大きな予算をかけなくても普通の人々にアピールできます。

 あるジャーナリストはニコニコ超会議を「日本の文化祭」と呼びましたが、まさにそのような、何もかも取込んでわけのわからないごった煮を私企業が率先してやる、というのは今の日本においては貴重な存在であると言えます。

 これが仮に、官公庁や地方自治体が主催のイベントだと、政党や自衛隊は参加し辛いものになってしまいますし、在日米軍を呼ぶなんてもってのほかです。

 また、その裏側で、素人によるカラオケ大会や、ニコニコ学会など、硬軟とりまぜた仕掛けを打って行くことで、「ふつうの若者」をとりこみ、「ふつうの若者」に自分たちの活動を知って欲しい組織や企業が目線をできるだけあわせて対話を試みる。

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 私個人は初参加だったものの、なかなか奥深いイベントだと思いました。

 こんな機会でもなければ「日米同盟とはなぜ重要なのか」書かれたガイドブックを見る、なんてこともないでしょうし、在日米軍もマンガで説明するようなパンフレットを作ってくれないでしょう。

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 今年のプレゼンバトルで優勝した岩手県のように、地方自治体が地域活性化のため、こうしたイベントに出展するという傾向も今後増えて行くのではないでしょうか。

 上手いと思ったのは、ニコニコ動画のファンが細分化されていることを逆手にとり、歌い手だけでなく鉄道マニアや軍事マニアといったオタク層にもアピールするように軍隊を持って行ったことです。マニアックな興味やコスプレ感覚で軍服で写真を撮ったりというサービス(長崎の海上自衛隊佐世保史料館にも同種のサービスがありますが)で誰もが楽しめるようになっています。

 もちろん眉をひそめる人もいるでしょうが、そんな人までをも許容するのが超会議です。ニコニコ超会議の凄さはそのダイバシティにあるのではないかと思います。

 しかも、こういうイベントは他に例をみないため、ニコニコ超会議の独擅場です。これは強力な強みになります。

 このイベント、入場料は一人1500円だそうですが、今年も赤字なのでしょうか。ぜひ黒字化するまでは続けて行って、なにもかも飲み込むようなイベントに育てて欲しいと思いました。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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